今回のパンデミックを受け、世界各地のミレニアルとZ世代の消費・行動パターンは大きく変化しているようだ。
アメリカのリテール分析企業FirstInsightがこのほど発表したレポートによると、4割のミレニアル・Z世代が支出を減らしているという。オンラインショッピングが増える一方、この機会を利用して一部のミレニアル・Z世代は休暇へも行っている。
彼らの意識・行動や消費傾向はどのように変化しているのか、最新レポートからその動向を探る。
今回参考にする調査は、アメリカのリテール分析企業First Insightがオンライン参加で独自のサンプルソースを、回答者の誕生年に応じて4区分で調査。誕生年によって、各世代の考えを抽出する形とし、計500人以上の人に調査をした。
その4区分は以下の通り:
- Z世代(1995-2012生まれ):現在8歳~20代前半
- ミレニアル世代(1980-1994生まれ):現在20代後半~30代
- X世代(1965-1979生まれ):現在40代~50代前半
- ベビーブーマー(1946-1964生まれ):現在50代後半~70代前半
今回は、このミレニアルとZ世代に注目して回答を見ていく。
4割のミレニアル・Z世代が世代間トップで支出を制限。彼らが不安に敏感な理由は?
レポートによると、まず「コロナウイルスの拡大を危惧しているか?」という質問に、66%の回答者が「はい」と回答。一番懸念が強かったのが、73%が「はい」と回答したZ世代だった。50代後半から70代前半までの高齢者層を含むベビーブーマー世代の72%より、1%高い結果を示した。
「消費意思決定に影響を与えるか?」の質問において、ミレニアル世代の54%が今回パンデミックが何らかの影響を及ぼしていると回答。これは他の世代と比較して一番高かった。さらにコロナウイルス対策として、ミレニアル世代の40%が「支出を削減した」と回答。消費意識は節約方向に働いていることが分かった。
ただ、支出を削減したと回答したのが一番多かった世代はミレニアルを1%上回るZ世代の41%だった。40代から55半ばまでのX世代や、50代後半以上のベビーブーマーと比較し、年齢が下がるほど支出を抑え、若い人の方が財布の紐を締めることが判明した。
ミレニアル世代は、1980年から1994年の間に生まれた世代を包括しており、最高齢のミレニアルは今年40歳になろうとしている。この世代は、多くが新卒として入社の準備をしていたり、キャリア数年目で足場を固めるときに、2008年のリーマンショックによる大不況を経験している世代だ。
そして現在20代後半~30年代の彼らは、キャリアの最盛期に入るとき、コロナ危機が発生した状況だ。この世代は働き方の自由度やワークライフバランスを求め、フリーランスの創出・増加にも起因している。
その下のZ世代は1995年から2012年の間に生まれた人々であり、この世代の最高齢は25歳。大学に行った人なら卒業し、数年社会活動にも参加している年齢だ。
しかしまだ多くのZ世代が学生として過ごしているため、Forbesの記事によると、コロナの経済的課題は、彼らの大学進学の決定を再考させるとも言われている。授業料が安い公立大学が望むことや、学生ローンを受け入れるのを恐れる人も出るという。
さらに多くのZ世代は、借金の重圧のために家の購入やライフイベントを延期しているミレニアル世代の背中を見てきており、同じ道を進みたがらない傾向を示している。
そのためコロナを引き金として、ミレニアル世代が優先順位を節約と安定に向け、今までの消費主導の傾向を後退させていくことは避けられないようだ。もっと言えばZ世代の財政的な危機感は強く、ミレニアル世代よりも不穏を察知しているといえる。
オンラインショッピングや非接触型の食品配達の増加
買い物の仕方の傾向では、ミレニアル世代は他世代よりも多くオンラインで買い物するようになった一面もレポートで明らかになっている。
コロナの影響を受け、以前よりショッピングセンター等での買い物の頻度を減らした人は39%と、約4割のミレニアル世代が普段での買い物を減らした。代わりに、オンラインショッピングを利用する頻度が増えたとの回答はミレニアル世代が30%と、こちらも全世代平均の21%を大きく上回っている。
実際、コロナウイルス拡大は、非接触型の食品配達の増加に拍車をかけている。非接触型の配達は、配達の運転手が玄関先に荷物を置いたり、ユーザーが荷物を降ろしてほしい場所の写真を運転手にテキストで送るなどができる形態だ。
米国を拠点とする配送アプリPostmatesやDoorDashは、どちらも非接触型配送を、オプションとして展開している。
また、BOPISと略される「Buy Online Pick-up In Store」は、オンラインで購入した商品を配送で受け取るのではなく、最寄り店舗に自ら取りに行く形態だ。47%のZ世代がこの形態を好み使用しており、全世代平均18%を大きく上回って使用していることが分かった。
新規および既存の顧客からの注文が増加しているニューヨークのオンライン食料品注文サービスであるFreshDirectのデータによると、 「多くの人は自宅で調理することを好み、健康を維持するために新鮮なオーガニック食品をより多く消費している」とコメントしている。
出前サービスは用意された食品の感染に対する懸念があることと、自宅待機を要請された運転手が増えたことによる配送の人手不足により、出前配送アプリの使用が減少する可能性を示唆した。
これを機に旅行へ行くミレニアル・Z世代も
一方で、ホテルや航空券など旅行関連の価格が大幅下落する状況を利用して、格安でホテルや航空券の予約をしているミレニアル世代やZ世代もいるようだ。アメリカのニュースNBCの報告によると、多くの人が旅行をキャンセルや変更、再調整している中、若い世代は格安便を予約利用している人もいるという。
航空・観光業界はコロナでの需要減により壊滅的になっており、対抗策として価格の引き下げや、キャンセルや変更を無料で可能とする柔軟な対策を提供しているところもある。
これに目を付けた20代の回答者は、「新しい旅行先を探検したり、休暇を楽しんだり、家族に会ったりするために、この機会を利用したい」と語る。
また夏に向けてバンクーバー、ニューヨーク、ポートランド、オレゴンへのフライトを予約した、他の20代の回答者は、「コロナウイルスが深刻になり、多くの人を一掃したような気がする。私自身は、どこか楽しいところにいたい」と語る。
拡大を続けるコロナウイルスは、消費者や人々の生活形態も変化させている。各世代の反応は異なるが、全ての世代が、いまだ目にした事のない新しい困難に直面していることは事実だ。多くの人がこの環境に順応しようとしている中、世代間の差違を捉え、全体の最適化を考えた行動を各々が取るべき時が来ている。
文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit)