新型コロナウイルス感染の拡大は、今日世界中に多大な影響を及ぼしている。

フランスのコンサルティング会社IPSOSはこれに対し「世界の国民のコロナウイルスに対する意識調査」を3月12~14日に実施。結果として、多くの国民はコロナウイルスを健康よりも経済へのより大きな脅威として見ていることが明らかとなった。

また、調査では国境封鎖や買い置き行動、ウイルス収束の予測についてのアンケートもなされている。今回は、新型コロナウイルスの影響と対策について、各国民はどのような考えを持っているのか、IPSOSの最新データをもとにその傾向をお伝えする。

世界12カ国1万人対象の大規模調査

この調査は、フランスのコンサルティング会社IPSOSによって3月12~14日の間、世界12カ国1万人を対象に実施された。調査対象国はオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、インド、イタリア、ロシア、イギリス、米国、ベトナムの12か国。各国18~74歳までの約1,000人がアンケート調査の対象となっている。

このアンケートが取られたのは今回が初めてではなく、IPSOS社はアンケートを2月から継続して行っている。第一回目の調査を始めたのが2月7-9日、第2回目は2月14-15日、第3回目が2月28-29日、そして最新の第4回目が3月12-14日となっている。

前回の2月28-29日の調査からベトナム、そして今回からインドと中国が対象国に追加され、結果に反映されている。

健康 vs 経済、経済的被害を健康的被害よりも予想する国民が多い結果に

全体的な傾向として見られたのが、国民の健康面への反応は、感染者の多い国に接する経験や地理的距離が近い場合に影響を与えるとみられている。中国やイタリアなど感染者の多い国々では、国民の健康への関心と懸念が著しく高かった。

一方、社会的距離の制限措置や、旅行禁止措置が活発となっているアメリカやカナダなど北米の人々にとって、3月12-14日の時点で健康への被害への関心がまだあまり高くない。 

この結果を表す「コロナウイルスが個人の健康にどの程度の脅威をもたらすと思うか?」の質問に、懸念が最も高かったのがベトナム。非常に懸念しているという割合は60%だった。次いでインドが48%、イタリア48%、中国44%と続いている。

3月12-14日の時点では、ドイツ21%、フランス24%、イギリス19%と、欧州もアメリカ、カナダ同様に比較的低い値である。日本はアンケート2回目から1カ月間、ほぼ変化はなく、今回の調査も27%だった。

次に、「コロナウイルスは仕事やビジネスなど経済的にどの程度の脅威をもたらすと思うか?」という質問に対して、「非常に懸念している」の割合が最大だったのは、健康面の懸念でもトップの64%のベトナムだった。

しかしこれは同国の健康への懸念割合である60%を超える値となった。このほかイタリアも63%と、健康懸念割合の48%よりも15ポイント高い値を示した。

その他、特にフランス、イギリス、アメリカで、2月末以降、経済的懸念が急速に高まっている結果を表した。これらの国では、ウイルスによる健康的脅威に関する懸念よりも、経済的な懸念の方が急に高まっているようである。

各国政府によって発表されているコロナウイルスに対する経済救済措置は、経済的脅威に関する国民の懸念を沈静化させていないようである。日本は2月末とほぼ変わらない34%となった。

個人の健康に関して、もう一つの調査結果も、ヨーロッパ諸国などの国民が深刻な健康リスクとしてCOVID-19をまだ認識していないことを証明している。

「コロナウイルスに感染した場合、健康にどの程度深刻な影響を与えると思うか?」という質問に対し、健康が「非常に」または「非常に深刻」に影響を受けると答えたのは中国の回答者がトップで75%。

続いてインド、ベトナムの70%以上が深刻に捉えている一方、イギリスでは回答者の23%、フランスの回答者の12%のみが深刻に捉えている結果となった。

国境の封鎖、買いだめ問題、今後の傾向

国境の閉鎖は各国で対策として始まっているが、これは個人的なものではなく、「理論上」である可能性があるとIPSOSは示唆する。

「ウイルスの拡散が収束されるまで、自国の境界を閉鎖し、出入りを禁止する必要がある」に同意した国民が多かったのは、ベトナム、インド、イタリアであり、カナダ、ドイツ、フランス、イギリスは半数に達する程度で、同意が多くはなかった。

その他、コロナウイルスの影響で、スーパーでの買い物客の列や品物の争奪など、人々の買い置き行動とその弊害に関するメディアが多く報道されている。

この意識調査では、これらの活動はヨーロッパと北米に多く見られることを示唆している。イギリスの回答者の89%が、他者による買い置きを在庫不足の原因として非難している一方、ロシアや中国でのその率は50%前半にとどまっている。

他者の買置き行動は人々の心理的不安を引き起こし、サプライチェーンの混乱よりも在庫不足につながる可能性を高めると見られている。

その他調査では、感染者の多い国の近くでeコマースが増加する傾向も示唆している。通常は店で購入する商品を、現在オンラインショッピング購入している人の割合はイタリアで31%が「より頻繁に」しており、ベトナムでは57%、インドでは55%、中国ではその率が50%に上昇した。

最後に、感染者の多い国を含むほとんどの国の国民が、「この状況は今年6月までに通常の状態に戻る」と楽観的に予想していることが明らかとなった。ベトナムや中国では90%近い人がこれに同意しており、インドの約80%、イタリア、ロシアの回答者の70%が続く。

しかし、IPSOSなど感染の軌跡と今までの症例から出された予測からは、これらが当てはまらないことを示唆している。日本はこの質問には最も悲観的に予測しており、40%近い人のみが6月までに収束することを予想した。

執筆時の3月24日の時点で、世界中で395,000以上のケースが確認されているコロナウイルス。東京オリンピックも延期され、拡大を続けるウイルスはまた人々の意識を変えていくだろう。今後もアップデートされるであろうこの調査に注目だ。

文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit