欧州で家賃が最も高い都市
欧州圏で最も家賃が高い都市はどこか。
統計サービスStatistaによるオンライン不動産情報Housing Anywhereのデータまとめによると、2019年第4四半期時点で欧州各都市1ベッドルームの平均家賃が最も高かったのは英ロンドンだった。その額は1747ユーロ(約20万6,000円)。
ロンドンのほか以下の都市が家賃ランキングにランクインしている。
アムステルダム1683ユーロ(約19万9,000円)、ミュンヘン1525ユーロ(約18万円)、ヘルシンキ1398ユーロ(約16万5,000円)、ロッテルダム1297ユーロ(約15万3,000円)、ユトレヒト1289ユーロ(約15万2,000円)、バルセロナ1249ユーロ(約14万7,000円)、ハーグ1212ユーロ(約14万3,000円)、ミラノ1180ユーロ(約13万9,000円)など。
これらの多くの都市では、人口流入や不動産投資が続き家賃上昇が続いている。しかし、上昇率は鈍化の傾向にある。
ベルリン家賃2倍「住宅難民」の社会問題化で、今後5年家賃上昇を禁止
一方、この10年で家賃が2倍になり、その上昇に歯止めが効かない都市がある。ドイツ・ベルリンだ。
ドイツの不動産情報サイトImmoweltによると、2008年ベルリンの家賃は1平方メートルあたり5.6ユーロだったのが2018年には11.40ユーロと2倍以上上昇。人口流入や供給不足などを背景に、この先さらに上昇することが予想されている。
上記Statistaのまとめでは、ベルリンはミラノに次ぐ位置。平均家賃は1,142ユーロ(約13万4,000円)。ロンドンやアムステルダムに比べると低い値だが、これは伸びしろ大きいことを意味している。
ベルリン住民の大半は賃借者。生活コストの大幅増加に耐えられず、郊外に引っ越す人が増えているという。ドイツ・ターゲスシュピーゲル紙によると、ベルリン市内の不動産の81.5%が賃貸物件という。
ベルリンはかつて開発の遅れなどからフランクフルトやミュンヘンなどに比べ家賃が安く若者に人気の都市だったが、この10年で状況は一変。
地元メディアによると、家賃を払えない「住宅難民」が増え、社会問題になっているという。移民の増加に加え、テック企業の集積などが加速し、不動産需要の高まりに供給が追いついていない状況が続いている。
これに対し、ベルリン市は2019年6月に市内約150万戸の賃貸物件を対象に、家賃価格の上昇を禁止する方針を決定。法案が可決され、2020年2月から施行開始された。
この新規制は対象賃貸物件の今後5年間の家賃の引き上げを禁止。2025年以降も上昇率は、物価上昇率と乖離しない1.3%に制限されることになる。違反した賃貸者には、最大で50万ユーロ(約5,900万円)の罰金が科されるとのこと。
ロンドン市長が同様の家賃抑制策について言及するなど、家賃高騰が続く欧州主要都市で今後同様の動きが出てくるかもしれない。
こうした家賃上昇規制に関して、もちろん不動産開発業者や不動産オーナーからの批判はある。このような規制が実行されると、供給が減少し、さらに需給ギャップが開くとの指摘だ。
一方で、新型コロナウイルスが不動産市場を沈静化させる可能性が一部で指摘されており、それに伴い家賃が下がっていくことも考えられる。
新型コロナウイルスの不動産市場への影響、米国と中国の状況
英経済研究コンサルティング会社Capital Economicsが2020年3月に発表した推計では、米不動産市場における住宅販売額は2020年に前年比で最大35%減少する可能性があるという。約400万戸に相当する額で、1991年以来で最低水準となる。
Capital Economicsは、米国の住宅販売数を押し下げる要因として、移動制限や失業率の上昇を挙げている。
CNBCが2020年3月19日に伝えた米リアルター協会の調査によると、直近の週末で多くの住宅代理店が予定していたオープンハウスを中止。調査対象となった代理店の半分が見込み客の購買意欲が下がったと報告している。直近の1週間で、この数は3倍増加したという。
米リアルター協会のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は、新型コロナウイルス感染拡大前、米不動産市場が強気だったこと、また依然供給不足という現状を鑑みると、コロナショックによる影響は小さく価格は安定するだろうと楽観視している。
一方Capital Economics不動産部門のマシュー・ポイントン氏は、コロナショックによって消費者の経済活動が低迷すること、また消費者信頼感の低下などを考慮すると、2021年も不動産販売の減少が続くことも考えられると指摘している。
震源地の中国では、すでにその影響が出始めている。中国国家統計局が3月16日に発表したデータによると、国内70都市における新築物件の価格は、前月比で0.02%の上昇にとどまり、2015年4月以来の最低水準を記録したという。
またChina Index Holdingsのデータによると、国内100都市の新築物件価格は2月に前月比でマイナス0.24%をつけたとのこと。新型コロナウイルスが発生した武漢市の不動産市場では、2月の取り引きはゼロだったという。現在、不動産販売が滞らないよう、不動産各社による値引き合戦が進み、25%引きを提示する企業も出てきている。
新型コロナウイルスによって世界の不動産市場はどう動くのか。注視する必要がありそうだ。
文:細谷元(Livit)