新型コロナウイルス問題でマスク生産に参入する異業種企業続々。高級ブランドによる支援も拡大

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自動車や電子機器メーカーなど、異業種のマスク生産加速

2020年2月末、シャープは新型コロナウイルスの影響で品薄が続くマスクの生産に乗り出すことを明らかにした。

まったくの異業種ながら、社会貢献の一環として、政府のマスク供給の取り組みに協力するという。3月中に三重県の液晶ディスプレー工場にマスク生産ラインを整備し、1日50万枚の生産を目指すとのことだ。

マスクの需給バランスに関して、世界的な公式データがないといわれているが、概算では供給が追いついておらず、業種関係なくマスク生産は、CSRやSDGsの観点からも企業に求められる対策の1つになっている。

震源地の中国では、異業種企業によるマスク生産が加速中だ。

自動車大手の広州汽車は、自動車生産ラインをマスク生産用に切り替え、フル稼働で生産を開始。5つの生産ラインで1日25万枚のマスクを生産しているという。

また広東省の自動車メーカーBYDもマスクと消毒液の生産を開始。地元メディアによると、2月中旬から同月末までにマスク500万枚、消毒液5万本を生産できる規模とのこと。

さらに米ゼネラル・モーターズと中国企業による合弁自動車企業、上汽通用五菱汽車もマスク生産を開始。AFP通信は、同合弁企業のマスク生産能力が2月末までに1日200万枚に達する見込みだと伝えている。

一方、造船世界最大手といわれる中国の中国船舶集団(CSSC)はマスクを含めた感染症対策用品の生産機器・設備の製造に着手する。中国当局の要請により、急きょ関連する設備や技術を開発し、設備・機器の製造体制を整えた。3月中旬までに、不織布マスク生産機器や「N95」規格マスクの生産機器などをそれぞれ数十台出荷する計画だ。

政府や金融機関の支援もあり、中国では今後もマスクを含めた新型コロナウイルス対策用品の生産拡大が見込まれる。

浙江省では官民をあげての取り組みが進んでおり、マスク生産に関しては1日の生産量が1,000万枚を超えたと伝えられている。また、同省ではマスクの生産・増産に向けて設備投資を行う企業に対して、省当局による資金援助が実施されることが決まった。この決定で、アパレルメーカーなど10社以上がマスク生産を開始した。

また新華社通信によると、北京市内ではマスク工場の突貫工事が実施され、6日という短い期間で工場が完成しとのこと。同工場では、1日25万枚のマスクが生産されるという。

金融機関による企業向け援助も拡大中だ。四川省内では、金融機関がコロナウイルス対策を実施する800社近い企業に融資を行っており、その額が105億元(約1,623億円)に達したと報じられた。


湖北省のマスク生産工場

ルイヴィトン、スワロフスキーなど、欧米高級ブランドの中国支援も拡大

中国では地元企業だけでなく、海外企業によるフィランソロピー活動も活発だ。

ルイヴィトンやディオールなどの高級ブランドを有するフランスの複合企業LVMHは、コロナウイルス対策で中国赤十字に1,600万元(約2億4,000万円)を寄付すると発表。また、フランスや欧州で医療物資を確保し、医療機関の取り組みを支援する計画があることも明らかにした。


ルイヴィトン、中国南京店

一方、グッチなどの高級ブランドを有するフランスの複合企業Keringも湖北省の赤十字に750万元(約1億1,600万円)を寄付する計画という。

またオーストリアの高級ブランド、スワロフスキーもコロナウイルス対策支援の一環で300万元(約4,600万円)を寄付したとのことだ。

さらにフランスのコスメブランド、ロレアルが72万ドル、米国のコスメブランド、エスティーローダーが30万ドルの支援を約束している。

英高級車メーカー、ジャガー・ランドローバーは、中国の系列代理店240社に対し、対策費用として500万元(約7,700万円)の支援を行うと発表。また英国で調達したマスク10万枚を送付したり、販売目標の撤廃や資金繰り援助など、幅広い支援を行っているようだ。

このほか、米プロバスケットリーグNBAが湖北省に140万ドル(約1億5,000万円)の寄付と同省内の病院に30万ドル相当の医療機器を提供するなど、海外企業・組織による支援は広がりを見せている。

この先どうなる? 中国・世界のマスク需給

企業によるマスク生産・増産の動きが活発化しているが、中国ではしばらくマスク不足が続くとみられている。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙2月16日の記事によると、マスクの需給ギャップに関する公式データはないものの、専門家らの推測では、中国国内のマスク生産能力は1日あたり2,000万枚。この時点の稼働率は76%で約1520万枚のマスクが生産されているという。一方、現在の中国のマスク需要は1日5,000万〜6,000万枚。供給が追いつくのは、まだ先になるとみられる。

国内の生産能力を増強しつつ、中国は海外からのマスク輸入も加速させている。同紙によると、中国はインドネシアに対して、同国3カ月分に相当するマスクを発注したという。

韓国やベトナムのマスク製造企業からは、中国がマスク生産に必要な原材料や生産機器の輸出を停止したため、サプライチェーンが混乱しているとの批判があがっている。

リモートワークなど、マスクを使用せず感染リスクを下げる努力は当面継続する必要がありそうだ。

文:細谷元(Livit

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