スナップチャットの調査があぶり出す「世界のZ世代像」
さまざまな定義が存在する「Z世代」。米ピュー・リサーチ・センターでは、1997〜2012年に生まれた層と定義。現時点では8〜23歳がその範疇に入る。
世代別の概ねのトレンドを見るとき、このように世代別に分類することでデータ収集・分析が容易になり、議論をしやすくなる。一方で、ひとくくりにしてしまうことで、その概念に含まれる要素の相違を見落としがちになる点は注意が必要だ。
現状、さまざまなメディアではこの世代をデジタル・ネイティブと呼び、音楽ストリーミングなど新しいトレンドを生み出す注目の世代として語られることが多い。
しかしこの「Z世代像」は大方、米国や欧州で実施された調査をもとにつくられたものであり、世界全体を包含する「一般的」なZ世代像とはいえないだろう。
スナップチャットの運営企業スナップ社とオンライン調査会社GlobalWebIndex社が共同で発表したレポート「The Youth of The Nations」。
同レポートは、世界45カ国47万人以上を対象にした意識調査で、このうちZ世代は8万人近く含まれている。Z世代調査レポートは数多く発表されているが、これほど多くの国にまたがる調査は珍しく、Z世代の一般像を知る上で重要な示唆を与えてくれるものだ。
また、Z世代の国・地域別の傾向も示しており、共通点と同時に相違点を知ることが可能で、さらなる仮説構築のヒントを与えてくれるものでもある。
世界のZ世代にはどのような共通点があり、また国・地域別ではどのような特徴があるのだろうか。
世界のZ世代、趣味の最多は「音楽」。北米ではSpotify有料版人気上昇か
スナップ社とGlobalWebIndex社の共同レポートで、調査対象となったZ世代の年齢範囲は16〜22歳。そのうち52%が学生、18%がフルタイム労働、12%がパートタイム労働、8%が失業中、7%がフリーランスを含む自営業との内訳だ。学生のうち61%が大学学部に在籍中。
このことから、同レポートが示す数字は、Z世代の中でもとりわけ世界各地の大学生の意識が反映されたものになっているといえるだろう。
世界中のZ世代はどのようなことに興味を持っているのか。趣味に関する質問では、以下のような傾向が明らかになった。
1位だったのは音楽。Z世代全体では69%が関心ありと回答。トップ5にはこのほか、映画(61%)、フード/ドリンク(58%)、ゲーム(54%)、テクノロジー(53%)がランクイン。
音楽に関しては、中南米における割合が82%と特に高く全体を押し上げた。
同レポートによると、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアでの割合が突出しているという。一方、アジア太平洋では65%、中東アフリカでは60%だった。地域ごとの差異はあるのものの、Z世代における音楽への関心は世界的に見て高いといえるだろう。
この音楽への関心の高さは、同レポート内の他の項目でも顕著にあらわれている。
消費項目における「過去3〜6カ月以内に何を購入したのか」という質問でトップになったのが「ヘッドホン/イアホン」だったのだ。同期間内に購入した割合は37%。2位にランクインしたのは「財布」で、その割合は29%。ヘッドホンはそれを8ポイント上回った。
Z世代の欲しいアイテム、ヘッドホン
またデジタルコンテンツ消費に関する数字にも、Z世代の音楽への興味関心の高さがあらわれている。
Spotifyなどの音楽ストリーミングの有料サブスクリプションを購入した割合は25%。これは2018年の数字だが、2015年の13%からほぼ2倍に増加している。
地域別でみると、北米での増加が顕著で、サブスクリプション購入割合は40%近い。一方、欧州とアジア太平洋では30%未満、中南米と中東アフリカではさらに低いという。
現在、有料サブスクリプション型の音楽ストリーミングといえば、SpotifyかYouTube Musicが主なサービス。北米ではこれらのどちらかに(または両方)加入するZ世代が増えていることが示唆されている。
一方で、音楽への関心が80%を超えた中南米のZ世代は、有料サブスクリプションではなく、無料で視聴できるYouTubeを通じて音楽を聞いていると推測することができる。
アジアのZ世代が楽しむスポーツNo.1は意外な種目
同レポートでは、スポーツに関してもおもしろいデータが示されている。
世界各地のZ世代はどのようなスポーツイベントやスポーツリーグを視聴しているのか。
最大は「FIFA ワールドカップ」で、48%が視聴したと回答。次いで「夏季オリンピック」が35%、「冬季オリンピック」が23%、「NBA」が19%、「UEFA チャンピオンズリーグ」が17%と続いた。
またこのところeスポーツの観戦者が増加。「過去1カ月でeスポーツトーナメント」を視聴したというZ世代の割合は全世代平均を1.3倍上回ったという。特に中国を含むアジア太平洋地域における視聴者増が顕著とのこと。
アジア太平洋のZ世代は他の地域のZ世代に比べ、自分でスポーツを楽しむ割合が高いことも判明。
「どのスポーツをするのか」という質問では、アジア太平洋のZ世代の間で最大となったのは49%のバドミントンだった。次いで、スイミング(38%)、サイクリング(38%)、サッカー(32%)、バスケットボール(30%)と続いた。
バドミントンを実際にプレイするという割合は、欧州で14%、中南米では2%、中東アフリカでは4%、北米では9%。野球とサッカーの人気が圧倒的な日本では想像できないかもしれないが、東南アジアやインドではバドミントンの人気が高く、実際にプレイする人も非常に多い。この数字は、そのことを反映しているようだ。
マレーシアの元バドミントン選手リー・チョンウェイ氏(世界ランク過去最高1位の国民的人気選手)
バスケットボールに関しても本場と思われる北米では25%にとどまる。このほか欧州は19%、中南米では21%、中東アフリカでは11%にとどまり、地域別ではアジア太平洋が最大となっているのだ。
「デジタル・ネイティブ」と呼ばれるZ世代。グローバル・メディアやソーシャルメディアを介し世界中の情報にアクセスし、世界中とつながる世代。
これまでの世代には見られないようなグローバルな価値観共有が進んでいるようだが、音楽やスポーツのデータには国・地域別に独自の文化やライフスタイルが発展していることも示唆されている。
グローバルとローカルの相互作用によって生み出されるZ世代発の新しいトレンドやムーブメントは世界をどのように変えていくのか、その動きから目が離せない。
文:細谷元(Livit)