1社にいながら4度訪れたキャリアの転機。勤続19年でも自分をアップデートし続けていく働き方。

さまざまな大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。

今回は、大学を卒業後、特許の仕事に従事し、留学や内閣官房への出向を経て、現在の新規事業開発に取り組まれている星野攻さん。

一度も転職をせず、長年同じ会社に在籍しながらも、目的や興味をアップデートし、知的好奇心を刺激し続ける働き方をされています。

仕事で得た経験を、どんどん次へと活かしていくことで新しい世界や道が開けていくと話す星野さんの働き方についてお伺いしました。

大学院卒業後から現在まで同じ会社に在籍。イギリス留学、内閣官房への出向を経て現職へ。

——今、どんなお仕事をされていますか?

星:メーカーの研究開発グループで、国やパートナーと組んだ新規事業開発をしています。

——具体的にはどういったお仕事内容ですか?

星:さまざまな企業がスムーズに協働できるように、国や国際機関に働きかけ、国際標準や契約、法律といった“ルール”を作り、その上で動く新規事業を作り出す仕事です。

——大学をご卒業後から変わらず、現在の会社にお勤めなんですよね。

星:はい。理系の大学院にて修士課程を終え、現在の会社に就職し、最初は特許の仕事に就きました。その後は、イギリス留学や内閣官房への出向を経て、新規事業開発に移りました。

職務内容は変わっていますが、ずっと同じ会社に在籍しています

——最初に従事された特許の仕事は、どういった仕事内容なんでしょうか?

星:特許というのは、自社の知恵を、海外も含む他社から真似されないよう適切に守る仕組みです。就職活動をしていた当時、日本は資源の無い国なので、知恵の力で勝つしかないと思い、この仕事を選びました

楽天のような複数のテナントを抱える電子商取引の技術や、デジタルコンテンツ管理システムの特許取得などでは、かなり他社に先行していたのでやりがいがありました。

——その後、イギリスへ留学されたんですね。

星:会社からイギリスのオックスフォードに留学する機会をもらい、経営学修士、いわゆるMBAのコースで学びました。

日本人は、他国からの留学生と比べると英語が流暢ではないため目立ちにくいですが、ケーススタディの読みの深さなどは、かなり優秀な方だと思いましたね。

——星野さんはいかがでしたか?

星:私も収益計算や統計が得意で、みんなの宿題をたくさん手伝ったためか(笑)、留学期間中に「Best Group Member(一緒に働きたい人)」賞を受賞できたんです。

同賞にノミネートされた5人中4人が日本人でした。230人ほど同級生がいた中ですごいことだと思います。

——帰国後に内閣官房へ出向されるんですね。

星:はい、内閣官房に2年半出向しました。

有識者の方々からいただいた長期ビジョンや、国のコンテンツ政策やクールジャパン政策を各府省庁の施策に落とし込む仕事です。

——具体的にはどういった内容なんでしょうか?

星:日本の文化資産を保全し、世界に発信することを通じて、日本ブランドを高めるデジタルアーカイブ事業や、日本で映画を撮り易い環境の整備、ビッグデータの保護と活用のための検討などを他府省庁と共同で進めていきました。

——そこから新規事業へ移られるんですね。

星:出向を終えた後、今の新規事業の仕事に職務が変わり、知的財産の専門部署から研究開発グループに移りました

これまで経験した法律に関する考え方や政府との繋がり、経営学の知識を活かせていると感じています

——将来のキャリアについて、考え始めたのはいつごろで、どんな就活をしていましたか?

星:具体的に将来について考え始めたのは、修士課程1年目の冬からです。

研究室のOBに話を聞いたり、面接でお会いした方から他社のリクルータの紹介を受けて、話を聞いたりしていました。

就活でお会いした社会人の方々は、打算ではなく本当に私の将来について親身になって考えてくださったと、今でも感謝しています。

——特許の仕事に絞ったのはいつ頃でしたか?

星:就活の最後の方ですね。

それまではコンサル系や研究職も受けていました。

研究は芸術のようなものなので、成功するのは簡単ではないと思っていました。

特許という分野には、弁理士という独立開業できる国家資格があるため、資格に受かれば仕事をしやすくなると思ったので、学生時代から弁理士試験の予備校にも通っていました

4度体験したキャリアの転機。すべてが次の道へ繋がっている。

——星野さんにとっての「キャリアの転機」はいつですか?

星:これまでの人生でキャリアの転機は4度ありました。

1度目は、入社してから弁理士試験に合格したとき、2度目はイギリスに留学したとき、3度目は内閣官房に出向したとき、4度目は特許の仕事を離れて新規事業開発に移ったときです。

——どの転機も次の仕事に活かされていると感じますか?

星:はい。弁理士試験に合格したことで社内評価され、海外留学の道が拓けましたし、勉強の過程で法律的な物の見方が身につきました。

さらにイギリスへの海外留学を通じて、経営学の基礎知識を一通り学び、社会を変えるような事業の立ち上げに関わりたいとの思いを持つことができました。

その次の内閣官房で、国での政策の作り方を学ぶとともに、国と民間で互いの強みを活かして新たな事業を作りたいと思い始めました。

——どの転機も次の仕事に繋がっているんですね。

星:そうですね、今振り返ってみるとどの経験も、次に進んだ道へのきっかけになっていると感じます

——どんなことで悩まれましたか?

星:イギリスへの留学中に、ベトナムから日本に食を輸出するプロジェクトでベトナムに1ヶ月ほど滞在した際、ベトナムと先進国の貧富の差や閉塞感を感じ、自分に何ができるのか悩みました

政府への出向中は、日本の将来を自由に思い描ける立場にありながら、さまざまなしがらみで思うように動けない公務員の難しさを知り、国だけでも民間だけでもだめだという、パズルのピースが足りないような感覚があると考えるようになりました。

——現在の新規事業開発の道を選んだのはなぜですか?

星:国やパートナーと組んで新規事業開発を行うという道は、これまで経験してきた“法律”“経営”“産官連携”というキャリアを最大限に活かしつつ、これまで我が社でできていなかったアプローチで、大型の新規事業を創り出すことに挑戦できると考えたからです。

できていなかったことにチャレンジするのはワクワクします

仕事は勉強!知識を身につけなければ働くことは面白くならない

——星野さんが、“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?

星:まず、「仕事って面白い」と思えるところまで知識を身につけることだと思います。本当に課題になっていることは、表面からすぐには見えません。

これが見えるところまで行き着くと、あとは創造性を発揮して解決するだけなので、自由な発想で絵が描けるようになります。

自分が描いた絵を実現するために動くことは、辛くても楽しめると思いますね。

——楽しく働くために何か心がけていることはありますか?

星:興味を持てないようなことでも、突き抜けるところまで勉強すれば面白くなると信じてしっかり勉強することですね。

あと、自分が何をしたいと思っているのかを常日頃から発信して、その思いに共感して一緒に動いてくれる人を作ることも大切だと思います。

——星野さんにとって“はたらく”とはどういったものですか?

星:部下や会社の収益を守るという責任はもちろんあるんですが、その中で自分のやりたいことを実現していける手段、ですかね。

——星野さんは、どのようにしてやりたいことや自分の道を見つけましたか?

星:学生時代は、週末に社会人有志で開催される勉強会に参加したり、その分野の教授に話を聞いたりして、特許・知的財産という仕事の魅力を知りました

さらに就活中は、面接官の方に親身になって将来を考えていただき、競合他社の方まで紹介してもらうなどして、人間が打算だけで動いているわけではないと感じ、「働くのも悪くないな」と感じたのも大きかったと思います。

——“はたらく”ことに関するご自分のルールや、これだけは譲れないというような思い、信念などがあれば教えてください。

星:現在の状況に対して自分で責任を持つこと

現状に課題があれば、文句や不安を言うよりも、状況を変えるために行動を起こしたいと考えています。そのために自分はどうやってその状況に影響を及ぼせるかを考えるように発想を切り替えます。

——“はたらく”を楽しもうとしている方へのメッセージをお願いします。

星:面白いかもしれないことを見つけたら、多少面倒くさくてもとりあえず飛び込んでみることをお勧めします。

また、自分なりに掘り下げて勉強してみることも大切だと思います。

私の場合はネット検索で偶然見つけた社会人有志の勉強会などでした。

入り口は狭かったですが、奥が驚くほど広がっていました。

星野 攻(ほしの おさむ)さん
会社員
理系大学院を卒業後、現在の会社へ就職。特許の仕事に関わった後、イギリス・オックスフォードへ留学しMBAを取得。帰国後は内閣官房へ出向し、国のコンテンツ施策やクールジャパン施策を担当。現在は、国やパートナーと組んでの新規事業開発に取り組んでいる。

転載元:CAMP
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