京都大学基礎物理学研究所の西道啓博特定准教授らの研究チームが、宇宙の大規模構造の進化を予測し、高速予言をするAIツール「ダークエミュレータ」を開発したことを発表した。

京大 ダークエミュレータ

ダークエミュレータは、宇宙のダーク成分の量や性質などをさまざまに変えて計算した101のバーチャル宇宙から、それらの対応関係を学習。これにより、新たなシミュレーションを行うことなく、新しい宇宙モデルに対して予想される観測結果の理論予言を高速に行うことを可能にしたという。

なお、この学習に使われたバーチャル宇宙のデータは、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」および「アテルイⅡ」を用いて約3年かけて計算された、総容量約300テラバイトの巨大シミュレーションデータ。

同ツールは、銀河の空間分布や弱重力レンズ効果の実際の観測結果を、誤差2-3パーセント程度の精度で予言することが可能だという。さらに、標準的なノートパソコンでも数秒以内に理論予言を行うことができ、計算コストをおよそ1億分の1に低減したとのことだ。

なお、この研究成果は米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2019年10月8日付けで掲載されている。