知るだけでなく行動を。たかまつななに聞く私たちにできるSDGsの取り組みとは?

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「子供たちの貧困問題を何とかしなければ」「環境問題に対して何か具体的な対策が必要だ」。近年、世界が抱える問題に対し、様々な意見が交わされている。

2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標SDGs(Sustanable Development Goal)をご存じだろうか。17のゴール・169のターゲット(具体目標)で構成され、地球上から誰ひとりとして取り残さないことを掲げる2016年~2030年までの国際目標だ。

SDGsについてどのような取り組みが行われているのか、また私たちがどのようにして向き合っていけばよいのかわからない人は多いのではないだろうか。

株式会社笑下村塾でSDGsを広める活動を行っているたかまつなな氏は、「SDGsは17個の目標であり、行動しなければ意味がない」と語る。

地球温暖化や環境破壊が続く現代で、私たちができるSDGsの取り組みについてたかまつ氏に話を伺った。

SDGsとは、この地球をどう残していくか考えること

「笑って学ぶSDGs」という教材をつくり、学校や企業研修で授業を行う株式会社笑下村塾。ババ抜きカードを使って、17の目標に対する理解を深めたり、私たちにできる具体的な行動を考える活動を行っている。

―たかまつさんはSDGsをどのようにとらえていますか。

そうですね。この地球をどう残していくかが一番大事だと考えています。

今の大人は、地球が抱える問題に対して自分たちの世代で逃げ切れると思いがちです。

しかし、私はそれではだめだと考えています。持続可能な社会や未来を作るには具体的な行動を伴うことが重要です。政治も一緒で、政治家は自分たちの世代や選挙によく行く高齢者層を中心に考えがちです。

そうではなく、自分の子どもや孫の世代まで、どうやったら続くかを考えることがSDGsを取り組むうえで、大事だと思っています。

以前、会社のCSR(企業の社会的責任)で砂漠に木を植える取り組みを行っている企業がありましたが、正直、取り組みと企業の関連性が低く本質的ではありませんでした。

それがSDGsの概念が生まれたことにより、自社内の工場でCO2を削減するなど、行動への距離感が少しずつ近まったと思います。

企業だけでなく個人でできることもたくさんあるので、みんなが行えば社会はもっとハッピーになると思うのですが。

―いま日本はどれくらいSDGsが浸透しているように感じていますか?

朝日新聞社によるSDGsの認知度調査では、2019年8月時点で27%です。経営層や意識高いビジネスマンは知っている人が多いものの、主婦の方など家庭では、あまり知られていない印象を受けています。あとは、学生さんの方がSDGsの取り組みを知っている人が多いですね。

―なぜ学生の認知度は高いのでしょうか?

SDGsに関する中学生向け副教材が中学校で配布されているからです。そのおかげで学校の間では認知度がかなり高まっています。

―たかまつさんのSDGs研修はどのような人が参加されているのでしょうか。

大企業が多いです。その中でもCSRやSDGs推進室などから、「SDGsを社員の人にどうやって広めたらよいかわからない」とよく相談を受けます。大企業はSDGsをやらないとリスクになるので。

―なぜ大企業はSDGsに取り組まなければリスクになってしまうのでしょうか。

投資家の目が大きいからです。

グリーンファイナンスなど、企業は環境に対してどれくらいコミットしているかやSDGsにどれくらい力を入れているかを投資家に聞かれることが多くあります。

その時に、もし「全然やっていません」といったら投資の対象ではなくなりますよね。逆に、環境に配慮していることがわかれば、取引しても良いかなと思ったり、伸びしろを感じさせます。

これから気候変動が世界の共通問題の一つになる中、グローバル基準で投資を考える機会もますます増えていきます。だから、グローバル企業などは外圧の影響を受けて、SDGsに取り組まざるを得なくなっています。

―それで、大企業はSDGsに力を入れているのですね。

そうです。これまでは、特に日本では、CSRはあまり利益になりませんでした。それどころが、社会貢献の面で企業が稼ぐと「なんでそこで稼いでいるんだ」といった偽善者のように受け取られていました。

しかし、最近では SDGsができたことで、「持続可能」という概念が広まり、持続可能性がない寄付などではなく、事業として継続性のあるものにすることの重要性が認識されるようになりました。

SDGsの取り組みが直接自社の利益につながり、グリーンファイナンスなどを財務諸表にも記載されるようになりました。そのことにより企業が正しく評価されるようになったと感じています。

SDGsは17個の目標であり、手段ではない

―SDGsには17個の目標が掲げられています。目標達成に向けて行動しようとした際、何をしたらよいかわからないと思ってしまう人も多いのではないでしょうか。

SDGsはあくまで17個の目標です。

たとえば「私、年収1,000万円稼いでいる超イケメンのやさしい人と結婚したいです。」といったとしても、そんなことを考えている人は大勢いますよね。しかし肝心なことは、どうやってその男性をゲットするのか、つまり手段です。

SDGsも同じで、「私は12番をやっています」と企業が声高に言うことに意味はまったくありません。具体的に「どうやってやるんですか?」という指標まで提示しないといけない。だから、もっと手段を語っていく必要があると考えています。

―手段という言葉が出てきましたが、SDGsの目標に向けて、実際に私たちができる具体的な行動があれば教えていただけますか。

まず、知ることが大事です。あとは、家族に話すことです。

たとえば、500円のTシャツがあります。でも、これがもし児童を働かせて低賃金で作っているものだとしたら、安くても買いたいとは思わないはずです。

これはSDGsの「作る責任使う責任」にあたりますが、消費者が企業に関心を持ち、意思表明をすれば、おのずと企業側にプレッシャーを与え変化せざるを得ないと思います。

もっと身近な行動としては、例えば、地球温暖化を防ぐためにエアコンの温度を下げたり、食糧廃棄物を減らすために、必要以上の食用を買わない。貧困状態にあると予測される子供を見かけたらいち早く児童相談所に電話をしたりする、といったことがあげられます。

―意外と身近にできることはたくさんあるんですね。

研修などを行っていて感じることですが、SDGsの具体的な行動のためのアイデアをほとんどの方は持っています。しかし、なんだかんだ理由を付けて実行せずに終わってしまうのが現状です。

―どうやったら実行に移す人を増やすことができるのでしょうか。

よそ者の私ができることは、できる限り社長などの偉い人を呼び出すことです。

実際に研修を体験していただいて、「社長、どうですか!!!何か良いアイデアありますか?やりましょう!!!」と乗り気にさせることですね。ほんとうはコンサルを付けて目標達成までサポートできたらよいのですが。

もしくは、直接自社の利益につなげる事ですね。あるファミレスは、営業時間を短くしたおかげで、売り上げが上がりました。

営業時間を短縮する前は、深夜営業しないと売り上げが落ちるんじゃないかといっていましたが、いざやってみると人件費がかからず、従業員の働き方改革にもつながりました。だから直接的な利益につながると取り組む企業も多くなりそうですね。

人の役に立つことへの幸せが国際政治を広める活動のきっかけに

―たかまつさんは現在、企業研修やSDGsファシリテーター育成講座などSDGsを広めるために様々な取り組みをされていますが、なぜSDGsを推進しようと思ったのでしょうか。

SDGs推進のきっかけは、国際政治を広める活動を行っていく中で興味を持ったからです。もともとはお笑いを取り入れながら国際政治を楽しく学ぶ活動を行っていました。その中で、バングラディッシュのボランティアの様子を取材する機会がありました。

当時、青年海外協力隊がフィラリア症という足が大きく腫れる症状が出る感染症にかかっている人に向けてボランティアを行っており、現場での活動を楽しみにしながら同行しました。

そしたら「足首を回してみましょう」「今、足が何センチか計ってみましょう」「手洗いをしましょう」などといった基本的なことを教えていて、日本では当たり前に知っていることなのにと愕然としてしまいました。その上、現地の人々に「ありがとう」と何度も言われるんです。

これまでボランティアは、助ける人のために行うものと思っていたのですが、誰かに感謝された結果、自分のためにもなるのだと気が付きました。だから、私はプロボノを広めたいと思っています。プロボノとは、プロフェッショナルなボランティアのことです。

例えば、プログラマーの人が平日は会社で上司に怒られているかもしれないけど、土日にNPOのサイトを更新したら、きっと周りの人に感謝されますよね。ボランティアをすることで、自分の仕事にも誇りをもつことができます。

誰かにありがとうと言われ、承認欲求が満たされる、この楽しさを味わってほしいんです。だから自分のためにボランティアをしてほしいと思い、まずはどんな社会問題があるのか知ってほしいと考えました。

―人の役に立つことの嬉しさを知って社会問題を広めようと考えたのですね。

そうです。最初は笑って学ぶ国際協力などをテーマにライブで行っていたのですが、そのうちにSDGsが出てきました。SDGsは今までの国際協力とは文脈が大きく異なります。それは、「儲けてもいい」という点が強調されていることです。

これまでは、企業における環境問題への取り組みなどは、広報的にしかアピールされていませんでした。しかしSDGsにより投資家の目があることや持続可能が強調され、より広めようと思いました。

―今後、社会課題に対する世間の関心が、より広まっていったら良いですね。

そうですね。SDGsだけでなく、国際問題全体にも目を向けてもらえたら嬉しいですね。

日本を見ているだけでは、どうしても視野が狭くなりがちです。日本は紛争はおこっておらず教育が広く行きわたっており、比較的恵まれています。

そんな環境の中で生きる日本人として国際問題に対してどのような貢献ができるのか、SDGsを通してぜひ考えてほしいです。

取材・文:大畑朋子
写真:西村克也

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