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早起きして出社時刻までにまとまった時間をつくり、好きなことや仕事に充てる「朝活」。忙しいビジネスパーソンの間でも、夜にはなかなか設けにくい勉強時間や自由時間をつくる方法として注目され、定着しつつある。
だが一方で、「何をすればいいかわからない」「どうしても朝に弱くて続けられない」といった気持ちや夜型の習慣によって、朝活へ踏み切れないという人も多いのではないだろうか。
渋谷でビジネス書の刊行イベントを定期的に行い、早寝早起き習慣を身に着ける朝活コミュニティ「朝渋」を運営している“5時こーじ”ことモーニングラボ取締役の井上皓史さんに、ビジネスパーソンへの“朝時間の活用方法”を教えていただいた。
幼少時から身についた早寝早起き。周囲を巻き込んだ朝型ライフが「朝渋」につながった
——井上さんは、もともと早寝早起きの習慣があったのですか?
そうです。父が朝6時には家を出るので、家族はみんな早寝早起きでした。夜も22時には消灯していて、それが当たり前だったんです。
一方で、大学に進学すると徐々に周囲の友人は夜型になりますよね。飲み会にも誘われるようになって……。でも僕はどうしても夜起きているのが苦手で、飲み会に参加しても一次会まで。代わりに朝早く起きて勉強や自由時間にあてていました。
——私は完全な夜型なので、反対にうらやましいです(笑)。社会人になってからはいかがでしたか?
新卒入社した会社の始業時間が10時でした。5時起きが当たり前の僕にとって10時は、既にひと仕事終えているような時間です。みんなが10~12時、12時~18時というリズムで仕事をしている一方、僕はそれまで5~9時、10~12時と、午前中だけで2つの時間帯を持っているような感覚でした。
入社してからは5~9時の時間帯を奪われる形になり、当然残業は避けられません。効率が大きく下がってしまい、これではいけないと考えて「僕は早寝早起きをするので、朝早く来て、夜は早く帰りたい」と上司に相談しました。
——すごい!「早く来させてほしい」と交渉したんですね。
その結果、7時に出社して仕事ができるようになり、成果は大きく向上しました。転職先のITベンチャーでも社長の理解を得て早寝早起きスタイルで仕事をさせてもらっていましたが、まず早起き習慣に巻き込んだのはその社長でした。
「そんなにいいなら俺もやってみようかな?」というところから僕の早起きのコツを共有し、いつしか社内も朝型になっていって。
そんなときに出会ったのが現在複業研究家として活躍されている西村創一朗さん。彼は完全な夜型で、深夜に届いていたメッセージに僕が5時に起きて返信すると「こんな時間まで起きているんですか」と言われたことも(笑)。
僕は当時社会人2年目だったのですが、夜型で優秀な人が朝型になったらさらに生産性が上がるのでは? と考えていました。
独立したばかりだった西村さんは生活リズムが定まっておらず「僕を朝型にするコンサルティングをしてほしい」と言われ、1ヵ月間就寝と起床の時間を報告してもらい、食事や入浴のタイミングなどを細かくアドバイスしたところ、早起きが習慣化したんです。
「この感動体験はスゴイ! 全ビジネスパーソンに伝えるべき!」と声をかけていただいて、朝渋の原形となる活動がスタートしました。
——現在、朝渋の活動はどのようなものですか?
ビジネス書を刊行された方による著者イベントなどを月4回行い、そこで「早起きっていいかも」と感じてくれた人には「朝渋KNOCK」という特別プログラムに参加してもらっています。
コミュニティである「朝渋AWAKE」は既に早起きを習慣化した猛者ばかりなので、彼らとの温度差をなくすために早起き初心者向けの3ヵ月プログラムをつくり、まずは徹底した早起きの習慣化を促しているんです。AWAKEに入るにはKNOCKを卒業する必要があります。
それから、遠方の方向けに「朝渋ONLINE」を展開しています。北は北海道から南は沖縄まで参加者がいて、朝渋イベントをオンラインで見られるようになっています。
何にも追われず自由に使える“余白”の時間で、心がポジティブになる
——早起きをするメリットにはどのようなことが挙げられますか?
朝渋にフォーカスしていうと、夜にセミナーに参加するよりも朝のセミナーやイベントのほうが得られるものが大きいと感じます。夜はイベントで何かを手にしても、そのあとは家に帰って寝るだけという人も多いでしょう。
翌朝には昨日の興奮も薄れてしまい、アウトプットができないままになってしまいますが、朝ならそのあと出社して、同僚などに「今朝こんなイベントに参加して……」と共有でき、イベントの何がよかったか、どんな学びがあったかを言語化して自分のものにできるんですよ。
朝渋イベントの参加者でも、早起きにチャレンジしてみたい! という人は毎回1~2割程度。それでも着実に増えていますし、朝渋のメンバーはスタート時の30人から350人まで増えました。
それから僕が思う一番のメリットは、今って時間に追われている人が多いと思います。
10時に出社して、終電近くで帰宅して眠って、翌日もなんとかこなして、金曜日は夜遅くまで飲み会、土曜はお昼まで寝て家事を片付け、夕方から活動開始して、日曜も同じように過ごしてまた月曜が来る……と憂うつになりますよね。
——心当たりがたくさんあります……。
そうした生活の流れだと、自分は本当は何がしたいのかがわからなくなることが多いんですよ。「会社に所属して仕事をしている」以外の自分を見失ってしまうこともあります。
それが朝にカチっと起きてみると、出社までは2-3時間ほど余裕があります。その時間に読書や勉強、誰かと約束してモーニングに行くなど、“自分で選んだ行動”を差し込むことができます。
この自分で決めたことをやりきるということが、とても重要。早寝早起き宣言をして、日々自分との小さな約束を守ることで「今日もできた!」というポジティブな気持ちで一日をスタートできるようになります。この一日のスタートダッシュは本当に気持ちがいいですよ。
ビジネスパーソンの方なら、もちろん朝にタスクを片付けてしまうのもよいでしょう。僕も毎朝5時に起きて6時までに身支度をすませ、7時頃からは読書やイベント運営、カフェでのタスク消化に時間をあてています。
今日もカフェに行ってから髪を切って、さらに初詣もしてきました(笑)。午前中に3つのタスクをこなすことができるんです。
朝はノイズが入らない時間なので、一人で集中したいタスクを入れておくのがおすすめです。朝に重要なタスクが終わっていれば、午後はタスクに追われることもなく、心に余裕が生まれます。この余裕こそが、早起きの最大の魅力ですね。
人を巻き込むと、早寝早起きは習慣化しやすい
——早起きの魅力、わかってはいてもなかなか実践が難しいという人もいると思います。朝が苦手な人が変わるにはどのように行動すればよいですか?
早起きに目がいきがちなのですが、早起きをするためには早く寝ることがより重要です。何時に寝たいかを決めたら、そのためには夜どう動くべきかを逆算していきましょう。
例えば飲み会は減らさなければなりませんし、ダラダラと見ていたテレビやNetflixもキリのいいところでストップしなければなりません。
仕事が夜遅くまであるから……というお話もお聞きしますが、もう「残業」をやめてしまいましょう(笑)。朝早く出社できれば、夜に使っていた2~3時間を朝にずらせます。さらに朝は他のタスクに邪魔されることがないので、効率は格段にアップするはずです。
——今は残業を認めない企業も増えていますし、早寝早起きに切り替えれば夜が単なる空き時間になってしまうことも防げますね。ちなみに、井上さんは夜をどのように過ごしていますか?
僕は22時に寝るようにしているので、17時半に帰宅して、18時半に食事をとって入浴し、20時には自由時間です。録画してあるドラマを見たり、読書をしたりながら過ごしています。
実践しやすいのは夜のお付き合いを減らすことですね。飲み会をかわすコツはたくさんありますよ。大人数だと話し足りずについつい二次会に流れがちなので参加しません。
少人数の密度の高い会話ができる飲み会を心がけるとか、3時間飲み放題はつけない、早めの時間にスタートして早めに切り上げる、など。僕みたいに早寝早起きキャラが強くついていると、理解も得やすいです(笑)。
——なるほど。最後に早寝早起きのコツを伝授していただけますか。
「宣言すること」です。友人や同僚、家族、SNSでもいいので誰かに「今日から早寝早起きする」と宣言すると、自分へのほどよいプレッシャーになります。それから、誰かと一緒にやってみることもよいプレッシャーになりますよ。
毎週一緒にモーニングに行く約束をしたり、仕事の予定をあえて朝に入れたり、朝起きなければならない状況を作っていけば、自然と習慣化していきます。
朝に人と会うのは、想像以上の効果があります。仕事の話であれば後ろの時間が決まっているのでダラダラせずに密度の高いやりとりができるはずです。
また、仕事のあとで疲れていることも多い夜と比べてポジティブな気持ちで向き合えますし、朝渋でも7人ほどのチームでモーニングに行くのをミッションにしているほどです。
早寝早起きは、今日からでもできます。朝渋のイベントだけが目的で早起きした人のなかからも「習慣化したい」という人は毎回現れますし、今日早く起きられたということだけで自分を好きになれるという声も聞きます。
毎朝暗い気持ちで通勤しているビジネスパーソンの方にも、試してみてもらえたらと思います。
取材・文:藤堂真衣
写真:大畑朋子