常に“自分ファースト”の働き方で、大企業から転身。海ぶどうを世界へ広める

さまざまな大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。

今回は、沖縄県・糸満市で海ぶどうの養殖、販売、加工品の開発を行う山城由希さん。大学を卒業後、大手企業に3年間勤務し、父親が起業した海ぶどう関連事業へ転職。現在は沖縄に移住し、活躍されています。

3人のお子さんがいらっしゃる山城さんは、「自分がやりたいことをやるために、どうすればいいか」を常に考えているそう。山城さんの自己流の働き方、そして仕事に対する使命感についてお伺いしました。

大学を卒業後、組織論に興味が湧き、企業へ就職。3年後に退社

——今、どんなお仕事をされていますか?

山:沖縄県・糸満市で、海ぶどうの養殖業をメインとした会社、「日本バイオテック」で取締役常務として働いています。

海ぶどうを生産して販売するだけではなく、実際にどういう風に作っているかを観光客や地元の方に体験、見学していただく催しも行っています。

“海ぶどうの素晴らしさを知っていただく”という目的から、フレッシュな海ぶどうを食べられるカフェや販売ショップ、民泊などもやっています。海ぶどうを軸に、複合的な活動をしていますね。

——東京で生まれ育った山城さんが沖縄で働くようになるまでの経歴を教えていただけますか?

山:まず、慶應義塾大学を卒業後、企業で物流関係の仕事に就いていました。

——就活は順調だったんですか?

山:自分の父親が起業しており、働く姿をずっと近くで見ていたので、“働く”ということに関しては意欲的でした。

ただ、“就職する”ということに対して、なかなかイメージが湧かなかったんです。

——そこからどのように就活を進めていかれたんですか?

山:環境情報学部に所属しており、ゼミで組織論や人材育成について学んでいく中で、組織論に興味が出てきたんです。

そこから、大手企業が社会の中でどういった仕事をしているか、そして組織の中の人材育成や教育などがどうなっているかに興味が湧き、まずは企業に就職してみようと思うようになりました。そこからは迷いなく進めましたね。

——大手企業に勤務したことでよかった点はありますか?

山:ビジネスの基本中の基本を学べたことだと思います。

名刺の渡し方やメールの書き方、電話の取り方。そして報告、連絡、相談といったいわゆる“ほうれんそう”の大切さなど、基本的なことを最初に学んでいるかどうかって後々大きく変わってくるんじゃないかと思います。

——仕事の内容だけではなく、仕事の進め方について学べたということですね。

山:そうですね。社会の中で自分がどういう位置づけにいるかなども、感覚として学べたように思います。

——それから海ぶどうの事業に進まれるんですね。どういったきっかけがあったんですか?

山: 海ぶどうの事業は元々父が起業した会社なんです。

間近で父の働く姿をずっと見ていて、「イキイキしていて、楽しそうだな」とずっと思っていました。

それとは逆に、大手企業で10年、20年になる先輩を見ていても、この先自分がどういった道を進むかについてある程度予想がついてしまい、あまりワクワクしていないことに気づいたんです。

あと、父の事業の内容自体にも興味が出てきていたこともあります。

——海ぶどう事業のどういった部分に興味を持たれたのですか?

山:在学中は、アートマネジメントについても研究していたんですが、アーティスト自身に才能があっても、マネジメントがしっかりしていないと世の中に良い作品を売り出せない、という部分に興味がありました。

その興味が湧いた部分と、当時父が扱っていた海ぶどうが自分の中で繋がったんですね。

まだ世の中的には「海ぶどうって何?」という時代だったので、この素晴らしい産物を、これからどうやってマーケットに出していくかに興味が出始めたんです。

——そこで企業を退職され、お父様の会社へ転職されるんですね。

山:はい。3年間勤めた企業を退職し、父の会社にジョインしました。

まずは東京での営業活動に勤しみ、販売ルートの新規開拓などをしました。その後沖縄に移住し、現場を見ながら、さらに海ぶどうの素晴らしさを知ってもらえるような場所作りを提案しています。

安定した仕事より、ジェットコースター的ビジネスに魅力を感じ、ベンチャーへ

——大手企業からベンチャーともいえる会社に転職されたのは、どういったお気持ちからでしたか?

山:先ほどお話したように、良いものをどうやって世の中に出していくかということに興味があったのもありますが、父と話していると、すごくアドレナリンが出るんですよ。

とっても楽しそうに仕事をする人なので(笑)

実際に海ぶどう事業に携わってみると、もちろん大変なこともあるし、時期によって波があって不安定ではあるんですが、その分自分が頑張った成果も目に見えてわかるんです。

要は、自分が安定した場所が好きかどうかではないでしょうか。

ジェットコースター的な感覚で、先が見えない不安もありますが、自分がどこにワクワクするかを考えた結果ですね。

——現在の海ぶどう事業はご自身にあっていると思われますか?

山:はい、かなり合っているんじゃないかと思います。

——どういった部分でそう思われるんですか?

山:私、どんどん新しいものを開拓していくのが好きみたいなんです。

海ぶどう事業を始めた時、東京で一軒一軒飛び込み営業をしていたんですが、その時期も毎日すごく楽しかったんですよね。

海ぶどうのアイスクリームや海ぶどうを練りこんだ麺などの商品開発も行っているんですが、アイディアが浮かんだら都度落とし込みたい性格なので(笑)、どんどん商品として実現できていくことにも喜びを感じています。

——山城さんが思う、ビジネスにおける海ぶどうの魅力はどこですか?

山:海ぶどうって、食感も他の食べ物にないし、すごくデリケートで取り扱いが難しいんです。

海の食べ物なのに、常温で保存しないといけないとか、すごく変わっているからこそ面白いんですよね。

未知の食材だからこそ、大手企業はあまり参入してこない商材でもあるんです。

私は、経営的な観点から見ると、ニッチなものって面白いと思います

大変な部分と面白い部分があって、とても興味深いですね。

——転職してからの悩みはありましたか?

山:うーん、悩みは常にありますね。小さいことで言えば日々悩みはあるし。

でも悩み自体って常にアップデートされていくので、小さな悩みでも一つ一つ解決して、自分の能力もアップデートしていくように心がけています。

常識にとらわれず、「自分がやりたいことをやるためにどうすべきか」を常に考える

山城さんが、“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?

山:ライフワーク的な感覚なので、楽しむ、楽しまないということを意識したことがあまりないかもしれません。

それよりも私の場合は、親が築き上げてくれたものを自分がブラッシュアップしていくという使命のようなものを感じていると思います。

——使命感が山城さんの働く意欲の源になっているんですね。

山:はい、それもあると思います。

働くことを続けるって、お金を得るためだけではなく、そこに何かプラスの感情が必要だと思うんです。

私にとってはそれが、使命感であったり、海ぶどうを世界に広めたいと思った最初の感情だったり、日々感じるワクワクなんだと思います。

——山城さんが働く中で喜びを感じられる瞬間はどういった時ですか?

山:自分が働くことでお客さんや周囲の人が喜んでくれると、自分がやっていることの意味を感じられますね。

それが、どんなに大変な時期でも自分を奮い立たせてくれるものだと思います。

そういった外部要因や、自分の内面から自然と湧き出てくる感情など、何かしら強いものがないと、仕事人生を走り続けるのは大変だと思います。

——ご自身の働き方で意識されていることはありますか?

山:「自分がやりたいことをするためにはどういう風に動けばいいか」と常に考えています。

今3人子どもがいて、下2人は2歳と0歳なんです。

少し前になるんですが、交渉の結果、1年越しでやっと海ぶどうをフランスに輸出できることになり、現地で商談会があったんです。

商談会への参加がこれから先の仕事に必ず役立つと思ったので、妊娠中でしたが1歳の子どもを連れて渡仏しました。

——実際にフランスに行かれてみて、いかがでしたか?

山:どうしても自分の目でフランスの市場や現地の反応を見たかったので、とても素晴らしい経験になりました。

また、試食会を行い、お客様が海ぶどうに対してどういう反応をしているかも実際に体感することができました。

この時も、「フランスに子連れで行くにはどうしたらいいか」を考え、ベビーシッターさんにフランスまで同行していただきました。

今も、授乳しながら仕事したり、ベビーシッターさんにお世話になったり、「自分がやりたいこと」のために策を練りながら、自分なりのやり方で働いています

——“はたらく”ことに関するご自分のルールや、これだけは譲れないというような思い、信念などがあれば教えてください。

山:従業員に感情的にならないことですかね。

私も若い頃は、ストレートに意見をパーンってぶつけていたんですが、今はかなり考えてから発言するようにしています。

現場で仕事仲間にやる気になってもらうためには、どういう順番で、どういう言い方で言うと良いかなど、日々試行錯誤しています。

——“はたらく”を楽しもうとしている方へのメッセージをお願いします。

山:常識にとらわれないでください

「誰かがこう言っていたから」「こうすることが普通だから」ではなく、「自分はどうしたいか、そのためにどう行動するべきか」が大切だと思います。

大学を出たら就職しなきゃいけないなんて決まりはないんですから、周りの目を気にしないで生きてみてください。

自分の常識が覆された時、きっと自分の進むべき道が見えてくると思います。

山城 由希(やましろ ゆき)さん
日本バイオテック 取締役常務
1982年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、大手企業勤務を経て、日本バイオテックに入社。父が立ち上げた海ぶどうの事業に携わり、東京で新規販売ルートの開拓など営業活動を中心に行う。その後沖縄に移住し、日本バイオテックの海ぶどう事業部門「海ん道」(http://www.uminchi.com/)で、養殖から販売、加工品の開発、体験イベントまで幅広い事業を担当。

転載元:CAMP
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