2019年12月、国内スマホ市場に中国Xiaomiが参入を発表し、サプライズとなった。同じく中国で人気のOPPOもテレビCMの放映を始めるなど、中国メーカーが相次いで日本向け展開を強化している。

その背景には、10月に施行された法改正や来春開始予定の5Gサービス、そして米中貿易摩擦に直面したファーウェイの存在が見え隠れする。こうした動きは2020年のスマホ市場にどのような影響をもたらすのだろうか。

禁輸措置を受けたファーウェイの人気が中国で沸騰

2019年の世界のスマホ市場で、注目を浴びたのが中国ファーウェイの動向だ。アップルを抜いて世界シェア2位に躍り出ながらも、米中貿易摩擦により米国から禁輸措置を受け、事業展開に支障をきたしている。

9月には最新のフラグシップスマホ「HUAWEI Mate 30 Pro」を発表したものの、禁輸措置によりグーグル製サービスの搭載を断念。Google PlayストアからAndroidアプリをダウンロードすることもできなくなり、日本を含む多くの海外市場で発売を見送る結果となった。

英国の携帯ショップで売られる「Mate 20 Pro」は1年前のモデル。最新のMate 30シリーズは売られていない(2019年12月撮影)

だがファーウェイは2019年10月、スマホ出荷台数が昨年より64日早く2億台に達したことを発表した。

その理由は中国市場における急激な伸びにある。米IDCの調査では、2019年第3四半期の出荷台数は昨年同期比で64%増加し、シェアは42%に達した。中国国内でファーウェイを支持するユーザーが急増したことが背景にあるとみられている。

中国・上海ではファーウェイのMate 30シリーズが大きな注目を浴びていた(2019年10月撮影)

日本市場に注目したOPPOとXiaomi

ファーウェイが中国でシェアを急増させた一方、割を食ったのが上位争いを繰り広げていたOPPOやXiaomiだ。先に挙げたIDCの調査では、前年比64%増を達成したファーウェイに対しOPPOは21%減、Xiaomiは30%減と、軒並みシェアを落としている。

そこで両社が目を付けたのが日本市場だ。折しも日本では2019年10月より改正電気通信事業法が施行され、端末の割引が制限された。これにより最新のiPhoneなど高価格帯端末の割引が難しくなり、大手キャリアは中・低価格帯のスマホを取り揃えてきた。

さらに2020年春には、5Gの商用サービスの開始が予定されている。韓国のように5Gスマホの普及を補助金で後押しする国がある一方、端末割引が制限されたばかりの日本では、手頃な価格の5Gスマホが求められることになりそうだ。

OPPOは高コスパスマホとして、防水やおサイフケータイに対応した3万円台の「Reno A」を投入。日本全国でテレビCMを放映するなど大きく勝負に出た。自社回線の無料サービスを始めた楽天モバイルや、KDDIグループのUQ mobileなどキャリアによる採用事例も増えている。2020年には5Gスマホの投入も予告してきた。

OPPOは3万円台の高コスパスマホ「Reno A」や、指原莉乃さんを起用したテレビCMを投入
英国の大手キャリアEEが取り扱うOPPOの5Gスマホ「Reno 5G」

その後を追うXiaomiは、12月に日本のAmazonでスマホの販売を開始。販売チャネルやサポート面など、日本市場へのローカライズはまだこれからという印象だが、2020年春の5Gサービスを視野に入れた参入タイミングなのだという。

Xiaomiはスマホ以外にも、スマート炊飯器に代表される2,000種類以上のIoT家電を取り揃えている。無名だが技術力のある深セン企業とコラボすることで、中国の高コスパ家電をXiaomiのデザインとブランドで売るビジネスモデルだ。

Xiaomiが日本で発売するスマートIH炊飯器。元三洋電機の技術者が開発を手がけており、価格は9,999円と手頃だ


XiaomiブランドのIoT家電は、深セン企業などとのコラボにより多数のラインアップがある

2019年の国内スマホ市場は、依然としてアップルが半数近くのシェアを占める中で、Androidではシャープ、富士通、京セラといった国内ブランドが大手キャリア向けに端末を供給することで安定したシェアを誇っている。

だが中国メーカーの強みはその規模にある。年間数百万台規模の日本メーカーに対して、OPPO、Xiaomiともに年間のスマホ出荷台数は1億台を超えている。ファーウェイが足踏みを余儀なくされている間、どれだけ日本市場に食い込めるか注目したい。

取材・文:山口健太