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忙しいビジネスパーソンは「移動時間=仕事時間」と捉えている人も多いだろう。
『ドラゴン桜』や 『宇宙兄弟』などの有名漫画作品の編集者を務め、代表取締役としてクリエイターエージェントのコルクを立ち上げた佐渡島 庸平氏もその一人だ。打ち合わせ場所間の移動に、多い時は一日10回もタクシーを利用するという。
そんな佐渡島氏は、タクシー移動をよりスマートにするために愛用しているサービスがある。タクシー配車アプリ『S.RIDE(エスライド)』だ。タクシー配車の半分は同アプリを利用しているという。
東京で働く忙しい人のため、移動をより快適にすべく誕生した『S.RIDE』。
S.RIDEは都内タクシー会社6社(グリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ、東京都個人タクシー協同組合)と提携しており、都内最大級のタクシーネットワークによって、アプリを利用することで現在地から最寄りのタクシー配車が可能となっている。
アプリを起動しワンスライドでタクシーを呼び、支払いはキャッシュレス。「Simple、Smart、Speedy」なタクシー乗車体験を可能にし、2019年10月には 2019年度グッドデザイン賞を受賞している、今話題のタクシー配車アプリだ。
今回は『S.RIDE』を使いこなす佐渡島氏にサービスの魅力を伺った……のだが、予想と反して日本のタクシー配車、そしてタクシー配車アプリの課題が語られることに。多い時は一日10回ほどタクシーを利用する佐渡島氏(以下、敬称略)は、タクシー配車へどんな考えを持っているのだろうか。
タクシーは会議室?個室空間ならではの使い方
―― 多い時は一日10回もタクシーを利用するということですが、どれくらいの距離間にタクシーを利用するのでしょうか?
佐渡島:短い距離でも、長い距離でもタクシーは使いますよ。長い距離の時は会議室として利用してます。
―― 会議室ですか?
佐渡島:一日スケジュールが埋まっているので、移動時間に打ち合わせを詰めるんです。テレビ会議することもあれば、社員と打ち合わせに出向くときは定例の時間として使うことも。
最近はボックスタイプのタクシーもあるので、打ち合わせしたい相手と一緒に乗って会議がしやすくなりましたね。
タクシーって個室じゃないですか。気兼ねなく打ち合わせできる空間なので、重宝しています。
- 株式会社コルク 代表取締役 佐渡島 庸平
- 2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。
2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。
著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。
従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。
―― タクシーの中で仕事のインプットをしたり読書をしたりするビジネスパーソンも多いようですが、佐渡島さんはいかがですか?
佐渡島:単純に酔っちゃうからタクシーの中で読書はしないですね。酔わないならそういう使い方もアリじゃないですか。
ただ、僕は基本的に電車の方が好きなんですよ。世の中で何が流行っているとか、時代の変化とか、街ごとの空気とか、そういうことを知るのには電車の方がいい。ビジネスに関わるインプットをするなら、本来は電車移動が良いんですけど……どうしても会議や打ち合わせしなければならないことが多いから、自然とタクシーの利用が増えていますね。
―― タクシーに乗らざるを得ないんですね。
佐渡島:あ、でも、家族で移動するときや休日に出かけるときなど、プライベートはタクシーを愛用しています。
―― 車をお持ちではないということですか?
佐渡島:起業したときに車を売ってしまって。タクシーはどんなに頑張ってもプライベートで使う分には年間100万円も使わないと思います。都心で車を持っていると、駐車場やガソリン代に維持費、保険料で年間150〜200万円ほどかかるじゃないですか。さらに、それなりの車を買って、10年の分割払いにしたら年間250万円くらいかかることもある。その車に使う費用の年間250万円、プライベートでタクシー使うのはかなり大変ですよね?
しかも、自分で車を運転して移動するって結構手間なんですよね。駐車場を探して、駐車場が空いてないと並んで待って、用事が済んだあともわざわざ駐車場に移動して。それが非常に面倒。
お金のことや、無駄なイライラを削減することを考えた結果、車自体をなくしました。どこに住むかによりますけどね。僕は都心に住んでいるからこそ、タクシーで事足りるというのはあります。
タクシーに乗るまでの“労働”をアプリでもっとスマートに
―― ビジネスでもプライベートでもタクシーを利用する中で、タクシー配車アプリを使うことの良さはどこに感じますか?
佐渡島:短い時間にも価値があると思っている人にとって、タクシー配車アプリは利便性が高い。
タクシーに乗るまでの行為って労働と変わらないんですよ。道に出て、タクシーが来るのを待って、タクシーを停める。ロボットでもできるような労働です。
あと、支払いの時間も無駄です。例えば、歩いて10分の距離でタクシーの利用をするとき、カードで支払うと運転手さんから露骨に嫌な顔をされることもあって(笑)。とはいえ、現金支払いになると運転手さんによっては時間がかかる。早く移動したくてタクシーを利用したのに、結局徒歩とそんなに変わらない。だから、近い距離はなるべく歩くようにしていました。
移動に関することを考えて行動すればするほど、そこに費やす時間や手間が発生する。それをなくすのがタクシー配車アプリの良さですね。
自分でわざわざタクシーを停めなくても良い、キャッシュレス対応なので支払いの時間も短縮できる。タクシー配車アプリのおかげで、短い距離でもタクシー移動する頻度が増えましたよ。
―― 現在、さまざまなタクシー配車アプリがリリースされています。佐渡島さんはなぜ『S.RIDE』を使っているのでしょうか?
佐渡島:一番サクッとタクシーが来てくれるのが『S.RIDE』だったからです。ほかのタクシー配車アプリも使ってるけど、このサクッと感は『S.RIDE』が一番。ホーム画面の一番タップしやすい場所に置いています。
【S.RIDEが提供する快適な乗車体験とは?】
S.RIDEは、アプリを起動したあと、ワンスライドで1番近くのタクシーを配車できる。迎車位置情報を自動で調整する『ニアレストロード』機能が搭載されているため、細かな調整も不要だ。事前にクレジットカードを登録しておけば、ネット決済も可能で、降車時に支払いで手間取ることもなく、スマートに降車できる。2019年10月には、乗車予定地と目的地の走行距離を踏まえた自動計算で運賃を確定する『事前確定運賃サービス』を導入している。
タクシー乗り場でタクシーに乗る際や流しでタクシーに乗る際にも、独自の二次元バーコード決済「S.RIDE Wallet」で、移動中に決済を完了させることが可能だ。
キャッシュレスに対応していることで、無駄な時間を削減できるというのも、都会で働くビジネスパーソンにおいて重要な要素だといえるだろう。
―― 『S.RIDE』を使い始めたキッカケは?
佐渡島:知り合いの経営者がFacebookで「S.RIDE使うなら今が狙い目」と投稿していて。それがきっかけで、今ではヘビーユーザーになりました。
ただ、それはユーザー数がまだそれほど多くなく、タクシーの台数が現段階では事足りているからだとも思っています。この記事の影響で『S.RIDE』のダウンロード数が増えたとき、今の快適さが担保できるのか……それが不安ではあります(笑)。
今でさえも10分待つことはありますからね。10分待つならアプリは使わずに駅まで歩きますよ。
快適さの追及が“移動”を無意識の行為にアップデートする
佐渡島:正直な話、今の日本のアプリは『S.RIDE』に限らず、すべて不便だと感じています。タクシーを呼ぶのにアプリを起動して、配車して、支払いして……その行為だけでも面倒です。さらに10分、それ以上の時間を待つこともある。
とにかく移動を簡略化したいから配車アプリを使うのに、現状まだストレスを感じることが多いんです。移動したいと思ったとき待たずに配車できて、支払いもbeaconやBluetoothで簡単にできるくらいの快適さがほしい。
―― 海外の配車アプリは日本と比較したら便利?
佐渡島:便利だと思いますね。アメリカや中国など、世界的にタクシー配車アプリの普及がかなり進んでいます。日本ではなぜあまり普及が進んでいないかというと、シンプルに快適に使えるアプリが今までなかったから。
そんな中、『S.RIDE』は今あるタクシー配車アプリの中では一番10分以下で配車できることが多いので、現状一番使っているという感じです。
―― 佐渡島さん的にどんなタクシー配車アプリなら今以上に快適さを感じますか?
佐渡島:基本的なインフラ部分ですね。配車時間が正しいこと、指定した場所に配車されること。
そう考えると日本のタクシーアプリはまだ全般的に精度が低いですね。『S.RIDE』もピンを立てたところに配車されていないときがある。(笑)
あと、『S.RIDE』にはメッセージ機能が搭載されています。乗車するまでにタクシーの運転手さんと簡単なメッセージのやり取りもできるので、そこでちゃんとしたコミュニケーションが取れるかは大事。運転手さんから「配車場所にいます」ってメッセージに書いてあるのに、見つからないこととかあるんですよ。そういうやり取りは、海外のタクシー配車アプリの方が快適。ただここは、運転手さんへの教育が必要な部分だとは思いますね。
―― いくらアプリを使用しても、乗車するまでにさまざまなストレスに直面するんですね。
佐渡島:だから、配車アプリはもっと乗車するまでの快適さを徹底することが重要だと思います。配車アプリで移動を極限まで無意識の行為に落とし込んでほしいです。移動したいと思って移動しているわけではなく、目的地に行くために移動しなきゃいけない。移動しなくていいならしたくないんですよ。にも関わらず、移動でかかる負荷があまりにも大きい。その負荷を配車アプリで簡略化してくれるかどうかが僕の中では重要です。
さらに欲を言えば、乗車後の快適さもタクシー配車アプリで設定できるといいなと思いますね。
―― 乗車後の快適さとは?
佐渡島:例えば、運転手さんとどれくらい話すかを乗車前にアプリで選択できるとか。プライベートに観光で乗車したときに「話したい」を選ぶ。疲れてて移動中に睡眠を取りたいとき「話さない」を選ぶ。みたいに、乗車後の空間を設定できると便利。
ほかにも、ゲーム性があっても面白いかもしれない。
僕、活動量計用アプリを普段から使っていて。使い続けていてわかったのが、疲れが溜まる時期が毎月同じだったんですよ。なので、その時期を意識して、疲れないように体調改善をしています。
というように、人のちょっとした動きを長期的に見ることって価値だと思うんです。タクシーに乗っている距離や在り方をデータ化して見られるようにするだけでも、タクシー配車アプリを使う価値が上がる。
ただタクシーを配車するだけでなく、少しのことで楽しめるような仕掛けを期待したいですね。
モビリティの在り方を変える。タクシー配車アプリが持つ希望の光
―― とはいえ、タクシー配車アプリがないときと比較したら、タクシー配車は便利になったと感じますか?
佐渡島:それはもちろんです。タクシーに乗ることの価値って、時間とお金が節約できることだと思います。今までタクシーは自分で時間やお金のコントロールができないから不便だと思われていた。自分の車を持つ方が便利だと。それが、配車アプリによって、タクシーもコントロールできるようになってきました。
そして、今後タクシーを自分でコントロールする以上に、シェアリングエコノミーとして活用できると、さらに便利になる。タクシー配車アプリは、その基盤をつくるキッカケになり出していると思います。
例えば、タクシーが混んでいる場合、相乗りでもいいんですよ。待つ時間を短縮できる上に、お金も折半できます。
海外ではタクシーの“相乗り”をする人が増えているけど、日本ではまだ普及が進んでいない。海外と同じように、タクシーを相乗りできれば、とにかく便利になると考えています。
便利であることは、余裕を生む。その余裕が忙しいビジネスパーソンの精神的なゆとりを生みます。
―― 今一番そのゆとりを生んでくれる便利なタクシー配車アプリは『S.RIDE』……ということでよろしいでしょうか…?
佐渡島:まぁ、そうですね。僕、『S.RIDE』超使っているので、今以上に便利になれば、すごくいいなと。こうなったらもっと良くなるんじゃないかって課題を見つけられるほど、使い込んでるから(笑)。
まだまだこれからのところはありますけど、時代の流れに合った形で世の中に向き合おうとしているサービスだと思います。今後そうやって時代の流れとともに、さらに進化していってほしいですね。
より使い心地が快適になれば、もっとタクシーにお金を落とします。同じようなユーザーも多いはずです。シェアリングエコノミーを含め、今タクシー業界は変革期にあると考えています。『S.RIDE』は、そんなタクシー業界を変えていく一歩目なのではないでしょうか。『S.RIDE』のこれからの進化を期待しながら、今後も使っていこうと思います。
取材・文:阿部 裕華
写真:西村 克也