28歳、伸びるビジネスパーソンが見る景色とは

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28歳、と聞いて皆さんはどんな姿を想像されるだろうか。

社会に出てから数年が経過し、各業界では頭角を現して活躍の場を広げるビジネスパーソンが増加する年齢ではあるが、その実態は様々である。

2018年に厚生労働省が実施した7,658事業所を対象にした調査では「現在の仕事や職業生活に関する強い不安、悩みを抱えストレスになっている20代労働者」の割合は57.6%に及んだ。

順風満帆に実績を挙げて社内昇進する者、転職を重ね活躍の場を広げる者。中には起業する人もいるだろう。一方で日々の仕事がルーティーン化することで新鮮さが失われ、漠然とした悩みを抱える者も少なくないと言える。

そして、結婚や出産等ライフステージの変化を意識せざるを得ない、といった新卒当初と比較してキャリアの向き合い方が多様化する分岐点となるのが、まさに28歳という年齢ではないだろうか。

筆者は転職エージェントのキャリアアドバイザーとして若手ビジネスパーソンの悩みを相談受ける中で、男女別に不安や葛藤の中身に違いはあるにせよ壁にぶつかり思い悩む年齢であることは共通していると感じている。

今回は、筆者が見た“28歳が見ている景色”とその後活躍するビジネスパーソンの特徴について話していこうと思う。

28歳男性、同級生の活躍を気にせずにはいられない

しばらく顔を見ていなかった会社の同期や大学時代の同級生が活躍する様子を、ふと開いたSNSのタイムラインで発見し、思わず食い入るように見てしまう。

入社当初はイケてないと思った同期がオーダーメイドのスーツに身を包み自信に満ち溢れた表情は順風満帆さを物語っている。そして、大学で一番可愛かったあの子を射止めたのは奇しくも自分が就職活動で落ちた第一志望の会社に入社した、同級生のアイツだ。

30歳を目前にして立ち止まり、先輩や上司、社外にいるビジネスパーソンと比較して「このままでいいのか…」と漠然とした焦りを感じるのは28歳という年齢の特徴と言えそうだ。

WEB広告代理店最大手、サイバーエージェント社では26歳という若さで子会社の役員に抜擢されるなど、業界によっては28歳を迎えるまでに年収も立場も大きく変化がみられる。

浪人や留年を経験したり、大学院へ進んだことで社会に出てまだ2〜3年というフレッシャーズもいれば、公務員試験や司法試験の合格に向け勉強を続けている人もいる。その努力が実る人、試験や就職に失敗して希望の職に就けず仕方なく生活のため今の仕事を選んだ人もいるのが実態だ。さらに、早ければ妻子を持つ人まで出てくる。

28歳男性のビジネスパーソンと話していて痛感するのは、同級生の存在が彼らの心を時に奮い立たせ、時に縛り苦しめているということだ。30代で間違いなく行なわれるであろう同窓会の場で、かつての仲間達と顔を合わせることになったら、その会話は容易に想像できる。なんとしてもそれまでに成功を収めたい、他人に胸を張って言える仕事と収入を叶えていたい。そんな野望やジレンマと無意識に戦っていることがある。

この「他人と比較する」行為は、悔しさを胸に仕事へ打ち込むための原動力になれば全く問題ないのだ。しかし、日々の仕事に邁進する中で常にこの第三者の存在が気になって一喜一憂してしまい、やるべきことが手につかないという精神状態に陥ってしまう男性は少なくない。さらには自分の殻にこもり周囲との交流関係を遮断してしまうことがあるのは非常に勿体無いことである。

私が知る28歳を超えて活躍を見せている優秀な男性ビジネスパーソンは、社交的でありながら良くも悪くも他人の意見を聞かない。他人に興味がないと言ったら嘘になるかもしれないが、戦うべき相手は自分だと捉えている傾向がある。

世の中の空気など読まない、他人を気にしないトップセールス

各業界で活躍するトップセールスやハイパフォーマーと呼ばれる男性と対話していると、ある共通点に気がつく。優秀なビジネスパーソンは他人でもなく、社会でもなく、自分自身と戦っていることが非常に多いのだ。

例えば外資系金融機関で法人営業として勤めるAさん(28歳・男性)は、前例に囚われず、なりふり構わないアプローチでお客さんと距離をつめ、昼夜勉強を欠かさず、交流会や飲み会にも毎日のように参加する熱心ぶり。飛ぶ鳥を落とす勢いで実績を出すという噂はヘッドハンターの耳にも届きひっきりなしに声がかるが、まだまだ自分には足りないところがあると他人からの評価を真に受けることなく、決して奢らない。

また、かつて私の部下として活躍したトップセールスのBさん(27歳・女性)は年間MVPに輝くほど高い実績を残す優秀な営業ウーマン。彼女と過ごす中で一番驚いたのは、当初与えられた営業目標を達成したにも関わらず、当の本人が全く気付いていなかったことだ。他のメンバーが成果を追い抜くことがあっても、表情一つ変えないポーカーフェイスなのだ。

目標達成を告げ賞賛の声を掛けると、「ありがとうございます。だけど目指しているところ、そこじゃないんですよ。」と言いのけ、すぐに目の前のミッションへのめり込んでいく。彼女が視座高く戦う理由は、過去の自分に打ち勝つためだと後に語ってくれた。

成果を出せない原因は環境や上司のせいだけにして良いのか

環境のせいにするのは容易いことです。もちろん、生まれ育った環境に差があるので業界や職種の限界値はある。転職という手段で早々に戦う土壌を変えることで花が咲くケースもあるだろう。

前回の記事でも話した通り、20代のうちは適性が見出せずやりたいことがみつからなくとも、幾らでも挽回のチャンスは巡ってきますから28歳という年齢であればまだ間に合うだろう。

しかし、今の環境で活躍するために努力できず過去の自分と向き合ってこなかった人が、転職を機に急に優秀なビジネスパーソンに変身することはないのだ。

メモの魔力の著者、前田裕二さんが度々メディアで発言されている「境遇や取り巻く環境を言い訳にしたくなかった」という言葉から分かるように、彼の現在の活躍ぶりから見るビジネスパーソンとしての類稀な能力は、環境のせいにせず過去の自分に打ち勝ってきたことで養われた後発的なものだ。

人生の方向性が見えないこと自体に危機感を持つのは良いことだが、本来向き合うべき目の前のミッションや過去の自分に向き合うことができない方は、環境を変えたところで課題を先送りしているに過ぎないと言える。

28歳。若手とも言い難い、ミドルとも言い難い、何者にもなれるチャンスを秘めたこの年齢に、他責にせず自分と向き合って軌道修正することが30代以降のキャリアを左右するのではないだろうか。

結婚とキャリアアップは早めに見通しを立てる賢い女性が急増

そして、ここからは話を変えて女性ビジネスパーソンについて話そうと思う。28歳女性のキャリアと切っても切りなせないのは「結婚」「出産」の問題だ。

もちろん多様な価値観がありすべての女性に共通するものではないが、それでも多くの女性の心に根深く宿っていた野望は「28歳までに結婚、30歳までに子供を産む」ことではないだろうか。キャリアの相談と切っては切れない願いなのだ。しかし、残念ながらこの予測は大きく外れることも多く、なかなか計画通りにはいかない。

女性は25〜28歳を迎えるまでに周囲の結婚ラッシュを目の当たりにし、結婚する気はないと豪語していた友人が翌年にはママになっているなんてことをよく耳にする。

近年はそうした光景がSNS等を通じて近況報告として目に入ってくることもあってか、女性の結婚出産への意欲が若年層化している傾向がある。

結婚相手紹介サービスを提供する株式会社オーネットが2019年に行なった「恋愛・結婚に関する意識調査」で「あなたは何歳で結婚したいですか?」の回答として結婚したい希望年齢は「25歳」が男女とも最も割合が高く、75%は24歳~28歳で結婚したい、21歳~25歳で結婚を希望する割合が前年にくらべて10%増加したことが明らかになった。


参考:株式会社オーネット 「恋愛・結婚に関する意識調査」より

なぜこれほどまでに女性は早期に結婚とキャリアに見通しをつけようと執着するのだろうか。

「産むか、産まないか」「働くか、働かないか」女性の未来は予測不可能

女性が20代の早いうちに結婚とキャリアの見通しを立てておきたい、と思う理由は2つある。

一つは、出産だ。子どもを産むか、産まないかによって働き方やキャリアが変わる職場は未だ多い。

また、30歳を過ぎてパートナーがいなかったら。もし、ひとりで生涯を過ごすことになったとしたら。万が一、産めないことが分かったら。

そんな不安がいざ現実のものとなる可能性を考えずにはいられないのもまた、28歳という年齢である。

もう一つは、女性は偶発性の出来事にキャリアを左右されやすいことだ。

結婚、出産、旦那さんの転勤、介護。これらが生じた時、日本ではまだまだ女性側が柔軟にキャリアの変更が余儀なくされることが多いのだ。これは当事者だけでなく会社や親族の価値観も強く影響していることに加え、本人の意識の問題も全くないとは言えない。

しかし、結婚と仕事の両立は負担が大きく、さらに育児や転職という選択肢まで同時に叶えるのは至難の技と言える。無理ゲーなのだ。そこで、どうなるか分からない未来に備えて20代の若いうちにプライベートとキャリアの見通しを立てておきたい、と思うのは日本人特有の考えだと筆者は考える。

結婚出産によるマミートラックに苦しむ先輩を見て思うこと

筆者は「24歳までに結婚して27歳までに子供を産む」と信じて疑わない専業主婦の母の価値観を継承した10代を過ごした。20歳を超えるとなかなかそうもいかないのだと悟り、軌道修正をして「28歳までに結婚して30歳までに子供を産む」という目標を立てた。

しかし現実は計画通りにはいかない。日々軌道修正が必要になる先の見えないプライベートが、キャリアをどのように描けば良いか女性を迷子にさせるのだ。

育児の両立支援が十分でない場合は、ワーキングマザーは補助的な職種や分野で、時短勤務を利用しながら働くキャリアを選ばざるを得ないことが大いにある。不本意ながら出世コースから外れマミートラックに乗ってしまうことが少なくないため、子供の手が離れる40代を越える頃には同世代と圧倒的なキャリアの差がうまれてしまう。

このような先輩方の悲痛な叫びをインターネットやメディアで見てきた世代は、この現状を危惧して結婚やキャリアに対する逆算志向が高まるのは当然の原理だ。

28歳で直しておきたい他人と比較して悲観するクセ

28歳のキャリアパーソンが今すぐに止めるべきことは「他人との比較」だと筆者は考える。

SNSで垣間見える輝かしい同級生が、365日が順風満帆であるという勘違いをしている人が多いが、それは日常のほんの一瞬を切り取ったに過ぎない。

冒頭に事例として挙げた外資系金融機関で勤めるAさんもトップセールスのBさんも、1年の中で360日くらいは苦悩葛藤の連続で、泥臭い努力をしているのだ。その結果、5日程は脚光を浴びて賞賛されるほどの実績を残している、という事実から目を背けてはならない。

そして、繰り返しにはなるが彼らは他人と比較をしない。他でもない、自分と戦っているのだ。

30代以降の多くのビジネスパーソンとお会いして感じてきたことは、誰一人として同じキャリアや価値観は存在しないということ。部分的な真似はできても、ぴたりと一致する経歴や考え方持つ方は存在しないのだ。

だからこそ、自分はどうなりたいのか、どうなった状態が理想なのかは常に自問自答し、そのための行動目標や中間目標を具体化しておくことが必要ではないだろうか。加えて、他人を羨んだり悲観してスマホを眺めることに時間を消耗せずに、自分に足りないものを補うことにパワーを使っていくことが大切である。

30代、随分高いところまで辿り着いたと自信に満ち溢れた表情をみせる30代のビジネスパーソンは、自分自身と戦い日々の仕事に夢中になっているのだ。

これから28歳を迎える人、まさに28歳という年齢を迎えた人、すべてのビジネスパーソンは、自分にとっての素晴らしい景色とは何かを、一度考えてみてはどうだろうか。

文・えさきまりな

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