博報堂、デジタル時代における生活者の行動デザインモデルを開発

博報堂の専門組織・博報堂行動デザイン研究所は2019年11月21日に、“情報をプールする”生活者を捉えるデジタル時代の行動デザインモデル「PIXループ」を開発したことを発表した。

「PIXループ」概要

博報堂行動デザイン研究所は、ユーザーが“情報行動”と“消費行動”を明確に区別しておらず、『Pool(情報を引き寄せ貯めておく)』⇒『Ignite(気持ちに火が点く)』⇒『eXpand(体験をやってみて情報圏を拡げる)』という行動をループさせながら自己充足を図っていることを発見、次世代型行動デザインモデル「PIXループ™」を開発した。

この生活者主体の情報/体験行動ループの中に、いかに企業/ブランドが入り込み、消費(購買/契約)行動に結びつく施策をプロットしていけるかがこれからのマーケティングの成否を握ると考えているという。

「PIXループ™プラニングWAY」概要

同研究所ではこのモデル化に合わせて「PIXループ™プラニングWAY」も開発。「PIXループ™」を基盤に、生活者を動かす行動デザインを4つのフェーズで捉え、プラニングしていくものだ。

「PIXループ™プラニングWAY」では、生活者を動かす『行動デザイン』を「①情報デザイン」「②衝動デザイン」「③能動デザイン」「④Re情報デザイン」の4つのフェーズで捉えてプラニングしていくという。

  1. 「情報デザイン」フェーズ

  2. さまざまな「情報引き寄せプール」例と『欲求』との関係

    生活者が自身の『欲求』を満たすために個々に形成している「情報引き寄せプール」にどう入り込んでいくか、『Pool』をデザインするフェーズだ。

    まずアプローチしたい生活者群がどのような「情報引き寄せプール」を持っているかを把握、そしてそれらがどのような『欲求』のもとに形成されているものなのかを捉えるという。

    その上で、自社企業/ブランドは彼らのどんな『欲求』をくすぐり、どの「情報引き寄せプール」に入り込めるのか、可能性を拡げて検討。

    同研究所では『欲求』を大きく4象限で捉えており、SNSが定着した現代において、この右半分にあたる「自己にとどまらない、社会と関わりによって満たされる欲求(優越系欲求、同調系欲求)」を捕捉することは特に重要と考えている。

  3. 「衝動デザイン」フェーズ

  4. 生活者を行動に向かわせる『トリガー』

    情報に対する満足にとどまらず行動を起こさせるにはどのように気持ちを昂ぶらせればいいか、『Ignite』をデザインするフェーズだ。

    このフェーズでは、先の『欲求』に対してどんな『トリガー』を効かせれば行動にまで向かわせることができるかを検討する。

    同研究所では、『トリガー』も『欲求』の延長上にあると考え、欲求と同じ4象限で捉えている。また、これまでも「行動デザインのツボ」を発表してきたが、そのツボを体系化・発展化したものとなっているという。

  5. 「能動デザイン」フェーズ

  6. 企業ブランドの『リソース』とアイデアの切り口例

    発火した気持ちで起きる能動行動を自社企業/ブランドに引き寄せる受け皿、『eXpand』をデザインするフェーズだ。

    同研究所では、単に気持ちを満たす装置や回路をつくるだけでは生活者と企業/ブランドとの距離は縮まらず、企業/ブランドが求める消費行動にまでつながらないと考えている。

    絆を深めるために、企業/ブランドがもつ『リソース』に着目、それらを活用して受け皿をつくることが重要であると指摘。

    さまざまな制約も踏まえ、どの『リソース』を活かすと効率的かつ効果的なのかを考慮し、具体的なアイデアを創造していくとしている。

  7. 「Re情報デザイン」フェーズ

  8. PIXループ™が回っている情報体験消費行動例

    3つのフェーズを経て、顧客の企業/ブランド体験が再度『Pool』されていくよう設計を図るフェーズだ。

    『Pool』~『eXpand』を1度起こすだけにとどめず『rePool』までつくり込み、顧客の情報行動が2周目・3周目と回っていくよう設計することは、顧客との関係を維持し、深化・拡大させていく上で非常に重要だとしている。

    同研究所が最近の国内外のヒットマーケティング事例を数百件以上分析したところ、成功している事例は各フェーズにおいてデザインポイントを踏まえたコミュニケーションを構築・実践、『eXpand』で購買や契約等の消費行動につながる仕組みをきちんと押さえているなど、生活者の情報/体験/消費行動をうまく「PIXループ™」で回しているという実態が浮かび上がってきたという。

同じ研究所は今後も、「PIXループ™」で施策を創発するワークショップの開催等を通じて、モデルの精緻化を行い、クライアント企業の課題解決に努めていくとしている。

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