経済評論家・横川楓が語る、ミレニアル世代が知っておくべきお金のリアル

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いつの時代もお金に対する悩みは尽きないものだ。

特にミレニアル世代と呼ばれる年齢層の人たちにとっては、かつて安泰と思われていた年金制度や終身雇用制度などの崩壊により、自分たちで将来のお金やキャリアのことを考えなければいけない時代となってきた。

しかし、義務教育の中で経済について詳しく勉強する機会は少なく、お金について何から学んだらいいのか分からないという人も多いだろう。

そんな中、ミレニアル世代に向けてお金の知識を分かりやすく発信し続けているのが、経済評論家の横川楓(よこかわ・かえで)さんだ。

今回は横川さんに、これからの時代に必要となるリアルなお金の知識や考え方についてお話を伺った。

お金に関する知識が身近だった幼少期を経て、経済評論家に

──現在の活動内容について教えてください。

ミレニアル世代の人たちに対して、お金のことを知ってもらう活動をしています。
SNSでの発信、WEBや雑誌などの連載、そして直接お伝えしたりなど、さまざまです。

お金に関することは難しいから考えるのもイヤ…と思ってしまいがちですが、そういったハードルをなくしたいと考えています。

──お金に関する情報発信を始めたきっかけは?

私の実家は会計事務所なのですが、幼い頃からお金に対する知識や実務に触れやすい環境で育ちました。でも、大人になるにつれて私の周囲のみんなとは同じような環境ではないんだなと気づいて。

同世代の方たちを見ているとお金の基本的な知識について全然知らないことが多くて。でも改めて考えると、普通は知る機会が少ないですよね。

しかし、これからの日本を生きて支えていくのはミレニアル世代です。私たち世代は不景気育ちで、いろいろな将来の不安も抱えています。

そうなると、みんながお金の知識がない状態というのはとても良くないことだと思い、だったら私が率先していろんな人に知識が身につくようにしたいと思って、今の活動を始めました。

また、すでにあるお金の常識や金銭感覚が私たち世代とかけ離れているものも多くリアルに感じられる情報があまりなかったんですよね。

投資の本であればお金があること前提、節約の本だと主婦の方向けと、偏った内容のものが多いと感じることも多く、国税庁や金融庁のWEBサイトは小難しくて、分かりづらかったりします。

それを等身大の言葉に落とし込んで発信することに、意味があるんじゃないかなって考え始めたんです。

──今、ミレニアル世代のお金に対する考え方には、どんな傾向があると感じていますか。

年金や増税の問題があり、いよいよ本当にやばいんじゃない?って思い始めた人が増えているように感じます。

以前よりもどうにかしたい、という危機感が高まっているミレニアル世代の人が増えているのではないでしょうか。

年金がもらえないかもしれない、もらえるかもしれないけど今より金額が下がる。給料も上がらないから貯金もできない、副業も会社に禁止されている、など八方塞がり感を感じている人が多いような気がします。

──八方塞がりですよね。そんなミレニアル世代に、具体的にどのような情報を発信しているのでしょうか。

取り急ぎは証券口座を作って、100円から積み立てを始めてみようってことですかね。投資のハードルって下がってきているんですよ。あとは、貯金の習慣づけ。

お釣り貯金アプリを使って、小さな金額から始めてみようということ。月3万円貯金!と言われるとハードルが高いけど、月1000円でもいいよって言われると気軽に始められます。

“お金を貯める”“収入を増やす”横川楓が考えるお金の大事なコト

──ズバリ、お金を貯めるには?

貯めるには、自分のお金の流れを定期的に振り返ることが重要です。お金ってコンビニで下ろせちゃうし、インターネット上でもすぐに移せちゃう。無意識的に、気軽に引き出さないように注意するのが大事ですね。

あとは、“ながら貯金”というか、何かのついでに貯金をする習慣をつけるのがいいと思います。

例えば、お釣り貯金アプリでものを買ったときに貯金するとか。貯金ってめんどくさいな、続かないなって人が多いと思うから、アプリでシステム化して、勝手に貯まってるくらいがいいんです。

とは言っても、貯めているだけでは増えないので、投資もした方がいいと私は思います。ただ、証券口座と普通口座って自由度が違うので、貯金もある程度は必要。まずは貯めて、それから投資を始めてください。

──では、収入を増やすためには?

一つの仕事だけで収入を増やすには、やはり転職ということになってきますね。

だからこそ、今の職場環境で適正にお金がもらえているのか把握することが大切です。残業代がしっかりもらえているのか、手当を申請しているのか等、確認するのを忘れてしまいがちですが見直してみるのも手です。

副業が許されているなら方法はいくらでもありますが、ダメなら転職が選択肢に上がってくると思います。

あとは生活コストを下げることも効果的です。

直近で収入を上げることが難しくても生活コストが下がれば、手元に残るお金が増えます。
別にボロボロのアパートに住んで、という訳ではなく、サブスクリプションサービスを利用したり、生活不用品を売ったり、生活費を抑えるということです。

使えるサービスを効率よく使って、手元に残すお金を増やすのが大事ですね。

──横川さんご自身はお金を貯めるために、どのようなことをしていますか?

色々やっていますね。
私は趣味や人付き合いを大切にしているので、自分の楽しみを削るような節約は嫌だし、ある程度そこにお金を使ったほうがいいと思っています。

だからこそ、お釣り貯金でお金を使ったついでに貯めたりしています。

結局自分のお金を使ってはいますが、使うと同時に貯められるというのがいいですよね。服を買ったら貯金、趣味にお金を使ったら貯金。金額も自分で細かく設定できるので挑戦しやすのではないでしょうか。

家計簿もマネーフォワードMEというアプリでつけています。あれもこれもと確認すると大変なので、銀行口座やクレジットカードを全部連携し、お金の流れを1箇所に集約させています。そうすることで自分のお金全体の流れが見えてきます。

──逆に、今までうまくいかなかった貯金方法はありますか?

月にいくら貯金すると決めること。
月によって貯めたい金額が違うので、私には向いてないなと思いました。個人事業主の方だと毎月の収入が変動しますからね。会社員の方だったら固定の金額を振替で貯金するのもいいのかもしれません。

いずれにせよ、続けることが大事なので、無理のない金額設定にすることが大切です。

──“浪費”についてどう思いますか?

他人から見たら浪費に見えるような買い物でも、本人が満足していたらいいんじゃないでしょうか? 

趣味にお金を割く、好きなモノを買うことは浪費だとは思いません。そういったことを過度に我慢しすぎてしまうと、生きる楽しみもなくなってしまうかと思うので。それよりも、ケータイの料金プランを見直してないとか、使っていないサブスクにたくさん入っているとか、いらないものを買いすぎているとか、そういうムダを見直す方がいいと思います。

例えば、ただ税金を払うだけだと何も得られませんが、ふるさと納税の場合だと実質負担金はありますが、住民税も安くなりおいしい食べ物や特産品を貰えますよね。、使おうと思えばムダが省ける制度もたくさんあるんです。

消費税増税を、改めてお金について考えるきっかけに

──10月から消費税の増税がありましたね。

正直、今から増税に反対しても、明日から消費税率が下がるということはありません。であれば、増税に対してどのように自分が対策をするべきかと考えることの方が大事ですね。

キャッシュレスポイント還元制度が始まって、うまくキャッシュレスを活用したり、アプリなどのサービスをちゃんと利用するように考え直すきっかけになったのではないかと。

そもそも消費税増税した2%の金額、1万円の買い物だったら200円ですよね、この200円を今までどれだけ大切にしていましたか? そこまで真剣に増税分の差額を大切にしていた方は少ないんじゃないでしょうか。

それを考えると、キャッシュレスサービスや今まであまり考えてこなかった数百円、数十円の価値を見つめ直すいい機会になったのかなと思います。

──増税によってPayPayなどのアプリやサービスが浸透してきていますが、キャッシュレスについてはどうお考えですか?

私はキャッシュレスに賛成派です。

ポイントが貯まる分お得ですし、今回の還元制度をうまく活用してたくさんポイントも貯めたいですし、キャッシュレスサービスがよくやっているキャンペーンも当ればラッキーと思うタイプです。

お金を使っている感覚がないから……と嫌厭する人もいるようですが、そういう人はチャージして使うものにしたらいいと思います。

例えば5万円チャージして、この日まではこれで過ごすと決めれば、使う金額を管理できますよね。結局お財布に現金が入っているのと一緒なので、ポイントなどのサービスが受けられる分、現金よりいいのかなって。

──将来のお金に対する漠然とした不安は、特にミレニアル世代は誰しも持っているのではと思います。横川さんはどう思っていますか?

本当に先のことなんて、誰も分からないですからね。
とは言いつつ、今の年金制度も人口が減らないことを前提に作られた制度です。今後人口が、爆発的に増えることはないと思うので、今私たちが抱えている将来への不安は間違ってはいないでしょうね。

ただし、その分新しい民間企業のサービスや、政府が作っている制度や仕組みも増えていますから、それをいかにうまく利用できるかが大事になってきます。

昔は投資をするにも窓口に行かなきゃいけなかったし、情報を得るにもインターネットはなくて本、ファイナンシャルプランナーに相談に行くにも、何かとコストがかかっていました。今はインターネットで調べればいくらでも情報が手に入りますから、ずっと便利になってきていますよね。そういった意味では今の方が恵まれているのかな、と思います。

──横川さんは具体的にどういったところから情報収拾をしていますか?

私は仕事柄、経済やお金に関する新刊をたくさん読んでいます。しかし、それは普通の人にしたら面倒だと思うのでオススメしません。

簡単に情報を得やすいのは、ニュースサイトを読むことじゃないでしょうか。経済の欄に目を通すだけでもなんとなく現状を把握できるはずです。

また、お金の制度はどんどん移り変わるものなので、国や公的な機関から情報を得ることも大切です。日本銀行内の金融広報中央委員会が運営している「知るぽると」というWEBサイトなどは便利かと思います。

官公庁の情報に基づいているので信頼できますし、お金に関する基本的な知識が網羅されているので、広く知ることができます。お金についての知識が必要になった時に、辞書のように活用してみてください。

横川楓が考えるミレニアル世代が行動すべきお金へのアクション

──ミレニアル世代が知っておくべきお金の知識とは何でしょう?

お金のことって誰も教えてくれないので、自分で情報を取りに行かないといけない、ということを一番知ってほしいです。

会社員でも給与明細って見ない人が多いんじゃないでしょうか。月に何がどれだけ引かれているのか、知ることから初めてみてください。自分が病気になった時にどんな制度があるのか、100円からでも投資ができる、そういうことって誰も教えてくれないので、自分から情報を取りに行って欲しいです。

実際、年金がいくらもらえるのか分からないのも、これから本当にどれだけ貯蓄が必要なのか未知数で不安になる要因ですよね。ひとまず日本年金機構の「ねんきんネット」に登録して、現状いくら自分は年金をもらえるのかだけでも、一度は確認してほしいところです。

私は貯められるだけ貯める、増やせるだけ増やす、と思いながらやっています。病気になるかもしれないし、突然高価なものが欲しくなるかもしれません。

確定拠出年金や、積立NISA、などお金を増やす・将来に備えるためにできることはたくさんあるはずです。きっと何か1つ始めたら、色々興味が出てくるはずですから。将来が不安だと悲観しすぎず、ポジティブに色々やってみたらいいと思います。

──今後の目標は?

ミレニアル世代の、お金に対するリテラシーを上げていきたいです。そのためにもお金に関する授業が小中高や学校などの教育機関で必修になったらいいなと思っています。

みんなが平等に知識を持てる制度、仕組みになってほしいですし、お金の知識をもっと深く得られるような機会を増やしていきたいですね。

文:永瀬夏海
取材・編集:花岡郁
写真:西村克也

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