様々な大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。今回は、古き良き商店街と最新カルチャーが混在する大人の街、麻布十番。
ビルの4階に隠れ家的に佇むバー「NUMBAR」で店長を務める難波小太郎さんは、学生時代から飲食業の魅力に取りつかれ、現在は人気のバーで活躍されています。人との繋がりが現在を導いてくれたという難波さんの大切にしていることについてお伺いしました。
アルバイトを掛け持ちしていたフリーター時代
——今どんなお仕事をされていますか?
難:麻布十番にある「NUMBAR」というバーで店長兼バーテンダーをしています。
——いつから飲食業に携わられているんですか?
難:高校時代は無気力で、自堕落な生活を送っていたんです。ただ高2の時に友人に借りたバイクで事故を起こしてしまって…。弁償のために吉野家でアルバイトを始めたのが飲食業に入ったきっかけです。
——最初は高校生時代のアルバイトからなんですね。
難:はい。吉野家でアルバイトしていた時、年上スタッフの方々がすごく真面目に働かれている方々ばかりで、僕もその雰囲気に引っ張られて改心したというか(笑)
学校よりも仕事が楽しくなっちゃって、バイトばっかりしていましたね。
——アルバイトに明け暮れた学生時代ってことですね。
難:はい。バイト先で恋をしたのもアルバイトに燃える理由になりました(笑)
——そうだったんですね(笑)その頃、将来の仕事についてはどう考えられていましたか?
難:正直、将来について考えることはあまりなかったですね。
飲食の、特に酒場でのアルバイト経験が長かったので、なんとなく「飲み屋をやりたいなー」くらいの意識はありましたけど…。
——一度、飲食業界から離れられているんですよね。
難:そうなんです。その当時、夜の仕事でちょっとしたトラブルが重なり疲れてしまったので、一旦昼間に働く普通の会社に就職をしたんです。
——飲食業以外の世界に足を踏み入れられたんですね。
難:はい、でも一旦就職をしたものの、1年も経つと飲食の世界が恋しくなり始めました。
毎日を楽しんで過ごしてはいたんですけど、「何か物足りないな」という気持ちがずっとあって。「何か面白いことはないか」「チャンスが降ってこないか」と考えていましたね。
——そのタイミングで今のお店で働かれるきっかけがあったんですよね。
難:「知人がバーを始めたがっているから、やらない?」とお誘いを受け、二つ返事で「やります!」と。それからすぐに今のお店の開店準備に取り掛かりました。24歳の時ですね。
常に抱えていた将来への不安、接客業を天職と思える理由
——今のお仕事に就かれる前、悩んでいたり不安に思っていたりすることってありますか?
難:その日暮らしでダラダラしてしまう性格なので、気がつくと無駄な時間を過ごしてしまうというか…。たまに振り返っては無気力な自分に苛立ち、将来への不安も常に感じていました。
でも、いわゆる受験や就職活動をしたことがないので、将来のビジョンとかキャリアプランといったことには意識が向かなかったんですよね。
——漠然とした不安は常に抱えられていたということですか?
難:そうですね。何か具体的な悩みや不安がある、というよりも、何に悩んでいるかもよくわからないようなふわっとした状態だったと思います。
今の仕事に出逢ってから、そういった漠然とした不安や悩みは無くなりました。
——今のお仕事を一生の仕事にしようと思われたのはなぜですか?
難:とにかく接客が楽しいんですよ。特にカウンターでのお客様との会話が常に刺激的で毎日楽しいなと思いながら仕事しています。
——ご自身の中に元々接客業に向いているものがあったと思いますか?
難:はい。以前働いていた焼き鳥屋でお客さんのおじさんに説教されるのも、昼間勤めていたホビーショップでラジコンについて語り合うのも、アルバイトしていたバーで気取った会話をするのも、全部楽しくって。
人と話すこと、人を観察することが好きなんだと思います。
——その他にバーテンダーが天職だなと思われる瞬間ってありますか?
難:手を動かしたりモノを作ったりするのも好きなんですよね。
今のお店では12年間、毎日氷を割っているんですが全く飽きないです。
カクテルを作っていてバースプーンを回す作業も、「いつまでも回していたい」と思うくらい楽しいんですよ(笑)
つくづくこの仕事に出会えてよかったな、向いているんだなと感じます。
人との繋がりで得た多くの出会いを大切に、自身の感性を育て続ける
——難波さんが、“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?
難:簡単に言ってしまうかもしれませんが、“好きなことをする”ことでしょうか。
好きなだけでは仕事にならないかもしれませんが、好きな要素がないと仕事ってやっぱり続かないかなと思います。
——他には何かありますか?
難:あと“新しいことをする”ことです。
バーテンダーの仕事で言うと、季節のカクテルを考えたり、他のお店に行った時は飲んだことのないお酒を飲んでみたり。
また、お客様が新しく常連さんになってくれて輪が広がったりすると、とてもやりがいを感じますし、日々の仕事にも常に新鮮味を持ち続けることができますね。
——毎日を楽しく過ごすために心がけていることはありますか?
難:人とのつながりを大事にすること、ですね。
バーなので酔った方と会話をする機会も多いのですが、そういう時ってその人の本当の顔が見えたりするので、酔っ払いだからと適当にあしらわず(笑)、ちゃんと向き合って会話をしていると新しい側面が見えてくるんですよね。
——難波さんにとって、“はたらく”とはどういうものでしょうか?
難:コミュニケーションを取るものですね。
バーテンダーという仕事柄、特にそう感じるのですが、どんな仕事も人とのつながりが大事なのかなと思います。そこに楽しみもあるし、嫌なこともある。
そうやって自分の感情を揺さぶられて感性が育っていくのが働く理由であり、働くことの楽しい部分かなと思います。
——難波さんも人との繋がりで今のお仕事に就かれているんですよね。
難:吉野家で焼き鳥屋にスカウトされ、焼き鳥屋でバーにスカウトされ、そこでの出会いから今の仕事に就いているんですよね。
人に導いてもらい、始めた仕事が、気づけば楽しく、やりがいを感じて一生の仕事として続けています。
正直、自らが能動的に動いて見つけたわけではないので、運が良かっただけかもしれません。良い出会いに恵まれたことに感謝をしています。
——“はたらく”を楽しもうとしている方へのメッセージをお願いします。
難:まずは目の前のことに向き合い、一生懸命にやってみてください。
きっと誰かがそれを見ています。
その努力の中でやりたいことや向いていることが見つかるのではないでしょうか。
仕事は「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」のバランスだと思います。
それぞれに、それぞれの楽しい仕事が見つかることを願います。
- 難波 小太郎さん(なんば こたろう)
- 「NUMBAR」店長及びバーテンダー
高校生時代から飲食業でのアルバイトに従事し接客業の魅力に惹かれる。フリーターとしてアルバイトを掛け持ちしていた頃スカウトを受け、24歳の時から麻布十番「NUMBAR」の店長及びバーテンダーとして活動している。
転載元:CAMP
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