「ギフトコンシェルジュ」という新たな立ち位置。PitaPreが目指すギフトのあり方とは

お世話になった職場の上司や退職する先輩、学生時代からの友人の誕生日や結婚など、何かを「贈る」機会が増えたが、何を贈ろうかいつも悩むという人はいないだろうか。

相手の年齢や関係性から「おすすめギフトランキング」などを参考に選んではみるものの、どうしても無難なものを選んでしまったり、毎年プレゼントしあうような間柄ではアイデアが尽きたりと、プレゼント選びが憂うつになってしまうことも少なくない。

トランスコスモスが2019年8月にリリースしたアプリ「PitaPre(ピタプレ)」はユーザー間でアイデアを出し合って、より贈る相手に寄り添ったギフト選びを可能にするギフトコンシェルジュサービスだ。

Web上で贈り合えるeギフトなど、ギフト市場にはさまざまなサービスが展開されているが、なぜ「コンシェルジュ」というポジションをとるのか? また、「PitaPre」はギフトにどのような価値を与えるのか? サービス責任者の武藤綾佳氏に話を伺った。

PitaPreが提供する「ギフトコンシェルジュ」とは

──サービスの内容について教えてください。

武藤:PitaPreはギフトコンシェルジュサービスです。誰かにプレゼントをしたいと考えているユーザーがアプリ上で相談をして、他のユーザーが「コンシェルジュ」としておすすめのアイテムを提案するサービスです。そこから一番いいなと思ったものを選び、コンシェルジュへ「これにします!」と伝えることも可能です。

──ユーザーはお互いに相談者でもあり、コンシェルジュでもあるわけですね。

武藤:そうです。例えば、私の場合は5歳の子どもがいて、義理の両親にプレゼントを贈ることもあるので、「パートナーの両親へのプレゼント」や「5歳くらいの子どもへのプレゼント」は得意分野。

でも、「中学生の女の子」や「大学生の彼氏」へのプレゼントとなると、どんなものがいいのかわかりません。そこをユーザー同士で助け合えれば、贈る相手にもっと喜ばれるギフトになりますよね。

──サービスを利用する上でどのような特徴があるのでしょうか。

武藤:より細かく「贈られる相手」の情報を伝えられるようになっています。例えば年齢や性別、シーン(誕生日や結婚、就職など)、コスメやグルメなどのカテゴリー、それから予算を条件として設定でき、さらに自由記述欄を設けています。

この「自由記述」がポイントで、相手がどんな人なのか、どれくらいの関係の深さなのか、何が好きなのか……などを記入しておくと、相談を見た人が人物像をよりイメージしやすくなり、ピッタリのプレゼントを提案できます。

プレゼント選びに悩んだ日々。武藤氏が感じた「ギフト」の課題とは

──武藤さんは「ギフト」に対してどんな課題を抱いていたのでしょうか。

武藤:私自身が、夫の両親や子どものお友達へのプレゼント選びに悩んでいたことが始まりです。関係性のある人は増えたけれど、何をあげれば喜んでもらえるのかがわからなくて。

ネットで検索したりお店に見に行ったりしていましたが、「やっぱり違うかも……」と何も収穫がないことも多くて、移動中もスマホで検索したりして……。いつもプレゼントに悩んでいることに気がついたんです。

実際に、仕事や育児をするなかでギフト選びに出かけるのって、本当はすごく手間がかかることなんですよね。そこで何も見つけられないと、貴重な時間をムダにしてしまいます。

そんな中、希望や条件を伝えれば「これがいいんじゃない?」と返してもらえるようなサービスがあったらいいなとひらめきました。

──例えば、家族や友達に相談するという方法もありそうですが。

武藤:そうなんです。でも結局、夫のお母さんに毎年贈り物をしていると「あげ尽くしてしまった」という状態になり、みんなが「何をあげよう」って(笑)。

そこで、もしかしてこの悩みは私だけでなくみんなが抱えているもので、ニーズがあるのでは? と考えるようになり、社内で行われるコンペに参加をし、サービスローンチにまで至りました。

「競争」ではなく「協業」。PitaPreが目指すギフトサービスとしての形

──競合として意識したサービスなどはありましたか?

武藤:どちらかというと「競合」ではなく「協業」をイメージしているんです。

他のサービスではギフトを直接販売しているところもありますよね。PitaPreは純粋に提案だけのサービスなので、例えば「giftee(ギフティ―)」のソーシャルギフトや「SOW EXPERIENCE」の体験ギフトが提案されることもあります。そうやって、ギフト市場を一緒に盛り上げていきたいなと思っているんです。

──サービスを展開する上で大事にしているポイントはどんなところでしょうか。

武藤:プレゼントって、もらう人はもちろん、あげる人も嬉しいし、その幸せなやりとりに力を貸したコンシェルジュも幸せを感じられるものであってほしくて。

このアプリを見ているときには相手のことを思って、ハッピーな気持ちでいてほしいという気持ちが常にあり、コンセプトとして掲げています。 またプレゼントがユーザーにもたらす「幸福感」を表現するUX設計も心がけています。

──先ほどのお話にもあった「協業」に向けて今後取り組んでいきたいことはありますか?

武藤:新規ユーザーの取り込みと、既存ユーザーに向けての施策とで二つあります。新規に向けては、まだリリースから間もないのでまずは認知度の向上と、アプリを使っていただくというところになりますが、PitaPreは現状アプリでしか利用できないので、情報が伝わりにくいんです。

例えばすごくいい相談やそれに対する提案があってもアプリ上でしかそれを見られないため、外部に向けて共有ができていませんでした。

そこでSNSとブログを始め、「こんな相談と提案がありました」という紹介記事をアップしたり、サービスを利用した人へインタビューをしたりと、露出を増やしています。

既存のユーザーに向けて「こんな風に相談すればいいのか」と相談ハードルを下げる役割もありますね。

──既存のユーザーに向けてはどのような課題がありますか?

武藤:相談ハードルを下げるのもひとつですし、提案してくれるコンシェルジュに対してのインセンティブのようなものを考えています。現状は、提案が選ばれると「コンシェルジュレベル」が上がっていくという仕組みで。

──やりこみゲームのような感じで、楽しそうですね。

武藤:そうなんです。PitaPreのコンシェルジュは、金銭的な見返りではなく純粋に「役に立ちたい」という善意がモチベーションになっている人がほとんどで。この雰囲気の良さは残していきたいですね。

PitaPreでコンシェルジュとして提案をするのは、相談の内容を読み込んだり、商品の写真やURLを用意したりと、意外と労力のいることだと思うんです。

それに対して少しでもユーザーへ還元していきたいと思っているのでPitaPreを支えてくださるコンシェルジュの方にお返しできるような仕組みをつくっていきたいですね。

「贈り物に関わる全ての人を幸せに」 PitaPreが生み出す新たな文化

──PitaPreで、ギフト文化にどんな価値を吹き込んでいきたいですか?

武藤:ギフトは「プレゼントをあげる人」、「もらう人」、それから「アイデアを提供したりモノを売ったりする人」の三角形で成り立っているものだと思っていて。そこにミスマッチがあると、喜ばれるギフト選びはできません。

返品が珍しくないと言われるアメリカでは、クリスマスシーズンには約10兆円分もの返品があるそうです。せっかく心を込めて選んだものなのに、喜んでもらえないのはもったいない。

だから、きちんと「あげる人」「もらう人」が幸せになれて、そのアイデアを提供した人も幸せのおすそ分けをしてもらえる。この関係を市場に提供していきたいです。

また、PitaPreはアプリ上での直接販売を導入していません。純粋にユーザーの善意で成り立っているので、「コレを売りたい」というような気持ちを介入させることなく、プレゼントの提案ができます。それから、「モノ以外」を提案することもできますよね。

──モノ以外の贈り物ですか?

例えば彼女へのプロポーズなら、場所やシチュエーションの提案もできます。しばらく帰省していない実家のお母さんになら、「実家に顔を出してみては」と提案することもできるし、「手紙がいいと思う」というようなアドバイスもできます。

その人が一番喜んでくれる提案ができるのが大きな強みですね。

それから、今までなら「何がいいかわからないし……」とスルーしてしまっていた同僚や部下への贈り物も気軽にできるようになるはずです。

例えば「giftee」のソーシャルギフトを社内でのインセンティブや福利厚生に使っているところもあります。そういう「ちょっとした贈り物」だけで、人間関係ってよくなると思いませんか?

──確かに。単純ですけど、何かもらえると嬉しいですよね(笑)。

武藤:そうなんです(笑)。プレゼントがもたらしてくれるのはそういう幸福感。その気持ちを大切にしながら、プレゼントを通じて皆さんが幸せになれるようなサービスを提供していきたいですね。

取材・文:藤堂真衣
写真:國見泰洋

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