中国・人工知能搭載の地下スキャンロボット、道路陥没など地下問題対策で始動

2016年11月、福岡県博多で発生した大規模な道路陥没事故。整備された大都市でもこのような事故が起こる可能性を多くの人々に知らしめた出来事といえるだろう。

国土交通省によると、日本では下水道管路に起因する道路陥没が年間4,000〜5,000件ほど発生しているという。

道路陥没は日本だけの問題ではない。世界各国で道路陥没の問題は深刻化している。

米フロリダは、道路陥没が起こりやすい地域といわれている。CNNによると2006〜2010年まで、フロリダだけで道路陥没に関わる保険金請求が2万4,671件あり、その請求額は14億ドル(約1,500億円)に上ったという。フロリダの場合、石灰質の地層になっており、それが酸性雨によって溶け出し、前触れもなく突然陥没するという。

一方、北京デイリーによると中国では2018年7〜10月の間に、地下パイプラインの事故が160件発生し、それにともなう道路陥没事故が60件発生している。パイプの老朽化/メンテナンス不足による破損などが事故の主な要因になっている。


ニューヨークでの道路陥没事故(2015年8月)

先端テクノロジーとの融合で進化する地下スキャンレーダー

陥没事故を防ぐには、地下で起こっていることをいち早く検知し、対処することが求められるが、地下の状態を調べるのは容易なことではない。

この問題を先端テクノロジーを活用し解決しようという試みが中国で開始されるようだ。

中国国有企業、中国航天科工集団傘下の研究所が2018年末に、人工知能を活用した地下スキャンロボット「Eagle Eye-A」を発表。地下の石油・ガス・水道管の3次元スキャンや陥没の前兆を検知できる能力を持つロボットだ。搭載された人工知能が自動でパイプラインの破損など地下の異常事態を検知、その状況を解釈し、人間のスタッフが一目で分析結果が分かるようにレポートを作成するという。これにより既存の地下分析方法に比べ80%も時間を短縮できるようになる。バイプラインの分析精度は90%に上るという。また、土壌汚染の状況も検知できるようだ。


「Eagle Eye-A」(中国・国務院国有資産監督管理委員会ウェブサイトより)

さらに、GPSに加え中国独自で開発を進めている北斗衛星測位システムを採用しており、地下のポジショニングを非常に高い精度で行うことが可能になるという。

このような地下スキャンデバイスは「Ground Pnetrating Radar(GPR)」と呼ばれており、Eagle Eye-Aのように世界各国で先端テクノロジーを取り入れながら進化を遂げている。

米ベルモント大学とテネシー大学の研究者らが共同開発する「Cognitive GPR」は次世代GPRの1つといえるだろう。

Cognitive GPRは、AR(拡張現実)ゴーグルと連動し、地下の様子をリアルタイムに見ることが可能となる技術。完成すれば、ビデオゲーム感覚で簡単に地下の様子が分かるようになり、検査や掘削時間を大幅に短縮できるという。


「Cognitive GPR」(YouTube ベルモント大学チェンネルより)

ニッチながらGPR市場は今後も伸びていくことが予想されている。WiseGuyReportsによると、グローバルGPR市場は2014年の1億500万ドル(約110億円)から2017年に1億3,500万ドル(約150億円)に拡大。9%近い成長率を維持し、2022年には1億6,600万ドル(約180億円)に達する見込みだ。

文:細谷元(Livit

モバイルバージョンを終了