かつて年間1,000万台以上の自動車を生産し、世界最大の自動車大国と呼ばれた日本。

国際自動車工業連合会(OICA)のデータによると、1970年日本の自動車生産量は約530万台で、830万台を生産した米国に次いで世界2位だった。日本の自動車生産はここから加速し、1980年には1,100万台に到達、同年800万台の米国を抜き世界1位となった。1990年には1,348万台に達している。

しかし、これをピークとして日本の自動車生産量は900万〜1,000万台に落ち着くことなる。米国も1,000万〜1,200万台で推移している。

自動車大国と呼ばれた日本と米国の生産量が横ばいになるなか、驚異的な伸びを見せる国が登場した。それが中国だ。

日本が生産量のピークをつけた1990年、中国の生産量は50万台しかなかった。しかし1995年に140万台、2000年に200万台、2005年に570万台と着実な増加を見せ、2010年には1,840万台と日本の2倍ほどの生産量を達成し、自動車生産量世界1位に躍り出ることになる。

さらにここからも生産量は伸び続け、2013年には2,200万台、2016年には2,800万台、そして2017年には2,900万台に達している。同年生産量2位の米国は1,100万台、3位の日本は969万台、4位のドイツは560万台。

生産量だけでなく販売台数でも中国は世界最大だ。OICAの暫定データによると、2017年中国における乗用車の販売台数は2,496万台だった。2位の米国は約600万台、3位の日本は約440万台。

中国での2010年の販売台数1,375万台だったので、7年で2倍ほどの規模に拡大したことになる。また中国政府は2017年4月、市場の一層の拡大を狙い2025年までに国内の年間販売台数目標を3,500万台にすることを明らかにした。

一方、この発表では3,500万台のうち電気自動車の割合を20%に引き上げる計画も明らかにされ、電気自動車に関わる企業や投資家の注目を集めることになった。

中国は環境配慮型社会の実現と世界の電気自動車市場攻略に向け、優遇政策を導入。企業の開発・生産促進と消費者の電気自動車購入を後押ししている。その結果、中国はすでに電気自動車でも世界最大の市場になったといわれている。

中国のEVシフトを担う新サービス

電気自動車専門の配車サービスCaocao Zhuancheや電気自動車のみのレンタカーサービスEvCardの登場に中国・電気自動車市場の盛り上がりを見ることができるだろう。

Caocao Zhuancheは、中国の自動車メーカーGeelyが2015年にローンチした配車サービスだ。配車される自動車はすべてGeelyの電気自動車。現在渦中にある中国配車大手Didi Chuxinや同社に買収されたUberとの直接的な競合を避け、高級路線でサービスを展開している。

Caocaoウェブサイト

Caocaoのドライバーは、犯罪歴がないことはもちろんのこと、最低3年の運転経験を有し、さらにCaocaoドライバースクールで研修を受けることが求められる。ドライバーの研修には、タクシー免許試験で世界一難しいとされる英国ロンドンの試験と同等の厳しい評価基準が用いられるという。

現在、杭州、成都、青島、南京、天津など25都市でサービスを展開。導入されているGeelyの電気自動車は1万6,000台に上る。1日あたりの利用回数は15万回を超えるという。

2018年1月にはシリーズAラウンドで10億元(約160億円)を調達。2018年8月にはロイター通信が関係者の話として、新たな資金調達ラウンドで30億元(約490億円)を調達する計画があると報じている。

一方、EvCardは中国3大自動車メーカーの1つ上海汽車集団(SAIC Motor Corp)が手がける電気自動車レンタルサービスだ。専用ステーションに駐車されている電気自動車をアプリで予約し、レンタルする仕組みになっている。


EvCardウェブサイト

2015年に上海でローンチされ、2017年10月には中国32都市にサービスを拡大。レンタル可能な電気自動車の数は1万7,000台、登録ユーザー数は130万人だった。

同社ウェブサイトによると2018年8月時点では62都市に拡大。ユーザー数は275万人、電気自動車数は2万7,000台と1年ほどで事業規模は2倍に拡大している。また2020年までに200都市で30万台を展開する計画だ。ロイター通信によると、EvCardも20億元の資金調達を計画しているという。

マッキンゼーが最新の電気自動車レポートで指摘するように、中国の電気自動車の普及は絶対数で見ると驚異的な伸びであるが、普及は大都市に限られており普及率は他国に比べ大きいものとはいえない。裏を返せば、まだまだ伸びる余地があるということになる。今後どこまで拡大していくのか、中国・電気自動車市場の動向から目が離せない。

文:細谷元(Livit