タクシー配車のDiDiが「半額」キャンペーン、PayPayの勢いに乗れるか

9月25日、国内でのサービス開始から1周年を迎えたタクシー配車アプリ「DiDi」が、同じソフトバンク系列のスマホ決済サービス「PayPay」と組み、タクシー料金が「半額」になるキャンペーンを打ち出した。


DiDiとPayPayが「半額」キャンペーンを開始

本拠地の中国ではライドシェアとしても知られるDiDiだが、日本ではタクシー配車に特化しながら全国展開を進めている。スマホ決済で先頭を走るPayPayとの連携を深め、その勢いを最大限に活かしていく構えだ。

当初の予定を前倒しで全国展開へ

9月27日に国内でサービス開始1周年を迎えたDiDiは、スマホアプリでタクシーを呼べる配車アプリとして大阪でサービスを開始後、全国12都市に展開してきた。


DiDiに対応したタクシー。全国12都市に展開する

関西から始まったこともあり、利用シェアは大阪、神戸、福岡、広島の4都市でNo.1としている。DiDiと契約したタクシー事業者は310社と1年で17倍、登録ドライバー数は2万人と、1年で急拡大したことをアピールした。


利用シェアは4都市でNo.1に

DiDiと契約したタクシーには専用タブレットが搭載されている。そこには乗客があらかじめ指定した目的地まで地図上に道順が表示されており、この道順に従わない場合、ドライバーは乗客に確認を取る必要がある仕組みだ。

だが、これまで使っていたグーグルによるナビでは、タクシーの通行が困難な道を案内されるなど不満の声が上がっていた。そこで地図情報会社のゼンリンと提携し、新たなナビを搭載した。ゼンリンは国内の道路事情に精通しており、たとえば乗客を拾いやすいように道路の左側に到着するルートを案内できるという。


ゼンリンと提携した新たなカーナビを発表

全国展開も加速する。当初の目標を上方修正し、2019年内に20都市に展開することを宣言した。今後の展開都市はまだ完全に決まっていないようだが、「都市が決まれば、1ヶ月くらいで始められる」(DiDiモビリティジャパン 取締役副社長の菅野圭吾氏)というスピード感だ。

ところで、日本でDiDiは「ライドシェア」を導入しないのだろうか。ソフトバンクグループは世界のライドシェア企業に投資している。孫正義社長はライドシェアの可能性を高く評価し、国内タクシー業界の保護政策を批判したこともあるほどだ。だが、DiDiの日本法人はライドシェアを導入する予定はまったくないという。

世界的にライドシェアはタクシー業界と対立している。もし日本のDiDiが将来的にライドシェア導入を目指すとなれば、国内タクシー会社との提携はそう簡単には進まないはずだ。グループとしての方針はさておき、まずは中国DiDiのノウハウを活かして国内タクシー配車でNo.1を取りに行くのは正しい選択といえそうだ。

PayPayとの半額キャンペーンを開始

国内で勢いに乗るDiDiが、次に繰り出すのがスマホ決済「PayPay」と組んだキャンペーンだ。すでにDiDiはタクシーの料金の決済としてPayPayに対応しているが、新たに「半額」キャンペーンを発表した。


タクシー料金が半額になるキャンペーンを発表

10月末までの約1ヶ月間に渡り、1日1回2000円までを上限にタクシー料金を割り引くとしている。アプリにクーポンを入力し、タクシー車内では通常料金で決済する。還元の原資はDiDi側で負担し、タクシー会社やドライバーに負担はないという。

PayPayはDiDiと同じソフトバンク系列であるというだけでなく、スマホ決済でトップを独走している状態だ。ユーザー数は1000万人を突破し、iPhoneのアプリストアでは無料アプリの総合ランキングで1位を維持するなど、快進撃を続けている。

キャンペーンだけではなく、PayPayとの本質的な連携強化にも注目したい。DiDiは、PayPayのアプリ内から別サービス呼び出せる「ミニアプリ」化の第1弾になるというのだ。


PayPayアプリからDiDIのサービスを呼び出せる「ミニアプリ」に

ミニアプリは、PayPayアプリ内に別サービスの機能を搭載し、呼び出せるようにする仕組みだ。中国ではWeChat Payが「ミニプログラム」を大きく成功させており、国内のスマホ決済事業者も続々と採用を発表している。同様にPayPayは、ミニアプリを大量に搭載した「スーパーアプリ」を目指すという。


多数のミニアプリを搭載した「スーパーアプリ」を目指す

国内のスマホ決済では「PayPay」と「その他大勢」に分けられるほどPayPayは勢いに乗っており、他の事業者はお互いに連携を深めるなどPayPay包囲網を築きつつある。その中でDiDiのようにPayPayの勢いを最大限に活かそうという動きは、今後ますます加速することになりそうだ。

取材・文:山口健太

モバイルバージョンを終了