2019年9月26日、GLM(グローバル・リンク・マネジメント)が”東京都への人口流入”について分析結果を公表した。
投資用不動産を扱うGLMでは、「グローバル都市不動産研究所」を設立。調査・研究の第二弾として、東京都への人口流入について分析し、20~24歳の女性が東京都を目指す理由、東京23区のうちどの区を選んでいるのかについて調査した。
2020年以降に転入超過する可能性が高いエリアについての予測もおこなっている。
分析結果の主なトピックスは3つ。
- 東京都に多く転入しているのは、20~24歳の女性。地方⇒政令市⇒東京の流れがみられる
- 女性の上京理由は「東京で暮らしたかったから」、「親元や地元を離れたかったから」が多い。全体の半数が「将来地元に戻る予定はない」と回答
- 2020年以降転入超過する可能性が高いエリアは、品川区・足立区
東京都への人口流入
本年1月に、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告(2018年)」の結果概要が発表された。4月下旬には詳細集計データも、公開されている。
同研究所ではこれらのデータを用い、東京都への人口流入の状況について、詳細な分析をおこなった。
- 3大都市への人口流入・流出の状況(2018年)
- 東京都への人口流入の状況。女性が男性を大幅に上回る
- 地方から政令市へ、政令市から東京都へ
【図1】 3大都市の転入超過数の推移
まず、 3大都市(東京都・大阪府・愛知県)への転入・転出超過数をみてみる。東京都は8万2,774人の転入超過。前年に比べ7,276人拡大している。一方、大阪府は5,197人の転入超過、愛知県は2,159人の転入超過だった。(図1)
また東京都は1997年以降、22年連続で転入超過している。一方、大阪府および愛知県の転入超過数は、2009年以降1万人を超えることがない。
東京都への人口集中が加速していることがわかるという。
【図2】 東京都への転入超過数の推移(男女別)
東京都への転入超過数は、2009~2012年に一旦落ち込んだが、その後急激に増加している。
男女別に見ると、1997年以降の男女の転入超過数はほぼ同数だったが、2009年以降は女性が男性を大幅に上回るようになる。(図2)
【図3】 東京都の年齢階層別転入超過数(2010~2018年)
東京都への転入・転出超過数を年齢階層別にみると、15~29歳の年齢階層が大きく転入超過となっている。
これについては、進学・就職を機に東京都に流入したことが想定されるという。(図3)
【図4】 東京都への転入・転出状況(20~24歳)
20~24歳の年齢階層に着目すると、この年齢階層の女性を中心に転入が年々増加。転入超過数も女性(30,667人)が男性(25,216人)を大きく上回っている。
同研究所では、”20~24歳の女性の転入”が、東京都への転入超過数増加の重要なポイントと分析している。(図4)
【図5】 政令市から東京都への転入超過数(20~24歳、男女別)
地方の中心的な都市である政令指定都市(札幌市、仙台市、名古屋市、京都市、大阪市、岡山市、広島市、福岡市など)では、地方の郊外から人口が流入している。
その一方で政令市からも東京都に対しては、転出超過という状況だ。とくに札幌市・仙台市・福岡市などでは、女性の転出超過が高い結果となった。(図5)
同研究所の推測によれば、大学進学を機に政令市に引っ越し、就職のときには東京都に転出していくパターンが多いという。
20~24歳の女性が東京都を目指す理由
同研究所ではさらに「20~24歳の女性が東京を目指す理由」や、「上京の際に重視している点」について調査した。
- 東京都に上京した理由。女性は「新しい生活をはじめたい」「都会への憧れ」が高い結果に
- 地元の就職先を選ばなかった理由。女性は「東京都で仕事をする」「親元や地元を離れる」を重視
- 東京に住む場所を考えるときは、女性は「日常生活のしやすさ」「治安の良さ」を重視
- 20代上京者のうち、約半数が将来地元に戻る予定はない
- 地元に戻りたい理由、女性は「東京での暮らしに疲れたから」がトップに
【図6】 東京都に上京した理由・重視したことは何ですか?(複数選択可)
GLMでは上京経験のある男女を対象に、独自に意識調査を実施している。
これによると、「東京都に上京した理由・上京するにあたって重視したこと」は、学生時代に上京した者も含まれるため、「東京に進学したい大学や専門学校があったから」(39.8%)がもっとも高かった。
以下、「東京で働きたかったから」(25.2%)、「異動や家族の都合」(20.6%)とつづく。
男女別でみると、女性は男性と比較して「新しい生活を始めたいと思ったから」、「地元や親元を離れたかったから」、「都会に憧れがあったから」、「交通の便が良いから」、「趣味をより楽しみたかったから」がとくに高かった。(図6)
【図7】 地元の就職先を選ばなかった理由は何ですか?(複数選択可)
調査では現在東京都で働いている人に対し、「地元の就職先を選ばなかった理由」をたずねている。
結果、男女ともに「東京都で仕事をしたかったから」(48.8%)、「東京都で暮らしたかったら」(33.1%)が多かった。
男女で比較すると男性は「東京都で仕事をすること」をより重視し、女性は「親元や地元を離れること」をより重視していることがわかる。(図7)
【図8】 東京に住む場所を考えるときに重視した点は何ですか?(複数選択可)
「東京に住む場所を考えるときに重視したこと」について聞くと、男女ともに「都心や仕事場に近く通勤時間が短いこと」(55.4%)、「鉄道の最寄り駅に近いこと」(39.4%)が多かった。アクセスを重視していることがわかるという。
女性は「買い物などの日常生活がしやすい」、「治安が良く安心・安全」、「家賃が手頃な価格か」をとくに重視する傾向がみられた。(図8)
【図9】 将来地元に戻りたいと考えていますか?(1つ選択)
調査によると、現在東京都に在住している対象者のうち、男女ともに全体の約半数にあたる46.4%が「将来地元に戻る予定はない」と回答した。とくに女性の方が、東京に残りたい傾向にあることがわかるという。
「具体的な時期は未定だがいつか戻りたいと考えている」は20.4%だった。(図9)
【図10】 地元に戻りたいと考えている理由は何ですか?(複数選択可)
「将来地元に戻りたい」と回答した対象者に、その理由をたずねた。結果、女性は「東京での暮らしに疲れたから」がもっとも多くなっている。
一方、男性は女性と比較して「Uターン就職・転職のため」、「インターネットを使ってどこでも仕事ができるから」が多かった。(図10)
2020年以降に転入超過する可能性が高いエリア
同研究所では、20~24歳の女性が上京した時に、東京23区のうちどの区を選んでいるのかを男女別に分析。2020年以降も転入超過する可能性が高いエリアについて予想した。
- 転入者数TOP5は世田谷区、大田区、杉並区、練馬区、板橋区
- 住みたい街と実際の転入区には差がある
- 2020年以降転入超過する可能性が高いエリアとして品川区、足立区に注目
転入者数が多いTOP5は世田谷区、大田区、杉並区、練馬区、板橋区。該当の5区は女性の転入者数が男性を上回っている。(図11)
【図12】 東京23区・20~24歳女性転入超過数ランキング(2014年~2018年の推移)
転入超過数でも女性の方が高い値を示しており、2014年から5年連続で上位5位を占め、定着する人も多い。同研究所では、「鉄板人気区」としている。(図12)
これらの区は都心部への交通利便性も良く、自然環境や都市のイメージも良さそうだとの評価が高いという。
【図13】 SUUMO住みたい街ランキング2019関東版 「住みたい自治体ランキング」(関東全体/3つの限定回答)
「SUUMO住みたい街ランキング2019関東版」(リクルート住まいカンパニー)によると、1位の港区、2位の世田谷区が、3位以下を離して2年連続TOP2になっている。(図13)
同研究所の予想によると、「1位の港区、3位の目黒区、4位の渋谷区のような都心で住みたいという憧れはあるものの、家賃が高いため大田区、杉並区、練馬区に流れている」のだという。
転入者数6位以下は品川区、新宿区、中野区、足立区、豊島区が並ぶ。近年では品川区、足立区が上昇を見せている。
品川区は山手線新駅「高輪ゲートウェイ」開業を皮切りに大規模開発を予定しており、足立区は大学の移転・開設や北千住エリアの発展で注目度が上がっているという。
同研究所では、今後これらの地区は交通利便性や家賃の面でも、2020年以降女性が定着しやすい注目エリアとして予測。また、現時点では男性の方が転入超過している中野区と足立区、葛飾区に、女性の転入が増えるかどうかも注目している。
※調査概要(「20~24歳の女性が東京都を目指す理由」で、GLMが独自に行った意識調査)
調査対象:上京経験のある東京都在住の20~29歳の男女を対象に、インターネットによるアンケート調査を実施
本調査期間:2019年9月13日~19日
有効回答数:500人(男女250人ずつ)
<出典元>
「東京都の転入超過が8万人超、女性が男性を上回る 20~24 歳女性が上京する理由とは?東京一極加速化を分析」
グローバル・リンク・マネジメント