林業×公認会計士。バックグラウンドの掛け合わせで、100年先の未来をつくる19代目の生き方

様々な大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。今回は、徳島県で19代続く、林業を生業としている家に生まれ育った岡田育大さん。

公認会計士、税理士として活動しながら、家業を継ぎたいという想いから、環境コンサルティング会社、森林管理会社を設立され、自然と人間の共存を実現すべく活躍されています。多彩な顔を持つ岡田さんの、常にチャレンジを続けるはたらき方についてお伺いしました。

大学在学中に公認会計士の資格を取得、27歳で事業を立ち上げ

——今、どんなお仕事をされていますか?

岡:公認会計士、税理士、環境コンサルティング、林業をそれぞれ自身の会社を作って行っています。

——多彩な顔をお持ちの岡田さんですが、現在の仕事スタイルになるまでの経緯を教えていただけますか?

岡:大学在学中に公認会計士試験に合格し、卒業後は旧中央青山監査法人金融部で6年間、ファンド関連捜査や不動産流動化などの業務に従事していました。

監査法人の中で環境監査部に異動した27歳の時に、再生可能エネルギー関連事業を手掛ける「株式会社スマートエナジー」を元同僚と共同で立ち上げました。そこで環境コンサルティングの仕事を主に行っています。

——スマートエナジーを立ち上げられるきっかけは何だったんでしょうか?

岡:所属していた監査法人が解体することになったんです。その時、今後について考えたことがきっかけです。

僕は徳島県で19代続く、林業を家業とした家に生まれ育ち、当時は林業や山の経営も並行して手掛けていたんですね。

自分のバックグラウンドは会計士と林業

その2つの要素を掛け合わせていける分野って何だろうって考えた結果、環境問題に対してのコンサルティングをやっていこうと思ったんです。会計士をやる中でコンサルティングに必要な知識は身についていたんです。

——ご実家の林業もその時から本格的に手掛けられるようになったんでしょうか?

岡:そうですね。当時、自分自身がもう少し実家の林業に関わりのある分野に移りたかったという気持ちが出てきた時でもありました。その意識の変化と監査法人解体のタイミングが重なったという感じでしょうか。

——環境コンサルティングとは具体的にはどういったお仕事なんでしょうか?

岡:例えば、企業の地球温暖化防止のために取り組んでいる施策に関する資料を作成したり、さらにそれをどうやって世の中にPRしていけば良いか、といった方法を考えたりしています。

——同じ頃にもう1つ会社を立ち上げられているんですよね。

岡:同じく2007年に森林管理会社の「株式会社フォレストバンク」を地元の徳島で設立しました。

森から学んだことを、生活や経済活動に活かしていくことで、人と自然が持続的な発展を遂げる未来を作り出したいという思いからの設立です。

——家業を継ぎたいと思われたきっかけは何かありましたか?

岡:DNAに埋め込まれている感じなんですよね(笑)

「家業を継ぎたい」というのは子どもの頃からぼんやりと思っていたことだったんです。

先祖が始めた林業をしっかり継いで、未来に繋げていった方が良いんだろうな、という漠然とした気持ちです。知らず知らずのうちに家で教育されていたのかもしれませんが(笑)

——家業を継ぎたいという想いを持ちながら、公認会計士の資格を取得されたのはなぜだったんでしょうか?

岡:林業って、農業や漁業と同じ一次産業なので、なかなかお金にならないんですよ。

それだったら資格を取得して手に職を持ちながら続けていった方が良いんじゃないかと思ったんです。

あと、不況だったので、一般企業に就職するよりも資格を取った方が良いと考えていたのもありました。20年位前の話ですけどね。

——新しくフォレストバンクを設立される時はどういった気持ちをお持ちでしたか?

岡:僕の場合は、「独立」というより、「一部転職」っていう感じなんですね。

会計士もやりつつ、その時はすでにスマートエナジーの従業員でもあったので、“独立”っていう言葉の割には意気込みも緩い感じでした。

もちろん、スマートエナジーも立ち上げたばかりの会社で、今後売り上げがどうなっていくかもわからない状態だったので、会計士という資格があることは強みになったと思います。

家業を次世代へ繋げていくため、チャレンジし続ける

——岡田さんが、“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?

岡:現状に満足せず、常にアンテナを張ってチャレンジし続けることですかね。

家業である林業を19代続けてこられたのも、先祖がそれぞれの時代の環境に応じたチャレンジをしてきているからなんです。

——それはどういったチャレンジでしょうか?

岡:例えば、「今年は台風が多くて山の作業ができないから、椎茸を作って売ろう」とか、「山の状況が良くない年は山を少し売って生活をしのごう」など、自然環境とのバランスで色んな決断をしてきているんです。

——現状を見据えて行動し、その中で新たなチャレンジを見つけていくということですね。

岡:極端に言えば、“何もしないことがチャレンジ”という時もあるんですよ。

チャレンジすることで損失を生む状況であれば、何もせずに家にいるという選択もあるわけです。家業を続けていくことを真剣に考えたらそうなるんですね。

——岡田さんのチャレンジというのはどういったものなのでしょうか?

岡:19代目である僕の時代では、林業が古い仕事のようになってしまっているんです。

でも、昔よりも環境意識が高まっている時代でもあるので、環境コンサルティングにチャレンジしたり、森の木をエネルギーにして電気を作る事業にチャレンジしたりしています。

未来を見据え、後世に評価される仕事を残す

——環境に対しての仕事をされている中で、今後の目標などはありますか?

岡:林業って、50年、100年っていうスパンで考えていく仕事なんです。

なので、僕が今植えている木を切る時には、恐らく僕はこの世にいません。

でも、「19代目のあの人が植えてくれた木なんだ」「こういう植え方は地球にとって良い植え方だよね」という風に、未来に「あの人の人生こうだったな」って評価されるような仕事を残していきたいと思っています。

それは僕が今、先祖の残した仕事を多数目にして感じることでもあるんです。

林業は未来に繋がる仕事。常に未来を見据えて活動し、良き未来を作っていきたいと考えています。

——岡田さんが今の“はたらき方”を見つけるまでに、何か意識していたことはありますか?

岡:若い時は、自分ができる範囲の仕事は依頼されれば全部やるっていうスタンスでした。

「僕にはできない」なんて思わずに、与えられている機会は全てが自分の勉強になると思っていたので。若い時は色んな可能性を広げていたように思います。

——可能性を狭めないことが現在の岡田さんを作られたんですね。

岡:仕事の幅に繋がったということもあるし、本当に合わない人って自分の中から消えていくんですよ。たくさん人と会っていく中でも、地球上で2回会える人って少ないし、3回会える人はもっと貴重な存在

再び会える人には何かしらのご縁があると思うので、仕事や人生の色々な面で幅が広がってきたと思います。

——“はたらく”を楽しもうとしている方へのメッセージをお願いします。

岡:大学時代、僕はやることがなくて会計士の勉強をしていました。

いずれ会社を経営することになれば必要な知識ですし、資格という形で残るなら良いかな、という軽い気持ちで取得したんです。正直、他にやりたいことがなかったんですよね。

「色んな人に会った方が良い」とか「資格を取った方が良い」って言われても、それをやりたくない人もいるだろうから一概には言えませんが、「やりたいことなんて、わからないままで良いんじゃないの?」とも思います

生きていれば、何かのタイミングで何かをしていくわけだし、それが積み重なって自分のやりたいことが見つかる人もいるだろうし。

仕事は仕事と割り切ってしっかり稼いで、プライベートを充実させるとか、色んな生き方があると思います。

岡田 育大さん(おかだ いくひろ)
公認会計士/税理士/林業家/一般社団法人日本JP機構 代表理事 /フォレストバンク 代表取締役
1980年2月8日生まれ。徳島県那賀町出身の林業家19代目。公認会計士、税理士。慶応大経済学部在学中に公認会計士試験に合格し、旧中央青山監査法人金融部に勤務。2007年にスマートエナジー(東京)の立ち上げに参画。2007年、森林管理会社フォレストバンク(徳島市)を設立。四国出身の首都圏在住者でつくるコミュニティーHIP(ホーム・アイランド・プロジェクト)元代表。自然と人間の共存の実現へ向け活動している。

転載元:CAMP
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