グローバルな組織コンサルティングファームのコーン・フェリーが、世界の795人の投資家へのオピニオン調査とコーン・フェリーが独自にもつ15万人の企業リーダーのデータを分析し、メガトレンドの複合的な影響による予測困難な時代のリーダーに必要なスキルについて、最新レポート「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」を発表した。
主な調査結果は以下の通り。
- 日本の投資家の80%は、現在の企業リーダーのスキルでは未来に適応しないと考えている。
- 予想困難な時代のリーダーシップモデルは「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」
- 高いパフォーマンスにつながる5つの行動特性ADAPTを満たす日本の現職リーダーはわずか16%
日本の投資家の80%が、「現在の企業リーダーのスキルでは未来に適応しない」と回答
投資家へのオピニオン調査の結果、多くの投資家は、新たな競争がいつどこでも出現する状況下で脅威を予測するのは難しく、企業はディスラプティブ(破壊的)な課題に直面していると考えていた。
さらに、短期的な業績圧力がイノベーションや変化を推進する能力を奪っているとみており、投資判断の際に過去の実績より将来のビジョンと方向性をより重視している。
特に、CEOの特質を重視しているが、現在のリーダーシップモデルはこれからの時代に合っていないと考えていると言える。
ディスラプティブな時代において成功するためには卓越したCEOが不可欠であり、トランスフォーメーションの必要性から、今後3年の企業業績にはリーダーシップがより重要と回答した。
なお、現在のリーダーシップモデルはこれからの時代に合っていないと考えている投資家の割合は、中国の82%に次いで日本の投資家の80%となり、世界平均67%と比較しても特に高い結果となっているという。
予想困難な時代のリーダーシップモデル「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」とは
この結果を受け、同社は、世界15万人のリーダーシッププロファイルについて分析を行い、効果的で将来を見据えたリーダーシップモデルを解明し、「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」と名付け提唱した。
セルフ・ディスラプティブ・リーダーとは、ラーニングアジリティが高く、自己認識に優れ、EI(emotional intelligence/感情的・社会的知性)が高く、目的志向で自信にあふれ、かつ、謙虚な人物像であり、積極的に自身のアプローチと態度を修正して急速な変化に対応していくことができるリーダーのこと。
予測困難な時代において変動するマーケットの需要にこたえ続けるためには、ダイナミズムと洞察力を伴い、将来を見据えて変化に対応できるスキル・ポートフォリオを備えて、自己を創造的に破壊できるリーダーが必要だという。
ADAPTを満たす日本の現職リーダーはわずか16%
さらに、今回の調査では、投資家やアナリストに対する調査と同社独自のデータに基づく分析により、セルフ・ディスラプティブ・リーダーに必要な、高いパフォーマンスにつながる5つの行動特性「ADAPT(※)」を特定するとともに、それに対する投資家の期待と現在のリーダーシップとの需要ギャップを国別に明らかにした。
ADAPT -<Anticipate(先見性), Drive(活性化), Accelerate(スピード), Partner(パートナーシップ)およびTrust(信頼)の5つのスキル>- の要件を満たしている現職のリーダーは、世界中のエグゼクティブのわずか15%、日本も16%に過ぎなかったという。
日本は投資家の期待と現在のリーダーシップの需要ギャップが最も大きな国の一つであり、継続的なカイゼンを得意とする日本のリーダーはAccelerateの面では優れているが、投資家が重視しているTrustや、社員の創造性を支援するような前向きで活気にあふれた環境を作り出すDriveの能力が弱く、投資家の期待とのギャップが大きいことがわかったという。
日本の投資家が求める能力と日本のリーダーが持っている能力のギャップ
(※)ADAPT ディメンションとは、どのスキルが将来の成功を最もよく予測するのか判断するため、同社独自のデータと世界の投資家へのオピニオン調査の結果に基づいたデータを、マシーンラーニングによる因子分析を行い定義された将来のリーダーに必要とされる5つのリーダーシップの特性。「先見性」、「活性化」、「スピード」、「パートナーシップ」、ならびに「信頼」のスキルを指す。リーダーシップのスコアは国ごとに集計され、グローバル・イノベーションインデックスにリンクされている。
■Anticipate|先見性:文脈を読み取り、迅速に判断を下し、機会を創出する。社会的ニーズに対して企業が果たすべきことにフォーカスする。不透明な状況下にあっても集団的な取り組みに対して方向性を示し統合する。
■Drive|活性化:目的意識(パーパス)を育むことによって人々を活気づける。自分自身や他者の心身のエネルギーをマネジメントする。人々を希望的、楽観的、内発的に動機づけるために前向きな環境を育む。
■Accelerate|スピード:絶え間ない技術革新と望ましいビジネス成果を生み出すために、知識・情報の流れをマネジメントする。アジャイルなプロセス、迅速なプロトタイピング、反復的なアプローチを駆使してアイデアを実行に移し事業化する。
■Partner|パートナーシップ:部門や組織の境界が一層曖昧になる中において連携を促し、パートナーシップを形成する。意見交換を可能にする。能力を相互に補完し合い、高いパフォーマンスを実現する。
■Trust|信頼:組織と個人との間に相互成長に軸足を置いた新しい関係を構築する。多様な視点と価値観を統合する。個人が自身の目的意識(パーパス)を明らかにする手助けをし、最大限に貢献するよう促す。
<参照元>
『セルフ・ディスラプティブ・リーダー-日本の展望-』
KORN FERRY