就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが、「国家公務員の残業時間ランキング」を発表した。
主な調査結果は以下の通り。
- 1位は財務省(72.59時間)、2位は文部科学省(72.43時間)、3位は経済産業省(70.16時間)
- 最も少なかったのは裁判所の9.15時間
国家公務員の残業時間ランキング
長時間労働の最大の原因は「国会対応」
国家公務員の残業時間ランキングTOP3は70時間超えという結果となった。
「不夜城」と呼ばれることもある霞が関だが、上位機関の社員クチコミから見えてきたのは、「国会対応」というキーワードだったという。
「国会対応」は、国会で質問を受ける議員の答弁を作成する重要な業務で、議員からの「質問通告」を待機し、各省庁に割り振られた後に答弁作成が始まる。
内閣人事局の調査(※)では、質問取りが終わる平均時刻は20:19、割り振りが確定する平均時刻は22:28となっており、国会運営の構造的問題を解決しない限り、霞が関の働き方改革は難しいことが伺えるだろう。
(※)内閣官房内閣人事局「国会に関する業務の調査・第3回目(調査結果)」
具体的なコメントは以下の通り。
- 「やや改善していこうとする動きは見られるが、ワークライフバランスに対する意識は民間企業に比べると乏しい。国会や政治家等への突発的な対応が求められることも多く、プライベートを犠牲にされることも多々あり。(企画・調査、男性、財務省)」
- 「国会業務や予算編成、税制改正など長時間労働が基本なのでワークライフバランスは諦めざるを得ないです。(事務職、男性、財務省)」
- 「テレワークなどに取り組み始めてはいるが、基本的に自分の裁量で業務の時間をコントロールはできない。(大臣官房、男性、財務省)」
- 「平日にプライベートの予定を入れることはほぼ無理。『多忙なのは国会会期中に限る』、という職員もいると思うが、国会は毎年1月中下旬~6月中下旬頃(遅ければ8月)と、9月頃~12月中下旬頃まで開催されるのが通常。その間毎日、自分の部署が国会答弁作成する必要がある訳では無いが、国会のために急に仕事が入る(それも定時後)ことが多くあるので、平日の習い事や霞が関以外の人との約束は実現不可能と考えてよいと思う。(企画・調整、女性、文部科学省)」
- 「きわめて調整しにくい。国会対応を筆頭に業務は基本受け身であり、自分でコントロールできない上に、突発的に発生する案件も多い。また、対面でレクや相談をしなければならないことも多いので、例えば子供が病気になったから家でリモートワーク…ということもなかなかできない。他方、平日がいくら多忙でも土日は基本オフだったので、土日にしっかり休息をとってリフレッシュすることはできた。(事務系総合職、男性、文部科学省)」
- 「数年前と比較して、自宅でも職場と同じPC環境で仕事ができるようになったり、テレワークやフレキシブルな勤務体系を奨励する取組が進められていたり、国会業務の迅速化に向けた取組が進展しており、大幅に改善されているように感じる、ただし、国会業務を始め、国会や他省庁や海外政府との関係など、他律的な要因で、ある程度の制約が生じることは当然あり得るが。(企画、男性、経済産業省)」
- 「ワークライフバランスについてはあまり保たれていなかったが、最近は働き方改革に力をいれている。月1日の有休休暇取得の奨励やテレワークの推進など。その風土は根付きつつあり、とりやすい雰囲気ができつつある。残業は部署によって全く異なり、残業がほとんどない部署もあればかなりの残業が常態的に発生するところもあり。(事務、男性、経済産業省)」
- 「本省であれば、ある程度の残業は避けられない。特に、国会対応を頻繁に行う部署や、法令改正の担当部署に配属された場合、休日出勤を強いられたり、月の残業時間が150時間や200時間にのぼることもある。ただ、霞ヶ関の中では比較的ワークライフバランスの取りやすい方か。(総合職・係長、男性、総務省)」
- 「公務員なので比較的休みやすいが、上司次第。国会対応業務がある場合はもれなく残業中になり、終電に間に合わずタクシーとなる場合も多い。まれに日付を回って翌朝まで対応が求められることもあり、家に帰れないことも多々ある。いわゆる『九時五時』の生活を求めている人には向かない。(事務、女性、内閣府)」
残業時間10時間以下。裁判所の働き方
今回の集計で、裁判所の残業時間は9.15時間という結果となり、財務省の約8分の1の長さとなった。
省庁と違い、「国会対応」が無いだけではなく、組織風土としても、ワークライフバランス向上を推進していることが伺える。
具体的なコメントは以下の通り。
- 「裁判部の事務官であれば、毎日定時(5時)に帰れる部署は多くある。書記官はこの限りではなく、最高裁や事務局、繁忙な裁判部など、長時間残業が常態化している部署もあるため一概には言えないが、終電前後まで働かされるような部署はごく僅かで、裁判部であれば繁忙部の繁忙期でも8時~10時には退庁できることがほとんど(書記官でも定時に退庁できる部署はある)。なお、組織としては長時間残業が歓迎されておらず、残業申請が一定時間を超えると上司等との面談により業務効率化を促されるシステムとなっている。(裁判所書記官、女性、裁判所)」
- 「部署によるが、特に事務官のうちは一般的な企業の社員よりも残業は少ないと思われ、基本的に土日祝日が休みでかつ有給も取りやすいので、自分の時間は取りやすいと感じる。実際に子どもとの時間や趣味の時間を充実させている人が多い。(事務官、女性、裁判所)」
- 「基本的に業務内容や量の面からは余裕があるため、ワークライフバランスとしては申し分無い。事務局勤務になると相応の残業が必要になるが、給与面や内容からすれば、民間企業と比較して相当恵まれているのではないか。(事件部・裁判所書記官、男性、裁判所)」
■対象データ
2019年8月までにOpenWorkに投稿された官公庁への会社評価レポート5653件を対象データとしている。回答が10件以上ある中央官庁等に限定してランキングを作成した。
<参照元>
「国家公務員の残業時間ランキング」
働きがい研究所