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様々な大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。
今回は、人気レストランや飲食施設を独自の視点と高いリサーチ力で多数プロデュースし、食を“非日常のもの”へと変換させるフードビジネスを手掛ける笹尾一純さん。やりたいことや夢がなかった彼が、そんな時期を乗り越えて見つけた大切なことは、“出会った人を幸せにする”ことでした。
やりたいことがなかった自分を卒業したくて東京へ
——今どんなお仕事をされていますか?
笹:食に関わる企業のコンサルティングをメインに活動しています。具体的に言うと、店舗をプロデュースしたり、飲む・食べることをどのようなスタイルでお客様に提供するかを考えたり、といった仕事ですね。
——笹尾さんが地元を離れて東京で働き始めたのはなぜですか?
笹:夢ややりたいことが特になかったので、東京に来れば何か見つかるかな、と思い、若い頃に上京してきました。
寝る間も惜しんでアルバイトして、そのお金をほぼ遊びに使っていましたね。
——どんな所でアルバイトをしてこられたんでしょうか?
笹:飲食だとチェーン店も個人経営のお店も経験しましたし、クラブのバーテンダーや、カフェ、古着屋や雑貨屋でも働いていました。
日雇いでは建設現場やイベント会社ですね。
体力系の仕事は時給重視で選んで、それ以外はオシャレな店や人がいそうなところを探して働いていました。
——たくさんの職場をご覧になっているんですね!そこからどういった経緯で会社を立ち上げられたんですか?
笹:そんな風にがむしゃらに働いている中で、ご縁があってイベント制作会社の飲食部門を立ち上げることになり、それがきっかけで自分の会社を設立することになりました。
——会社の経営は順調でしたか?
笹:経営は非常に興味深い分野ではあったんですが、店舗数を増やさなければ!という思いから手を広げすぎてしまい、心配ごとが増えて、精神的に少し疲れてしまいました。
——どういった心配ごとが増えてしまったんでしょうか?
笹:僕の性格上、アルバイトの一人ひとりまで気になってしまうので、心配ごとや相談ごとが多く、自分自身の心労が増えてしまったこと。
お客様を喜ばせるというゴールが一緒でも、そこに行き着くまでのやり方が人それぞれ違うので、スタッフ間の衝突も多く、なだめるのが大変だったこと。
それに、急に店舗と雇用人数を増やしたことで収入と支出が合わない時期が出てきてしまい、経営に苦労したことですかね。
この経験で少し痛い目をみたので、30代を過ぎてからは店舗の経営は辞めて、今のようにプロデュース業を中心にしています。
夢がないことにもがき苦しんだ20代
——上京する前は地元でどんな風に過ごしていらっしゃったんですか?
笹:親が世間体や体裁を気にするのもあって、特に深く考えずに大学に進学してしまったので、1年生の時は遊ぶことに夢中でした。
ただ、大学2年の時にアルバイト先で知り合った後輩が、自分の夢のために高校を辞めて専門学校に行くっていう話をしていて。高校を辞めてまで“自分の夢に進む”ということをこれまで考えたことがなく、その斬新さにびっくりしたんですよね。
——なんとなく遊んで暮らしていた大学生の笹尾さんにはショッキングな出来ごとだったと…。
笹:そうです。目の前に敷かれたレールを捨てて、自ら困難な方へ、自分の夢に向かって進むってすごい決意だな、と。
それと同時に、「自分は何をしているんだろう…」と思わされた出来事でした。
——その後、大学を中退されるんですよね。
笹:コンパや飲み会だらけの毎日にも、友人にも、飽き飽きしちゃって。
周りに人はたくさんいるのに、常に孤独を感じている状態が続いて、大学にも行かなくなって、色んなアルバイトをするようになったんですよ。
——そこから自分探しの旅に出られたんですよね。
笹:どれだけたくさんアルバイトしていても自分という本質が見えなくて、その当時知り合いからマグロ漁船の話を聞いて「これだ!」と思ったんです。
大金をゲットしてとりあえず海外に行こう!と。
——マグロ漁船!
笹:そこから親を説得して、大学を退学したんです。当時の自分には夢ややりたいことがなかったので、海外に探しに行こうと思ったんですね。
——自ら夢を探しに行こうとされたんですね。
笹:退学が決まってからは、車で日本一周を試み、数ヶ月間旅をしました。
漁船に乗るタイミングが来たので途中で旅を辞めて実家に戻ると、その会社と連絡が取れなくなっていて…。それで結局マグロ漁船に乗ることができなくなってしまったんです。
一度そこで自分の中で人生が終わった感じがしたので、上京したんですよ。
——なんだかすごいお話です…!上京後、アルバイトを続ける中で、将来の仕事に向けて何か行動を起こされましたか?
笹:アルバイトをしていた頃の経験が今の仕事に繋がっているので、これといった活動はしていないんですよ。
でも、僕には夢がなかったからこそ、様々な仕事をやってみて、自分に何が向いているのか、何をしたいのかを見つけようとしていた気がします。そのアルバイト経験こそが将来の仕事へのアクションともいえますね。
——その当時、何か悩まれていたことはありますか?
笹:働くことへの目的を見いだせない時期がありました。
自分はお金を儲けたいのか、それとも自分のやりたいことをやるのか、安定を求めるのか、など、自分が人生で大きな時間を使う「仕事」というものの先に希望が見えず、不安を抱えていました。
——やりたいことが見つけられなかった笹尾さんが仕事にやりがいを見つけるのに、何か転機になるようなことはあったのでしょうか?
笹:やっぱり自分の会社を作るタイミングですね。
やらねばならなくなったことができたこと、そして、どうせやるなら楽しくやらねばならないと思うようになったのが自分の仕事への考え方の大きな転機になっていると思います。
周囲の人を喜ばせることが自分の使命
——笹尾さんが“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?
笹:自分の周りにいる人々を、自分の言葉や行動でもっと楽しくしよう、良くしよう、と思う行為を楽しむことが必要だと思います。
——飲食業や接客業に通じる考え方があるように思います。
笹:相手が同僚や部下や上司でも、それがお客様でも、目の前の人が求めていることをすると相手は喜びますよね。
その喜ばせること自体を、自分自身が楽しめることが大切だと思うんです。
——相手を喜ばせることを自分が楽しめれば、仕事自体が楽しくなるということですね。そのために何か心がけていることはありますか?
笹:自分だけが得をするんじゃなく、周りが笑顔になれるような環境を整えることなど、出会った人々のために何ができるのかを常に考えて行動しています。
——例えばどういったことでしょうか?
笹:2017年に目黒アトレの屋上でバーベキューを楽しめるスペースをプロデュースしたんですが、ここは必要な機材を貸し出ししているので手ぶらで行けるのが魅力なんです。
お肉や野菜や飲み物は、同じアトレ内のスーパーで購入してから来ていただければ食材も現地で調達できるシステムです。
バーベキューはやはり食材選びから始まるので、使うお客様にとって立地として大変便利であるし、アトレ全体にとっても売上に貢献することができました。
プロジェクトに関わる皆さんにとって良い施設になったと思います。
——“はたらく”を楽しもうとしている人へのメッセージをお願いします。
笹:思ったことをまずやってみて、理解して、分析してみてください。
年齢や環境によって考えは必ず変わるので、その時、その年齢の自分ができることの範囲を若いうちに広げておくと良いと思います。
- 笹尾 一純さん(ささお かずすみ)
- 有限会社ファイブミッション 代表
様々なアルバイトを経て、2004年、有限会社ファイブミッションを設立。日常である“食”を非日常へと変換し、五感すべてに訴えかける仕掛けを演出するフードビジネスを多数手がけている。
転載元:CAMP
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