説明ベタを克服するために注意するべき2つポイントとは

会議や商談のプレゼンなど、ビジネスシーンにおいて説明力は必要不可欠なスキルといってもいいだろう。中には、「自分が伝えたいことが相手に伝わっていない気がする」「話しているうちに何を説明しているのか分からなくなる」など、苦手意識を持っている方も少なくないのではないだろうか。

今回、教育コンテンツ・プロデューサーとしてコンサルティングなどを行っている犬塚壮志氏に、説明力を上げるための極意をお伺いした。

説明の“良し悪し”がビジネスチャンスに影響する

「説明スキルが高いとビジネスシーンで活躍できる」という類の話は、多くのビジネス書に散見されるが、具体的に我々にどのような恩恵をもたらしてくれるのだろうか。

犬塚氏によると、説明こそ商品サービスはもちろん、「自分」という人間と相手を繋げることができる有効な手段なのだという。

上手な説明は本来の価値を正確に、かつスムーズに伝達することができるため、マーケットへの効率的な訴求が可能になる。

そのため、社内はもちろん、社外のクライアントやコンシューマーを相手にするときは特にその重要性が顕著になるという。説明力が上がるということは、社内外問わずビジネスチャンスを広げるための大きな足掛かりになるのである。

説明上手になる、2つのポイントとは

では、説明力を身につけるためには、具体的にどのようにすればいいのだろうか。そのためには、以下の2点を意識しておくことが重要だという。

1.聴き手のことをできるだけ知る

そもそも上手に説明するためには、相手を「理解させる」と同時に「理解したくなる」ような言い回しを使う必要がある。そこで欠かせないのが、聴き手のリサーチだ。

犬塚氏によると、相手に理解させるということは、すなわち相手の頭の中にある知識や考えと、こちらが提示するものをぴったりと接合させることだという。相手が自分の会社や自分を全く知らない人なのか、それともある程度知っている人なのか。

そこが違うだけでも、説明の仕方は大きく変わってくる。そのため、相手の立場、経歴、実績などを前もって下調べしておくことで、相手の認識との隔たりをなくし、スムーズに伝えたいことを伝えることが可能になるのである。

もし、事前の準備が難しい場合は、説明を始める前に質問から入ってリサーチするのもおすすめだそうだ。こちらからの問いかけに対する回答や雰囲気、頷き方等によって、相手がどれだけ自分が話そうとすることに対して興味があるのか、またどれだけ知識を持ってるのかなどを把握することができる。

ただし、ここで気を付けておきたいのは、質問は相手と自分の架け橋になるようなものにするということだ。あまりに専門的なものやパーソナルに寄り過ぎた質問だと、そもそも自分の説明と相手の理解とを接合させるポイントが見つかりにくくなり、説明のための効果的なリサーチにはならない。「弊社ではこういうサービスを展開しているのですが、ご存知ですか?」など、相手が少しでも知っていそうな所から引き出していき、相手の温度感を把握したところで、どのレベル感で説明をしていくのかを決めるのである。

2.目的を設定する

相手のリサーチを踏まえたうえで、さらに押さえておきたいのが説明の目的を明確に設定しておくことだ。

相手に自分が提案するサービスを知ってほしいのか、それとも使いこなせるようになってもらいたいのか。誰に、何を、何のために、どのくらいの時間かけて伝えるのかということを明確に持っておくことで、こちらが伝えたいことと相手が知りたいことの不一致を防ぐことができるのだと犬塚氏は語る。

相手を説得させるにはメリットとビジョンの訴求が欠かせない

最後に、相手に理解してもらえる説明を、説得力のある話にブラッシュアップするためのコツも伺ってみた。犬塚氏によると、そのためには、感情を動かす説明をすることがポイントだという。具体的には、相手のメリットを訴求すること、そして自分のビジョンをしっかり言語化できるようにしておくことなのだそうだ。

そもそもビジネスにおいては、自分の伝えたいことだけではなく、相手に対するメリット訴求を欠かしてはならない。相手のニーズがどこにあり、何が相手にとってプラスになるのか。この点も、前述した説明の目的と合わせて設定しておきたいファクターである。

さらに、熱量をもって自分のビジョンを語れるようにすることも大切だ。リスクを負うことも含めて、自分の想いや考えを明確に伝え、その覚悟を相手に提示するのである。単純なメリットだけでなく、そういったビジョナリーな部分に共感して、相手が力を貸してくれるケースも多いと犬塚氏は語る。

最終的に説明とは人と人との対話。それを説得力あるものに昇華させるためには、単なるテクニックに留めるのでなく、心に訴えかけるエモーショナルな温度感も説明力を上げる一端になるのである。

犬塚壮志(いぬつか まさし)
福岡県久留米市出身。教育コンテンツ・プロデューサー。当時最年少の25歳という若さで駿台予備学校の採用試験に合格し、化学講師としての勤務。その後独立し、現在は、大人の学び直しをテーマにした株式会社士教育と大学受験専門塾のワークショップの2つの会社を経営。自身のノウハウを活かした各種教育プログラムを開発・展開し、多方面でセミナーや講演会などにも登壇している。主な著書に5万部を突破した『頭のいい説明は型で決まる』(PHP研究所)などがある。

取材・文:志田智恵

モバイルバージョンを終了