9月6日からドイツ・ベルリンで開かれている家電見本市「IFA 2019」には、年末商戦に向けた新製品が登場する。その中で今年の話題をさらったのは、サムスン電子の折りたたみスマホ「Galaxy Fold」だ。


サムスンの折りたたみスマホ「Galaxy Fold」

スマホの成熟化が進み、どの機種も似たり寄ったりになりつつある中で、折りたたみスマホの登場はモバイル市場をどう変えるのだろうか。

サムスンは折りたたみスマホに本気の姿勢

AIやビッグデータといった技術が社会を変えていく中で、具体的に提供されるサービスにアクセスする端末として、スマホは最も重要な存在だ。黎明期のスマホは機種によって当たり外れもあったが、成熟化が進んだことでどの機種を選んでも決定的な違いはなくなりつつある。

スマホの新機種が登場しても劇的に変わることはなく、買い換え意欲も下がっている。大手キャリアの料金プランも相まって、かつては2年ごとに買い換えるのが定番だったが、いまでは3年、4年と同じスマホを使い続ける人が増えているという。

その中でスマホを大きく変える可能性があるのが、折りたたみ式やフォルダブルと言われるモデルだ。IFA 2019のサムスンブースには「Galaxy Fold」が展示され、実機に触れるための行列は1時間待ちを超えているときもあった。


IFA 2019に登場した「Galaxy Fold」

日本ではガラケーの時代から2つ折りの端末は広く使われてきたが、これは画面とキーボードを折りたためるというものだった。その後、2画面の折りたたみスマホも登場したが、あくまで2つの画面が横に並んでいるものだった。

これに対してGalaxy Foldは、折り曲げができるという有機ELディスプレイの特性を活かし、1つの画面を2つに折りたためる点が新しい。だが、その商品化は容易ではなかった。Galaxy Foldも異物の混入などの問題が発覚し、発売の延期を余儀なくされている。

世界各国での発売にこぎ着けたGalaxy Foldは、一連の問題を改良した上であらためて生産されたものだという。単なる話題性だけではなく、折りたたみ端末を1つのジャンルとして確立させようというサムスンの本気度を感じさせる点だ。

Galaxy Foldはサブ6GHzの周波数帯を用いた5Gにも対応しており、新たに発表したミッドレンジ機「Galaxy A90 5G」と合わせて、サムスンの5Gスマホは4機種展開になった。5G時代のライバルと目されるファーウェイが米中対立に巻き込まれる中、サムスンの5G戦略の一翼を担う存在としても期待される。


サムスンの5Gスマホは4機種展開に

ボリュームは「スマホ2台分」、日本発売にも期待

Galaxy Foldはどんな端末なのか、実機の使用感も紹介する。開いた状態では7.3インチの画面になり、タブレットのように利用できる。紙の書籍のようにメイン画面は折りたたんだ内側にあるため、閉じた状態では外側の4.6インチ画面を利用する。


Galaxy Foldを開いた状態。画面を2分割または3分割する機能も


Galaxy Foldを閉じた状態では、4.6型の細長い画面を使う

まさにスマホとタブレットが融合したような夢の端末だが、現実にはスマホ約2台分のボリュームを覚悟しなければならない。販売チャネルによるものの価格はほぼ確実に20万円を超え、ハイエンドスマホを2台買える水準だ。折りたたんだときの厚さや重さもスマホ2台分に近い。


ヒンジ側の厚さは17.1mm、重さは276gとややずっしりしている

とはいえ、日常的にスマホとタブレットを両方持ち歩いている人にとっては、1台に集約することで運用コストや重さを節約できる可能性はある。そういう意味では、Galaxy Foldは折りたたみスマホというよりも、折りたたみタブレットととらえたほうが良いかもしれない。

韓国ではすでに発売され、欧州、米国に展開予定となっているが、日本での発売は未定だ。だが国内大手キャリアの中には、取り扱いに向けて高い関心を持っているとの情報もあり、日本での発売を期待したいところだ。

他にもファーウェイなどが折りたたみ機を発表しているものの、いずれも価格や重量は似通った水準になるとみられており、既存のスマホにすぐに取って代わることはないだろう。だが折りたたみ端末が1つのジャンルとして確立すれば、スマホ市場を再び活性化させることは間違いなさそうだ。

取材・文:山口健太