『メルペイ』の一大キャンペーン〝商店街ジャック〟は商店街の活性化に貢献できるのか

2019年2月13日にサービス開始と後発ながら、約半年で利用者数が200万人に達した『メルペイ』。年間約5,000億円の『メルカリ』の売上金が『メルペイ』で利用できることを強みに、大規模なキャンペーンを次々と展開する。中でも一大イベントが、商店街とタッグを組んで行なわれる〝商店街ジャック〟。

商店街に「メルペイ通り」というフラッグがはためき、キャンペーン期間中、一部の加盟店では割引などの特典を用意する。このキャンペーンによって商店街にどのような変化がもたらされたのか!?

商店街ジャックの第一弾は原宿の竹下通り

『メルペイ』による商店街ジャックの第一弾は「竹下メルペイ通り」キャンペーン。4月26日~5月6日のゴールデンウィーク期間中に、東京原宿の竹下通りで実施された。竹下通りでは約80の店舗で『メルペイ』を導入。

原宿竹下通りで人気の「マリオンクレープ」「Candy・A・Go・Go」「TOTTI CANDY FACTORY」「WEGO ウィゴー」の4店舗で、『メルペイ』での支払い限定で得られる特典を用意した。


GWに実施された「竹下メルペイ通りキャンペーン」

キャンペーン場所に竹下通りを選んだのは、メルカリのコアなユーザー層である30歳未満の顧客が多いことから。メルペイのマーケティンググループ マネージャーの山代真啓氏は、「メルペイの強みはメルカリの売上金を活用して、お買い物ができるところ。今後もメルカリのお客さまとの親和性が高い場所で、加盟店開拓やキャンペーン施策を行っていきたい」と語った。

そしてその第二弾が東京杉並区にある高円寺の商店街で行なわれた。

「高円寺メルペイ通り」と銘打ち、6月28日~7月5日の期間中、高円寺商店街の中のルック商店街(新高円寺通商店街)をジャック。JR高円寺駅を中心に大きく広がる高円寺商店街は、14の商店街で構成されている。

この時点で『メルペイ』の加盟店は約160店舗あり、その中でルック商店街の店舗は約40店舗。高円寺ルック商店街で理事を務める中澤一也氏は、「この40店舗を倍の80店舗にまで広げたい」と語った。


新高円寺通商店街振興組合 高円寺ルック商店街 理事 中澤一也氏

高円寺商店街の歴史は古く、戦前から営業する商店街もある。ルック商店街では昔は惣菜や生鮮品を扱っているお店が多かったが、今はそういったお店はほとんどなく、古着屋や雑貨屋、カフェや飲食店など、若い人向けの店が増えている。個人経営の人気店も多いことから、週末には観光地のような賑わい。とはいえ、中澤理事は「現在の状況のままではいけない。今後はキャッシュレスに対応しないと生き残っていけない」という危機感を抱いていると言う。

「キャッシュレスの選択肢として、クレジットカードや電子マネーもありますが、クレジットカードの場合は手数料が高く5%くらい。低単価の商品を販売する店の場合、売上げは10%あるかないか。その中で5%の手数料は負担が大き過ぎます。

電子マネーも決済端末を購入する負担はお店側。私は手数料の負担が少なく、端末の用意も不要なQRコード決済が商店街との相性がいいと思っています。

私自身、ここ2年くらいサイフを持たず、スマホ決済にしていますが、そうすることでポケットに小銭がなくなり、銀行のATMに行く回数も激減しました。このように利便性の高い決済方法は、お客さまにとっても活用されていくのだと思います。日常的に都心で働いている人は、都心でこのような利便性を感じています。だからホームタウンの高円寺のような場所でも、そういう便利さが、都心と同じように受けられるようにしていかないといけないと感じています」と中澤理事。

そのためには商店街のお店の人にも、『メルペイ』のようなQRコード決済で支払うことが、当たり前になっていることを、肌で感じ取ってもらう必要がある。ルック商店街に店舗を構える店主は、年配と若手の二極化している。若い店主はいち早く『メルペイ』などを導入しているが、年配の店主はそんな時代の流れについて行けていないのが現状だ。

「高円寺メルペイ通り」が規模を拡大して再度開催

『メルペイ』は7月26日~7月31日に、高円寺商店街との第二弾キャンペーンを実施。「高円寺メルペイ通り」を拡大し、10の商店街に規模を広げて商店街ジャックを実施。『メルペイ』導入店舗は160店舗から200店舗に増え、内50店舗で一律200円の割引を受けられる特別キャンペーンを実施した。


高円寺商店街との第二弾キャンペーンは、ルック商店街、高円寺中通商栄会、高円寺北中通り商栄会、高円寺パル商店街、高円寺庚申通り商店街、エトアール通り商店会、高円寺南商店会、高円寺あづま通り商店会、高円寺駅西商店街、馬橋商興会で実施された

「高円寺商店街の規模になると、それぞれの商店街に今の状況をどうにかしたいと思っている人がいます。それで一緒にやりましょうという形になりました。個別だと大きな結果は出せませんが、一緒にやれば交渉できることもあるでしょう。お客さんにとってはどこまでがどの商店街というのは認識していません。どこでも使えるという環境を作る意味では、商店街全体の使い勝手が良くならないといけません。そこで全ての商店街にお声がけさせて頂きました」と、中澤理事は第二弾キャンペーンの経緯を語る。

高円寺商店街は、平日と週末では倍以上、訪れる人の数が変わる。遠くからお客さんを集客できるお店が多く、そういった商店街の活性化に貢献できているお店の店主は、お客さんが求めるモノにも敏感だ。


「高円寺メルペイ通り」の第一弾で、『メルペイ』のコード決済をした人に200円割引の特典を出したアンティークショップの「malto」。キャンペーン期間中の来店客が2倍に増えた。


「malto」では第二弾のキャンペーンでも200円割引の特典を提供した。

「新しい決済サービスが出てきたからと言って、商店街のお店が一斉にそれを導入するのは難しいことです。上からやれと言っても、必要性を感じてもらえないと導入してもらえません。まず感度の高いお店が導入して、それならうちもというお店が増えていくので、その比率を平均より高めていきたいですね。

お客さんが期待しているモノは事前に用意しておかないと、今の時代、お客さんが離れていってしまうと思います。商店街は駅ビルと違って、店舗を管理しているわけではありません。お店を支える存在。必要とされた時に選択肢を用意しておいてあげる。だから今回のキャンペーンのような話があれば、積極的に関わってバックアップしていきたいという意識があります」

「最終的には杉並区商店街連合会という街の規模でできれば」という野望を語ってくれた中澤理事。今回、高円寺商店街の規模でキャンペーンを行なったことで、その野望に少し近づいたと共に、このような先行事例を作ることで、他の商店街や他の地域のお店でも、このような取り組みが可能になっていくだろう。

現在、各地の商店街では、若い人たちが離れつつあるという課題がある。一方、『メルペイ』で使えるお金を生み出す『メルカリ』の利用者層は、10~30代の若い人たちが多い。この商店街ジャックの取り組みを通じて、お店が『メルペイ』を導入。『メルペイ』が使えることによって、若い人たちが商店街で買い物を楽しんでくれるようになることが理想だ。

「時代の流れに商店街が置いて行かれるのはいけないこと。高円寺商店街だけがいいというのではなく、地方を含めて、多くの商店街にこのような取り組みが浸透していって欲しいと思います」と、中澤理事は熱く語った。

取材・文・撮影:綿谷禎子

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