この夏イチオシ!けんすうが選ぶオススメマンガ12選

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みなさんはこの夏をどう過ごす予定だろうか。友人と海やレジャー施設に出かける、恋人や家族と旅行に出かけるなど様々な予定を立てている方もいるだろう。

しかし、そういった予定ばかり立てすぎてしまうと疲れてしまう場合も多々ある。そんな時は家でまったり読書をして過ごすのはいかがだろう。 近年、様々なビジネス書が出る一方でマンガも新たなジャンルやビジネスに応用できるストーリーまで様々なマンガが販売されている。

今回は、マンガ情報サービス「アル」を運営する、アル株式会社代表取締役『けんすう』こと古川健介氏に、夏休みに読みたいマンガを「仕事欲が高まる」「視野が広がる」「リフレッシュできる」「休みが取りづらい人でも楽しめる」という4つのシーンに分け、12冊ご紹介いただいた。

この夏はビジネス書だけではなく、マンガを通してラフに自分のインプットを増やしてみてはいかがだろうか。

古川健介
アル株式会社 代表取締役
1981年生まれ。浪人時代に受験情報掲示板「ミルクカフェ」を開設。その後、学生時代には掲示板システム「したらばJBBS」を運用するメディアクリップの社長に就任。同システムは後にライブドア社に売却。新卒でリクルートに入社し、同社在職中の2007年にロケットスタート社を起業し、2009年にはnananpiをローンチする。翌2015年にKDDI傘下に設立されたSupeship社の取締役に就任。2019年1月にローンチしたマンガ情報共有サービス「アル」を手がける。

休み明けでも仕事欲が高まるマンガ3選

「休みボケ」をしてしまい、休み明けは仕事に集中できない、モチベーションが上がらないという経験をしたことがある人は多いだろう。特に夏は暑く、体力・気力ともになくなりやすい時期。そこで、長期休みがあっても仕事欲をなくさないために、モチベーションを高められるマンガを3つ、古川氏に伺った。

「それぞれ、現場の人、リーダーの人、中間管理職の人に向けて選んでみました。天才だったり凡人だったり、明るかったり暗かったりいろいろな人物が出てきますが、どれか自分に当てはまるキャラを見つけて、楽しんでもらえると嬉しいです。」

●左ききのエレン

左ききのエレン/アル

「天才になれなかったすべての人へーー。」そんなキャッチコピーから始まる『左ききのエレン』は、いつか有名になりたいと必死に働く広告代理店の駆け出しデザイナーと、主人公をとりまくクリエイター達の群像劇だ。物語には天才と凡人が登場。「頑張ってもあの人のようにできない。自分には才能がない…」そんな凡人の苦悩や、「才能があるから…」と言われ期待される天才の苦悩が描かれている。

この作品に対して、古川健介氏は
「特に、クリエイターの周りで働いている現場の人におすすめです」と語る。

「仕事をしている人のうち、特出して才能がある人はほんの一握りしかいません。ほとんどは普通の人です。そんな普通の人たちがどのように成果を出しているのか、仕事をしているのかが非常に良く表現されている。天才に視点が集まりがちですが、その周囲の人の存在意義を感じさせてくれる話です。

天才がいるなかで必死で努力をして働く人たちの姿は、もっと仕事をがんばろうと思わせてくれます。」

広告代理店のデザイナーが主人公なことから、デザイン業界の人からは“刺さる” “リアルすぎる”というクチコミもあるほどだ。また、働くとは何か、という広いテーマでもあるため、クリエイティブな職業の人はもちろん、他の職業の人にも読んでもらいたい。また、『左ききのエレン』は原作とリメイク版のふたつが販売されている。

「リメイク版は、作画している人がマンガのプロではなくアート系出身の人なんです。だから、アート出身の人がマンガを描いて、商業的なものが描けるように成長していくっていうのも含めて楽しめます。一方で、原作版は絵から伝わる熱量がすごい。力が入っている作品です。」

リメイク・原作ともに、別物だといえるほど違いがあるとのこと。ふたつを読み比べるのもおすすめだ。

●レイリ

レイリ/アル

2冊目に古川氏が挙げたのは『レイリ』。『寄生獣』の作者である岩明均氏が14年の構想期間を費やして原作を作った、武田家滅亡までを描いたマンガだ。

「このマンガで注目してほしいのが、天才だと言われている武田信玄の孫とその父親です。武田信玄は死ぬときに、天才である孫に後を継がせたいと思うのですが、武田信玄の息子はそれが面白くない。そして、孫はまだ子どもだったので、無能な息子が実権を握ってしまいます。

武田家の話なので当然、滅亡することを読者は知っています。滅亡に向かって徐々に追い詰められていく状態で、リーダーとして、凡人と天才がどう振舞っていくのか。凡人の父親と天才の息子がどう戦っていくのか。そこが見どころです。

このマンガは、ビジネスマン……特にリーダーにおすすめです。『リーダーとしてどうするべきか』という考えは、共感できたり、仕事に通じたりする部分があると思います。」

天才でも、実権や権力がないと最善の手は打てない。凡才でも、リーダーとして最善を尽くさないといけない。そのあたりのジレンマがありつつ、乱世でなんとか家を守ろうとする姿が印象的だ。リーダー経験がある人はぜひ、「自分ならどうするか」など、自身と重ねあわせて読んでもらいたい。6巻完結のため読みやすいのもポイントだ。

●七都市物語

七都市物語/アル

『七都市物語』は、『アルスラーン戦記』や『銀英伝』の作者である田中芳樹の小説が原作。舞台は未来。地球に住めなくなり、一時宇宙に避難していた人々が地球へ戻り新しい国家を形成した世界の物語だ。

「『七都市物語』は軍人が主人公で、偉い人の思惑とか、国家の意図とか、いろんな利害関係を調整しながら成果を出して行く話です。ストーリーの内容が仕事に近いため、仕事欲が高まるかなと思い選びました。

このマンガは、特に中間管理職の人におすすめしたいですね。上司の思惑や人間関係など、いろんなしがらみがあるなかで問題を解決していく話なので、立場の似ている職種の人は感情移入をしやすいと思います。」

色々なしがらみのなか、ベストな着地点を模索するのは体力も気力も必要になる。ビジネスシーンでそういった問題に立ち向かっていると、疲弊してモチベーションが低下する……ということもあるだろう。そういった場合は『七都市物語』を読んで、仕事欲を高めてほしい。

休みの間でも視野を広げるマンガ3選

「夏休みはのんびり過ごしたい。けれど、ただぐうたらするだけでは時間がもったいない……」という場合は、物語を楽しみながら、考え方や視野が広がったり、知識が身に付いたりするマンガはいかがだろう。

●フェルマーの料理

フェルマーの料理/アル

『フェルマーの料理』は、数学者を目指し挫折した少年が主人公の物語。なぜ甘く感じるのか、なぜ美味しく感じるのかなどを数学を用いてロジカルに解説していく、一風変わった数学×料理マンガだ。

「料理って感覚とか味覚とか、センスが重要だと思われていますが、実はロジックを突き詰めて作られています。実は“なぜ美味しいのか”は、データやロジックで説明できるらしいんです。

料理や芸術、仕事もそうですが、ものごとって「センス」で決まることが多いように感じますよね。センスがないからと諦めてしまうこともあります。しかし実は、全部ロジカルに説明できるんだって考えると、視野が広がりませんか? 

説明できないような感覚的なものでも、実は理由がある。センスがないなら、ロジックや知識など、別のもので補えば良い。『フェルマーの料理』は、そんなことを教えてくれるマンガです」

『フェルマーの料理』は、ストーリーを楽しみつつ、視野を広げ、料理に関する豆知識も得られるマンガだ。

●戦国小町苦労譚

戦国小町苦労譚/アル

『戦国小町苦労譚(せんごくこまちくろうたん)』は、農業に詳しい女子高生がタイムスリップして、織田信長に仕えるという物語。農業が発達していない戦国時代に飛ばされた女子高生が、現代の知識を駆使して農業の発展に貢献していく。

「タイムスリップものはたくさんありますが、『戦国小町苦労譚』はただの異世界モノではありません。現代の農業知識がふんだんに描かれていて、読んでいると農業の知識に詳しくなれるマンガです。

このマンガを読んでいると、「知識がある・なしでこんなに生産性が変わるのか」と驚きます。努力とか関係なく、適切な知識と手法を学ぶだけで生産性が全然違う。実際、現代で品種改良した種子だけを持っていっても、そこまで変わらないらしいんですが、そのあたりはマンガなので・・・。

知識が重要なのは農業だけではなく、ビジネスや人生全般に言えることですよね。だから、『戦国小町苦労譚』を読んで、農業の知識とともに知識の大切さも感じてもらえればと思います。

現代の発展した農業と、昔の農業の対比も面白いですよ」

『戦国小町苦労譚』では農業知識が豊富な女子高生という変わった少女が主人公。しかし、ストーリーはご都合主義ではなく、コツコツ苦労を積み重ねていく物語が中心となっている。知識や視野が広がるだけでなく、読み応えのある作品であることもこのマンガの魅力だ。

●サイコろまんちか

サイコろまんちか/アル

『サイコろまんちか』は心理学×学園ギャグコメディ。恋愛、勉強、友人関係など、校内の生徒から持ち込まれる悩みを、マッド・サイコロジストの変人主人公が解決していく物語だ。

「心理学を紹介しつつ毎回話が進むので、ストーリーを楽しみながら心理学も学べるマンガです。いろいろと有名な心理学のテーマを紹介しているので面白いと思います。

ビジネスで心理学を駆使して交渉を有利にしている人って結構いるんですよ。でも心理学を勉強していないと気付けない。心理学を学んでいないってめちゃくちゃ損しているので、知っておいたほうが良いと思います。

心理学を知っているとビジネスの視野が広がります。その足がかりとして、『サイコろまんちか』はおすすめです」

ビジネスにおいて心理学は重要だと感じつつ、行動に移せない人も多いのではないだろうか。そこで、手始めにマンガで心理学に触れてみるのもおすすめだ。

仕事を忘れてリフレッシュできるマンガ3選

せっかくの休み。仕事を忘れて気分転換をしたいという人も多いだろう。そこで、仕事を忘れてリフレッシュできるマンガを3つご紹介いただいた。

●ギャルと恐竜

ギャルと恐竜/アル

ギャルの日常になぜか恐竜が出現し、ルームシェアを始める物語。古川氏は、『ギャルと恐竜』について「人気急上昇中のすごく面白いマンガです」と語る。

「なにげない日常が舞台なのですが、そこになぜか恐竜がいます。同棲している子はギャルなので、“まあいっか”みたいなノリで、恐竜がいても気にせず生活している。なんの疑問も持たれず、恐竜が日常に溶け込んでいるのがすごくシュールな話です。(笑)

ストーリーは大きな事件が起こることもなく、淡々と進みます。しかし、恐竜がいることで一気に非日常感満載のコメディになっているのが面白いですね。くすっと笑えて癒される、ほのぼのできるマンガです」

『ギャルと恐竜』は、恐竜と同棲するという、現実だったらありえない日常をほのぼのと描いている作品だ。絵のテイストもゆるく、見ているだけで癒される。シンプルに癒されたいという人は、ぜひ一度読んでみてはいかがだろう。

●ぐらんぶる

ぐらんぶる/アル

大学進学とともに海沿いの街で一人暮らしを始めた主人公の青春物語。累計200万部を突破した大ヒットコミックであり、アニメ化もされた話題作だ。

「『ぐらんぶる』は『バカとテストと召喚獣』という小説の筆者が書いた話が原作の、ダイビングサークルの青春マンガです。楽しく青春するだけのマンガなので肩の力を抜いて楽しめます。

青春物語というと、恋愛や友情などキラキラしたものをイメージするかもしれませんが、『ぐらんぶる』では、酒を飲んだり、バカ騒ぎをしたりとギャグに振り切っているシーンが多いのも良いですね」

笑って楽しめるギャグマンガは、リフレッシュしたいときに最適な一冊。「休みの時まで複雑な心理戦や人間関係を見たくない」という人におすすめだ。

●その着せ替え人形は恋をする

その着せ替え人形は恋をする/アル

舞台は高校。ひな人形職人を目指している、人形が大好きで友達が少ない主人公と、いつも人の和の中心にいる、実はコスプレが好きなギャル系美少女がメインとなり、普段は交わらない二人がコスプレの衣装づくりで協力したり、恋愛したりしていく物語だ。

「非常にストレスなく読めて、心温まる話です。恋愛マンガとして内容はスタンダードなんですが、内容がドロドロしていないのも良いですね。

人形作りが大好きとか、エロゲ好きとかは大声では言いにくい趣味かもしれません。でもこのマンガでは、どんな趣味でも肯定してくれるし、好きといっても恥ずかしくないってところが良いです。好きなものを好きって言っていいんだって思わせてくれます」

ドロドロしていない恋愛と趣味にまい進する主人公の物語に癒されつつ、のんびり休みを過ごしてはいかがだろう。

仕事が忙しい人でもワクワクできるマンガ3選

夏休みといっても、仕事が忙しくて長期休みを取れない人もいる。 そこで、普段の日常をいつもとは違う視点で満喫できる、新たな世界が広がる様なマンガを3つ紹介していただいた。

●よつばと

よつばと!/アル

『よつばと』はちょっと変わった少女とその周囲の人達の日常がメインの物語だ。

「休みが取りにくい人も楽めるマンガなら、『よつばと』がいいかなと思いました。夏休みは特別なことをしたいと思いがちですが、実は日常そのものが面白いと思わせてくれるマンガです。

休みがとりにくくて、特別なことができなくても、普段の日常が十分面白い。そんな思いを『よつばと』を読んで感じてもらえたらと思います」

休みだと特別なことをしたくなるが、普段の暮らしでも十分楽しめる。そんな視野を広げてくれるマンガだ。

●映画大好きポンポさん

映画大好きポンポさん/アル

映画の都ニャリウッドで日夜映画製作に励む、敏腕映画プロデューサーポンポさんが主人公。映画製作現場の話を描いている。

「pixivで掲載されて話題になったマンガです。好きなものを突き詰めて行き、評価してもらえる話なので、とても爽快感があります。

外に行けなくても、映画で十分楽しめるし、旅した気持ちにもなれる。「映画って良いよね」って思わせてくれるマンガです」

『映画大好きポンポさん』を読めば、映画が見たくなるとのこと。休み中は涼しい屋内でマンガを読んで、映画を楽しむのもおすすめだ。

●めしにしましょう

めしにしましょう/アル

マンガ家とマンガ家のアシスタントが料理を作って食べる話がメイン。描かれている料理はすべて自分で作って食べた経験があるとのことで、「限りなくノンフィクションに近いフィクションマンガ」となっている。

「このマンガは、マンガの制作に行き詰まったらご飯を食べるという、ただそれだけの話なんですがすごく面白いんです。

作者の小林銅蟲(こばやしどうむ)先生は料理に詳しい方で、自分でメニュー考えて、作った料理をマンガに載せています。だから、掲載している料理はほぼすべて実体験らしいです。

忙しいなかで、外に出ないマンガ家さんが、いかにして楽しくおいしい料理を作るのかっていうのが面白いです。しかも全部実体験なので、マネしたい料理はマネできるのも良いですね」

料理マンガだが、ギャグ要素もふんだんに散りばめられている。料理も一切れがスマホ並みの分厚さがあるカツ丼や、風呂場を使って低温調理したローストビーフなど、驚く料理ばかりだ。「一度の料理でここまで楽しめるのか」と、マンガ家の不思議な食生活を眺めながら、料理を楽しんでもらいたい。

近年では、書店に行かなくてもwebサービスや電子版で気軽に漫画を楽しめる時代となった。なかなか仕事で行く時間がないという方もぜひ、休みの期間中に漫画を読んで新たな刺激、自分の世界を広げてみてはいかがだろう。


マンガ情報サービス「アル」とは
アル株式会社が運営する、次に読みたいマンガを探せるマンガ情報サービス。新刊通知やマンガのコマを投稿する機能、レビュー機能がある。、数万件以上のマンガのデータベースを元に、作品のファンが見どころを投稿したり、おすすめ作品を投稿することにより様々な漫画を探すことができるサービス。

取材・文:成田千草
写真:西村克也

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