仕事や生活スタイル等において多様化が進んでいる昨今、特に重要視されているのがワークライフバランスの実現だ。けれども、日々仕事に追われ、なかなか実現が難しいという人も多いだろう。そのため、仕事の溜め癖をつけず、業務を効率的に進めて生産性をあげることが先決だ。
では、具体的にどのようなことに気をつければいいのだろうか?
そのメソッドについて、時間管理アドバイザーやセミナー講師などとして活躍している石川和男氏に伺ってみた。
1.常に100点を出そうとしない
若手の新入社員の場合、仕事におけるプライオリティを判断できず、どの業務も常に完璧を目指してしまうということも少なくないだろう。
けれども、仕事の生産性をあげるためには、力の出しどころを選別することも重要だと石川氏は述べる。例えば、クライアントに出す社外用の企画書は100点相当のものを要するかもしれないが、社内で共有するための簡易的な書類なら、たとえ7割、8割程度の出来であったとしても内容が把握できれば良いという場合もある。
重要度を選別できないうちは上司に指示を仰ぐ必要があるが、徐々に自身で判断する力を身に付けていくことで、業務をスリム化し、生産性の向上につなげることが出来るのである。
2.タスクに期限を決める
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」。このように唱えたのは、イギリスの政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンである。要は、「10日間で終わらせて欲しい」という業務があった場合、実際は10日もかからないのに、人は与えられた期限いっぱいをかけてしまいがちだということだ。
そのため、生産性を高めるためには、上司から言われた期限とは別に、自分なりのデッドラインを決めておくことも方法の一つだと、石川氏は語る。いつもより15分早く終わらせよう、1日前倒しで提出しようなど、あえて自分に多少の負荷をかけることによって集中力が高まり、効率化に導くことが出来るのだそうだ。
3.タスクを可視化&細分化する
業務を可視化することも、作業効率を上げるための基本である。やり方はさまざまだが、石川氏が提唱するのは、毎日のタスクをノートに書き出し、終わったものに赤丸をつけていき、終わらなかったものは青丸をつけ、翌日のページに追加するという方法だ(きずな出版『残業ゼロのノート術』参照)。こうすることによって、業務の見通しが立ちやすくなり、無駄なく仕事を進めることが出来るのである。
さらに石川氏によると、難易度が高いものほど、業務を細分化することが重要だという。例えば「決算書を作成する」だけだと、1件あたりの業務の負荷が大きいため、なかなか着手できず先延ばししてしまうこともあるだろう。その場合、「去年の決算書をコピー」「現金のチェック」「受取手形をチェック」という風に、中身をさらに細分化したうえで可視化すれば、難易度が高い業務も取り組みやすくなるとのこと。細分化しづらい場合は、時間で区切ってもいいそうだ。
4.優先度の高い仕事は午前中に済ませる
さらに、仕事は午前中のほうがより高いパフォーマンスを発揮しやすいと、石川氏は語る。厚生労働省が作成した『健康づくりのための睡眠指針』によると、健康な成人の場合、起床後12~13時間が経過した時点で集中力が落ち始め、15時間以上になると酒気帯び運転と同等程度まで作業効率が低下するという。
そのため、午前中に難易度や優先度が高い仕事を済ませておくことで、非効率を防ぐことができるのだそうだ。
仕事を溜めない癖づけは、日々の心がけ次第で身に付くもの。マインドを転換し、仕事に追われる立場から仕事を追う立場にシフトしていくことが、最適な働き方を整える一歩となるのかもしれない。
- 石川和男
- 1968年、北海道出身。建設会社の経理部で働く傍ら、30代から勉強を始め、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などさまざまな資格試験に合格。現在は税理士や大学・専門学校講師、建設会社総務経理担当部長を務める他、ビジネス書の執筆やセミナーや講演なども行っている。著書に『残業しないチームと残業だらけチームの習慣』『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』ほか、YouTubeでも活動をしている。『時間管理の専門家 石川和男のビジネスパーソンチャンネル』