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様々な大人の“はたらく”価値観に触れ、自分らしい仕事や働き方とは何か?のヒントを探る「はたらく大人図鑑」シリーズ。
今回は、大手人材サービス会社に10年勤め、以前からの夢だった“海外で働く”を実現させた芳賀啓介さん。発展途上国であったミャンマーに目をつけ、新しいビジネスをどんどん実現し成功を収めています。海外で起業した芳賀さんのマインドと成功のカギをお伺いしました。
「3年で辞めてもOK」と言ってくれた1社目で、10年間のサラリーマン生活
——芳賀さんが「海外で暮らしたい」と思ったきっかけは何だったんでしょうか?
芳:大学生時代にアルバイトをたくさんしていてお金がかなり貯まったので、1年間大学を休学して旅に出たんです。ヨーロッパやアジアを中心に、アフリカなども回りました。
その時に強く感じたのは、「旅行も楽しいけど、“住む”と“旅”は違う」ということ。いつか海外で何か仕事をしたい、海外で暮らしたい、と思った原体験ですね。
——その頃から海外で起業するというお気持ちを持っていらっしゃったんですか?
芳:実家がスポーツ用品店を経営していたこともあり、「いつか独立したいな」という漠然とした想いは持っていましたが、その時の僕は、起業するということが具体的には想像がついていませんでしたし、そんな実力は持ち合わせていませんでした。
それよりも、「海外で暮らす」ということの方が優先順位が高かったのです。楽しそうな方を選ぶくせがあったのかな(笑)
——大学卒業後は、まずは人材サービスを手掛けるインテリジェンス(現パーソルキャリア)に就職されているんですよね。
芳:就活はほとんどしていなくて、どこかで3年働いたら辞めて、海外に行くつもりだったんです。
そんな中、インテリジェンスの面接を受けた際に、「3年で辞めてもらっても結構です。あなたの成長が会社の成長になる。うちの会社を通じてどんどん羽ばたいていただきたい」と言われて、衝撃を受けて入社を決めました。
——そこから約10年間、営業として活躍されるんですよね。
芳:本当に良い会社で仕事も面白く、海外で働きたいという憧れすら忘れてしまうくらいその時の仕事に没頭していました。気づいたら10年経過していたっていう感じですが、それでも後半の5年くらいはどこかモヤモヤしていたように思います。
——具体的に海外で働くことを視野に入れ始めたのは何がきっかけだったんですか?
芳:いろいろなことが重なったのですが最終的なきっかけは、友達がFacebookでカンボジアの求人情報をシェアしていたのを見たことです。
その時は海外で働くことを現実的には考えられていなかったのですが、さくっとエントリーしたらどんどん話が進んで、内定をいただいて。
そこから会社に「辞めます」と話をしたら、「辞めるのはいいけど、海外で働くのなら、もっと別の良い所があるんじゃないか、ちゃんと他も探したのか」って自分以上に真剣に考えてくれたんです。めちゃくちゃ良い会社ですよね(笑)
——入社時の面接の通り、次のステップに向かう芳賀さんを応援してくれたんですね。
芳:そうですね。上司に相談してから、たった30分で役員まで退職のオッケーを出してくれたんです。「そうか、わかった。前から海外で挑戦したいと言ってたしな、頑張れよ。でももっと真剣に探せ」って。
当時、管理職だったので、「そんなに簡単には辞められないだろうな」と思ってたんですが、意外とすんなりといき、逆に寂しさも感じましたし、正直不安にもなりました(笑)
——企業で働いた経験が、後に活かされていると思われることはありますか?
芳:社会に対して自分がどう関わっていきたいか、というような働くスタンスを教えてもらったと思います。ロジカルに物事を考えられる思考回路も、会社勤めの経験があったからこそ。あとはもちろんサラリーマン時代の人脈でしょうか。
——「海外で働く」といったご決断に関して、ご家族の反応はいかがでしたか?
芳:「カンボジアで働こうと思うんだ」って奥さんに話したら、「カンボジアのどこ?首都?じゃあ大丈夫でしょ」って(笑)
当時、東日本大震災があったり、彼女の母が病気で亡くなったり、と辛いことが続いたこともあって、彼女自身、「人生一度きりなんだから、やりたいことやらなきゃね」という思いがあったんだと思います。
ついに夢だった「海外で暮らす」を実現、そして起業
——最終的にミャンマーを選ばれたのはなぜだったんでしょうか?
芳:「海外で働く」というのは、誰と何をやるかも大事なのですが、国の魅力や今後のポテンシャルも大事なんです。
ミャンマーはアジアの発展途上国の中でも、他に比べて情報がまったくなかったのですが、その点がピンときた、と言いますか(笑)
国としてちょうど民主化が始まったタイミングだったので、これから開発の余地もあるし、人口も多い。そして何より自分とのフィーリングが合ったように感じたのが決め手でしたね。
——それでミャンマーに渡られたんですね。
芳:はい。改めていろいろ探し、某飲食企業の店舗を海外展開する会社に決めました。が、直前でその話がなくなってしまったので、別の事業内容に携わるということで、ミャンマーに渡りました。2013年のことになります。
——ミャンマーに渡って、そこから独立されるというわけですね。
芳:当時所属していた会社にも僕にもノウハウがなかった運転手付きレンタカーサービスというものを立ち上げたのですが、とりあえず遮二無二いろんな方のお話しをお伺いしながらやってみたという感じでした。お客さんのリアルな声を聞いているうちに、これは別のニーズがあるなと感じたので独立、起業したんです。
——人脈もさほど多くない外国で事業を立ち上げるというのは、大変なご苦労があったのではないでしょうか。
芳:そうですね、日本で購入したマンションのローンも残った状態、以前の会社から年収も半分くらいになっての挑戦になりました。家族も日本に残して単身ミャンマーで、毎日飛び込み営業ばかりしていましたよ。
明日がどうなるかわからないという怖さがあったので毎日必死でした。
——どれくらいで会社として軌道に乗り始めたんでしょうか?
芳:3カ月くらいですかね。日系企業が多かったので皆さん飛び込み営業をしに来た僕にとても優しくて。色々教えてくれるんですよ。それには大変助けられました。タイミングも良かったのだと思います。
——実際に住まれてみてミャンマーはいかがでしたか?
芳:実際に行ってみると、ミャンマーは僕の予想を超える途上国でした。
最初に住んだ家は、壁に水をかけたらアリがうわーっと出てくるような所でしたし、ヤモリ、隙間風は当たり前。窓もガタガタなので雨が降ると壁から雨漏りがしてくるんですよ。
10カ月が経過した頃、家族をミャンマーに呼び寄せて一緒に暮らし始めたんですが、初めて家に来た奥さんが「この家は綺麗な外って感じだね~」って言っていましたから(笑)
社会や周囲に合わせずに、自分の生き方を追求する
——芳賀さんはすごく前向きな方に見えるんですが、悩むことってあったんでしょうか?
芳:学生時代はやたらと前向きで、あんまり深く考えない浅はかな学生だったので(笑)、やれば何でもできると思っていたんですね。
ところが社会人になって新人研修を受けた時、周りのみんながあまりに優秀で、実力の差に愕然としたことがありました。「うわ、俺、やばいぞ」って、帰りのバスで人知れず涙を流したこともありました(笑)
——その悔しさやモヤモヤってどういう風に解消していかれたんですか?
芳:もうそれはね、努力しかないです。ロジカルシンキングの本を読み漁るとか。悔しいからとにかくあいつらに追い付こう、みたいな気持ちだけですね。
悔しいとか言いながらもやっぱり、基本的に自分にできないことはないって考えが頭にあったのかもしれませんが(笑)
——芳賀さんが、“はたらく”を楽しむために必要なことはなんだと思いますか?
芳:常に心がけているのは、みんなが楽しく、気持ちよく働けるように、相手を尊重することです。自分のやりたいことだけを追求するのではなく、ミャンマーの発展も視野に入れて働いてくれる仲間たちとより良い会社作りをしていきたいですね。あとは挑戦し続け、成長し続けることでしょうか。
——“はたらく”を楽しもうとしている方へのメッセージをお願いします。
芳:やりたいことがわからないなんて当たり前、全然恥ずかしいことじゃありません。
それよりも、自分の中から出てくるシンプルな気持ち、例えば「旅行がしたい」「英語を喋りたい」「モノづくりがしたい」とか、そういう心の声に素直に反応してみてはいかがでしょうか。
そして、それを実際に口に出してみること。周りに話していれば、不思議といつか叶ったり、その道に近づけたりするんですよね。
——口に出すことで自分をその気にさせていく、ということですね。
芳:あと、周りに合わせようと思うから辛くなっちゃう時ってありますよね。
合わせなくたっていいんです。社会の規定を気にせずに、自分がしたいように、自分の生き方を突き詰めてください。
みんながそうやって働いていたら、社会はもっとキラキラする気がします。
良いエネルギーをそれぞれが放出していきましょう!
- 芳賀 啓介さん(はが けいすけ)
- Growth.Myanmar Co.,Ltd Founder/Managing Director
大学卒業後、人材サービスの営業として約10年間勤務し退社。2014年、ミャンマーでハイヤーサービスやフリーペーパー事業を手掛ける会社「Growth.Myanmar Co.,Ltd 」 (http://www.growth.bz/)を起業。現在では、アパレル事業や通信関連やITシステムの代理店事業、加えてインターナショナル幼稚園を運営する教育事業、飲食店事業も手掛けている。長期海外インターン生も随時募集中。
転載元:CAMP
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