東京商工リサーチは2019年8月8日、「AI・ドローン・自動運転」関連事業者の新設法人調査結果を発表した。
主なトピックは3つ。
- 2018年(1-12月)に全国で新しく設立された「AI」を記載した企業は211社(同52.8%増)で、前年比1.5倍増と急増した。
- 「ドローン」を記載した法人は195社(同9.7%減)、「自動運転」を記載した法人は7社(同250.0%増)だった。
- 「自動運転」関連事業者は少額資本金が少ないことがわかった。
18年新設の「AI・ドローン・自動運転」事業者は前年比15.4%増の410社
2018年に全国で新設された「AI・ドローン・自動運転」関連事業者は、合計410社(重複除く、前年比15.4%増)だった。2014年の33社から12.4倍と大幅に増えた。
2018年の全国の新設法人は12万8,610社(業種問わず、前年比2.7%減)で、9年ぶりに前年を下回ったが、「AI」「ドローン」「自動運転」関連事業は、将来有望だけに新規参入が相次いでいる。
「AI」は、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」で掲げたSociety 5.0の実現の鍵として、官民あげて開発・発展に取り組んでいる。
政府は、2015年4月24日に「小型無人機に関する関係府省庁連絡会議」を立ち上げ、ルール作りに着手。同年12月には「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を設置し、利活用の推進に取り組んでいる。
一方、「自動運転」は、2014年6月に政府が策定した「官民ITS(高度道路交通システム)構想・ロードマップ」に基づき、官民一体となり研究開発と環境整備を進めている。
こうしたなか、「ドローン」関連事業者の新設法人は、これまでの増勢から一転、2018年は195社(前年比9.7%減)へ減少した。「AI」や「自動運転」は、官民が一体となって発展・普及に取り組んでいるのに対し、「ドローン」は2015年4月の落下事件で安全面を重視したルール作りが優先された。
その後、ようやく利活用の議論が活発化し始めているが、ビジネスとしての可能性を探る動きは模索の中にあるようだと同社では見ている。
資本金1000万円未満が約9割。過小資本が特徴に
また、「AI」「ドローン」は、2018年の新設法人のうち、資本金1000万円未満が約9割を占め、過小資本が特徴になっている。まだ市場は黎明期に入ったばかりで、ブームに乗じた参入組が多いことがわかる。ただ、世界的なニーズ拡大を見越し、事業計画の精査などで成長と持続可能性のある企業を見極め、出資や成長資金の融資などの支援が必要になると同社ではみている。
「AI・ドローン・自動運転」を含め、成長が期待される分野への新規参入の企業は、実績が乏しく過度の期待は難しい。事業再生や倒産法に詳しい弁護士は、過熱するAI市場について、「(新設法人の中には)売上が立たずエクイティ(出資)で資金を回す会社もある。こうした会社の債務整理の相談が最近増えている」と、AIバブル気味の状況に警鐘を鳴らしている。
新設法人が急増する「AI・ドローン・自動運転」関連事業だが、拡大が期待される市場でいかに新規参入企業がビジネスとして定着できるか、ブーム先行だけにまだ不透明だ。時代が求める成長ビジネスに発展していくには、資金力より将来を見据えた事業計画の実現度が問われていると東京商工リサーチでは分析している。
※調査概要
調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象345万社)から、2014年~2018年に新しく設立された法人データのうち、商業登記簿の事業目的の第1項目に「AI」、「ドローン」、「自動運転」に関連するキーワードを含む企業を抽出し、分析した。
※「AI」は「AI、人工知能、機械学習、ディープラーニング、ビッグデータ、深層学習」、「ドローン」は「ドローン、無人航空機」、「自動運転」は「自動運転、コネクテッドカー、MaaS、CASE」を関連キーワードとした。
<参照元>
「東京商工リサーチ、「AI・ドローン・自動運転」関連事業者の新設法人調査結果を発表」
東京商工リサーチ