総合マーケティングビジネスの富士経済は、変革が期待される農業において、スマート化につながるモニタリング・センシング・ロボット・AI・IoTなどの各種先進テクノロジーを用いた生産施設・プラントや装置/システム/サービスの関連市場を調査、2019年7月23日にその結果を発表した。

主なトピックは以下の3つ。

  • 2030年のスマート農業関連市場は1074億円、2018年比で53.9%増の予測。農業用ドローンや完全人工光型植物工場などが伸び市場拡大が見込まれる
  • 今後、農業用ドローン市場が注目される。2030年には2018年の5.4倍の65億円と予測。規制緩和や安全面での課題解消などにより普及が進み市場拡大が見込まれる
  • 今後、完全人工光型植物工場が注目される。2030年には2018年比38.1%増の163億円と予測

スマート農業関連市場は2030年には1,047億円市場に拡大

スマート農業関連市場は、完全人工光型植物工場や植物育成用光源、栽培環境モニタリングシステム、農業用ロボットやドローンなどが、好調に伸びている。

スマート水産業関連市場は、陸上養殖システムや沖合養殖システム、養殖・漁業環境モニタリングシステムが伸びている。陸上養殖システムは、これまで地域活性化に向けた小規模な取り組みが中心だったが、近年、大手水産会社などの参入によって養殖システムの大規模化が進んでいる。2020年頃からは商用プラントの本格稼働が予定されており、今後も伸びが期待される。

また現在、実証実験が進められている沖合養殖システムも、今後高い伸びが期待されるという。沖合養殖システムは、これまでは波浪や潮流の影響で養殖できなかった沖合に生簀を設置する養殖方法で、新海域での養殖が可能になるといったメリットから注目度が高まっているという。

沖合養殖システムは、大規模施設を前提としており、1件当たり数億円規模になるため沖合養殖事業者の参入が本格化すれば急激な伸びが期待される。養殖・漁業モニタリングシステムは、漁業者の作業効率化、それに伴い燃料費や人件費などのコスト削減にもつながるとして漁協などで実証実験や製品化が進んでいる。

また、高齢化が進む中で若手漁業者を増やすためにも経験の少なさをサポートするこのシステムは注目を集めており、今後の伸びが期待されるとのことだ。

スマート畜産業関連市場は、閉鎖型畜舎システムや搾乳ロボット、家畜モニタリングシステムなどが伸びている。閉鎖型畜舎システムは、牛舎向けのシステムが注目されており、乳牛を中心に採用が増加している。また、搾乳量の増加や受胎率の向上といった効果が期待されている。

ロボットは、畜産酪農家の収益力向上に向けた畜産クラスター事業による補助金を受け、伸びている。飼養戸数が減少している一方で、一戸当たりの飼養頭数や飼養羽数は増加しており、大規模畜舎における作業の省力化・省人化に向けて需要が増加している。

家畜モニタリングシステムは、酪農家・畜産農家の負担や農場経営のリスクを軽減することが可能となるほか、外国人実習生や経験の浅い酪農家・畜産農家をサポートし、育成にもつながるシステムとして注目されており、2030年のスマート農業関連市場は1074億円、2018年比で53.9%増と予測されているそうだ。

農業用ドローンと完全人工光型植物工場が注目

また、この調査では注目市場として「農業用ドローン/農業用ドローン活用サービス」と「完全人工光型植物工場」を挙げている。

同調査では、農業用ドローン市場は、規制緩和や安全面での課題解消などにより普及が進み市場拡大が見込まれるという点で、2030年には2018年の5.4倍の65億円と予測。農業用ドローン活用サービスは、2030年には2018年の25.0倍もの50億円になると予測している。

さらには農水省が策定する安全性確保ガイドラインの浸透による安全面での課題解消や、メーカー間の競争の激化による低価格化が進むことで、さらなる普及の加速が期待され、市場は拡大するとみられるという。

また、農業用ドローン活用サービス市場は、農薬・肥料散布代行サービスが中心である。今後ドローンによる農薬・肥料散布の有用性への評価が高まれば、ドローンを所有するのではなく低コストでオペレーションの負担を軽減しつつも、農業用ドローンを活用できる農薬・肥料散布代行サービスの利用も増加するとみられるという。

完全人工光型植物工場に関しては、同調査において2030年には2018年比38.1%増の163億円に拡大すると予測されている。安定生産が可能な植物工場に注目が集まり特に、安定した調達を必要とする中食や外食などの業務・加工事業者では、植物工場産野菜を調達先の一つとして選択することが増えており、市場の拡大に寄与しているという。

同市場は、これまで販売先のメインであった小売り向けが飽和状態にある中で、栽培事業者はレタスの大玉化など、業務・加工向けのニーズに合わせた栽培技術の確立を進めているほか、自家消費目的で自ら生産事業に取り組む中食・外食事業者も増えてきており、今後の市場の活性化が期待されるとしている。


※調査概要
・調査方法:富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
・調査期間:2019年1月~3月

<参照元>
注目を集める“スマート農業”関連の市場を調査
富士経済