栗田工業は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下・JAXA)に、国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟で使用する「水再生技術実証システム」のフライト品を納入すると発表した。

同システムは2019年内に打ち上げられ、「きぼう」日本実験棟にて実証試験が開始される予定だという。

同社は、2011年に将来型水再生システムの検討に関する共同研究契約をJAXAと締結し、国際宇宙ステーション(以下・ISS)内部で発生する水分(尿)を回収して、飲用可能なレベルの水質まで再生処理する「水再生システム」の要素技術および処理方式の研究を推進。

2015年10月にはJAXAより本システムの製作を受注し、その後はJAXAとともにISS使用条件下での性能安定試験や耐久性の検証を行い、装置仕様を確立したとのことだ。

同社によると、JAXAは将来の有人宇宙探査計画において、独自の環境制御・生命維持システム(ECLSS)の構築を目指しているという。

ECLSSにおいては、長期間かつ安定的に利用できる水再生システムが基幹技術となるため、同社は「きぼう」での実証試験結果を踏まえ、JAXAとの共同研究を継続する予定としている。

「水再生技術実証システム」概要

「水再生技術実証システム」は、イオン交換、電気分解、電気透析の各ユニットからなる水処理装置と制御装置で構成。

処理方式は、イオン交換により尿に含まれるカルシウムやマグネシウム成分を除去したあと、有機物を電気分解し、電気透析によりイオンを取り除くことで、尿を飲料水レベルの水質まで浄化するという。

電気分解は、高温高圧で行ない、難分解性の有機物も完全に分解することが可能。

同システムは、高いレベルで水を再生(再生率85%以上)でき、イオン交換樹脂をシステム内で再生する処理方式のため、消耗品の交換が不要で、メンテナンスフリーを可能にするという。

現在、ISSで使用されている水再生システムと比較し、装置の重量・サイズは4分の1、消費電力は約2分の1を実現。

同グループは、中期経営計画「MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)」において、「水資源問題の解決」「持続可能なエネルギー利用の実現」「廃棄物の削減」「産業の生産技術進歩」を重点的に取り組むべき社会課題と捉え、社会との共通価値の創造に注力。

産業界で培ってきた水の先進的技術を宇宙という最先端分野に適用することで、将来有人宇宙探査向けの次世代「水再生システム」を実用化するとともに、獲得した技術・知見を活かし、地上(人々の生活や産業)においても、小型で省エネルギーな水再生システムの利活用を目指した研究開発を推進していく方針だとしている。