「大人が考えたアイディアでは私たちにささりません」──そう語るのは、インフルエンサーでありプロデューサーである“ひかりんちょ” だ。
ひかりんちょはTikTokで約70万フォロワー、Instagramで22万フォロワー、Twitterでは12万フォロワーと、延べ100万フォロワーを抱えるインフルエンサーである。その一方で、16歳ながら自動車メーカーダイハツの、原宿でのティーン向けのキャンペーンの総合プロデューサーに抜擢された。
インフルエンサーからプロデューサーへ領域の幅を広げるひかりんちょに、これまでを振り返りつつZ世代に共感されるコンテンツの生み出し方、そして今後の挑戦について話を伺った。
自分の中からでてくる創造性を大事に
──TikTokを始めたきっかけは?
ひかりんちょ:もともと中学生の頃に「MixChannel」をやってたんですが、見る専(見る専門、閲覧するのみで投稿をしない)でした。他のユーザーの動画をみている内に、自分も動画アップしたいなと思い投稿してみたら、いきなりオススメ枠に掲載されてバズったんです。
それをきっかけにファンの方が増え始めて、TwitterやInstagramを始めました。そしてMusical.ly(後にTikTok運営のBytedanceが買収)でリップシンクが好きで使っていて、TikTokに変わった(統合された)タイミングで本格的に投稿を開始しました。
基本的にはリップシンクが多くて、洋楽に合わせて口パクしながら振り付けをつけて踊っていました。
──投稿するコンテンツはどのように工夫をしていますか?
ひかりんちょ:見る側のことを考えすぎて狙いすぎると、自分が面白くありません。もちろんユーザー目線も大事なのですが、先端のことを自分がやっていく、流行りや新しいスタンダードを自分がつくる、というのを特に意識しています。既存のものに合わせすぎたら面白くないので。
一方で、身近な友人や兄弟などにはヒアリングをして参考にしています。同世代の身近な存在にうければ、広い世代に受け入れられることが多いので。あとは具体的な工夫ポイントだと、曲選びなどは大事です。頭に残るかどうか、印象に残るかどうかなどはとても大事です。
──実際にフォロワーが増えていったことに対してどう思いますか?
ひかりんちょ:最初は驚きを隠せませんでした。自分の住んでいる街をつくれるくらいの人数がフォローしてくれているというのが信じられないです。スーパーとかで声かけらることもあったりで。
また、たくさんフォロワーがついた良い点は様々な意見をコメントやリプで貰えるので、視点が広がることです。一方で制限なども増えてきてしまう点もありますが、それは自分が選んだ道なので受け止めています。
インフルエンサーからプロデューサーへ
──今回企業からお願いされたときにどう思いましたか?
ひかりんちょ:依頼が届いた時は想像できなかったです。自分のことを発信していくことは今までやっていましたが、企業の発信というのは初めてなので。でも、とてもそういった機会を頂けたことにはとても“ワクワク”しました。
──今回のプロジェクトでは何を求められましたが?
ひかりんちょ:ダイハツの認知を十代に広めたい、というのが最初のオーダーでした。しかし、同世代のみんなは車のこともわからず、言葉さえも知らない状態だと考えたんです。
なので、まずは『ダイハツ』という言葉を広めることを考えました。若い世代は略語が好きなので、“だいはつ”という言葉に意味を持たせようと考えました。そして、“だいすき はつらつ”の略語として“だいはつ”を広めることにしました。(#だいはつ)
サブアカウントでの実験でも好反応を確認でき、実際に使い始めたところインスタライブなどでも「ひかりんちょ、だいはつ~♡」という声をかけてもらったりと、ちゃんと同世代に共感され、使われて浸透していきました。
また、言葉を広めるだけでなく、後付け安全装置「つくつく防止」の普及キャンペーンも行いました。高齢者による自動車事故のニュースなどを耳にする機会が増えていたので、孫から祖父母へ安全運転を伝えていければと思いました。それは若い世代の私たちだからこそ、出来るアクションであると思っています。
──実際にはどんな施策になりましたか?
ひかりんちょ:同世代のクリエイターを声がけお誘いして、7名の「おちゃらけ戦隊 ダイハチューム」というPRチームを結成しました。“だいはつ”という言葉と、“#原宿マジだいはつ”というハッシュタグを活用して、チームで盛り上げていきました。
チーム全員の総フォロワー数は360万人を超えます。そして、原宿竹下通りをジャックし、横断幕や店舗ポスター掲載、リアルイベントなどを実施しました。衣装からポーズ、ポスターデザインなどいたるところを工夫しました。
イベント当日のおちゃらけ戦隊ダイハチュームとファンの集合写真
──キャスティングで工夫したことはありますか?
ひかりんちょ:プロデューサーとしての活動は楽しくてしょうがなかったです。一人よりもチームで行うほうが影響力をより強められると思い、今回の企画に合うメンバーを自分でチョイスしてお誘いさせて頂きました。
意識したポイントは、軸として、おちゃらけ戦隊ダイハチュームというチーム、そして“だいすき はつらつ”というメッセージ、また場所が原宿ということで、元気があって盛り上げられる人を選んでいます。あとは、その中でもバリエーション豊かに、いろいろなタイプの人を選ばせて頂きました。
Z世代に共感されるコンテンツは当事者から生まれる
──共感され、マネされる工夫はどのようなものがありますか?
ひかりんちょ:例えば変なポーズ。カワイイだけじゃだめなんです。おもしろさや違和感が大事で、自分だったら面白いな、と思えるかどうかを大事にしています。こういったことも、当事者だからわかることです。
──打合せで大人に感じること?
ひかりんちょ:一番初めに、「ダイハチュ♡」投げキッスみたいなものをイメージしていたという話をマネージャーから聞いたときに、ドン引きしました(笑)。古っ!昭和!って言いました。やっぱり当事者でないと感覚が違うんだと思います。もしこの世代にうけるコンテンツをつくるならば、しっかりと等身大のティーンに意見を聞くことが大事だと思います。
──プロデューサー活動を体験してみてどうでしたか?
ひかりんちょ:全てにワクワクしました。コンセプトからメンバー、コスチュームまで全てをプロデュースしていくことが楽しかったです。自分の発信していくこととは異なる、影響力の大きさや課題解決の難しさなどがとてもやりがいがあるので、私にしかできない発想でプロデュース活動もしていきたいと思っています。
十代をリードして時代をつくりたい
──こういった性格はいつからですか?
ひかりんちょ:小学生の頃は明るかったものの、大人数が苦手で一人ずつ会うほうが好きでした。今ではそんなこともないですが。小学校3年のころからスマホを持っていたんですが、LINEなどは親しか連絡相手はいなかったので、おのずとアプリの世界でオンライン上のコミュニティに目が向いていきました。
あとはお母さんと仲が良くて、よくやり取りをするのですが、この前は友達とカラオケにいるときに急に電話がきて、「あんた何やってるの!全然“だいはつ”広まってないじゃない!仕事なんだからちゃんとやんなさい!!」と突然、怒られたりもしました(笑)。私も年中無休反抗期みたいな性格なのもありますが、お母さんの意見はとても助けられています。
──これからの目標はなんですか?
ひかりんちょ:私が時代をつくりたいと思っています。同世代のみんなも巻き込みながら、仲間を作りながら世代を超えて大きな影響を与えていきたいと思っています。それを、十代のうちにやりきるのが目標です。
そのために、仲間を全国に増やしていくことをしていきつつ、自分のプロデューサーとしての影響力を大きくしたいと思っています。自分が一人で発信しようではなくて、発信力のある仲間を集めてチームにして、プロデューサーという立場で大きなことを動かしていきたいと思っています。
でも学校だってちゃんと行きます(笑)。最初は通信制などでもいいやと思っていたタイプなんですが、学校ではリアルな同世代の声を聞けるのが良いです。同世代との共通の感覚を得るために学校にもちゃんと行って、この世代に共感されるコンテンツを企画できるプロデューサーとしても頑張ります。
TikTok:http://vt.tiktok.com/JAgTkY/
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お問い合わせ:hikarinchoxxx@gmail.com
取材・文・写真 木村和貴