一人ひとりが会社を介すことなく、自分の持つ考えや想いを発信できることが可能となった昨今。“個”がフォーカスされることも多くなった。発信を通して自分の目指す夢を人に披露できる時代であり、その夢を見た人たちが応援できる時代にもなってきている。
この応援は、“共感”を得られることが重要視されるだろう。
今回、その“共感”から応援を生み出し、多くの人たちの夢を叶えるクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」を取り上げる。
“夢見る人を、はじめる人に。”というキャッチコピーのもと、多くの人々の夢の実現をサポートするプラットフォームであり、現在は購入型では国内最大のプロジェクト掲載数、ならびに流通金額を誇る。
現在、このCAMPFIRE事業の管掌を務めるのは、以前から代表取締役CEO・家入一真氏と交流があり彼から直々にオファーを受けていた、同社 取締役COOの大東洋克氏だ。2019年3月から現ポジションに就任し、この数ヶ月でテレビCMを手がけたり、新規事業を立ち上げたりとより一層同サービスの注目度を高めている。
そんな今のCAMPFIRE事業の根幹として活躍する大東氏に、夢の実現を目指すべく、多くの人から共感を得るためにはどのようなポイントが重要になってくるかを伺った。
国内最大のプロジェクト掲載数を誇るクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」
───現在、数多くのクラウドファンディングサービスがある中、CAMPFIREが他のサービスと違う点はどこなのでしょうか?
大東:誰が何をやるか、ということに執着していないところだと思います。
法に反するもの、公序良俗に反するものでなければ、プロジェクトのジャンルや規模にとらわれず、幅広く僕らのサービスを利用してもらえるようにしたくて。
基本的に、お金が集まる可能性の高いプロジェクトだけを支援していた方が、会社としては効率良く収益をあげることができるのですが、当社はそこ以外にも目を向けてサービス展開をしています。“人の夢を応援したい”という理由で、僕らはCAMPFIREを生んでいるので。志があって、なぜ資金が必要なのか、その説明さえあればどんなプロジェクトでも応援するという点が他のサービスとの違いですかね。
───ということは、プロジェクトの種類や傾向はかなり幅広いのでしょうか?
大東:ジャンルはフルラインナップですね。他社比較してもかなり幅広いです。
ただ、支援金額で集まっているプロジェクトの特徴としては、比較的サブカルチャーが多いかもしれません。コンテンツに対する熱狂的なファンが多いプロジェクトは支援金額も多く集まる傾向があります。
とはいえ、オールジャンルということもあり、購入型国内クラウドファンディングでは一番のプロジェクト掲載数や流通金額を誇ります。
───ちなみに現在までのプロジェクト掲載数は?
大東:現在までの累計で23,000件のプロジェクト数ですね。支援者数でいうと、1,340,000人の方達からご支援いただいてます。
───支援してもらうために、CAMPFIRE側でプロジェクト運営のサポートはしているのでしょうか?
大東:していますね。
CAMPFIREに掲載していただいたからには、一つでも多くのプロジェクトに成功してほしいと思っていて。0円で終わらないように、少しでも資金調達できるようなサポートは心がけています。
例えば、CAMPFIRE側では各ジャンルに特化したメンバーをアサインしてサポートできるような体制にしています。掲載するクリエイティブの見せ方、タイトルの付け方、説明の記事に対するアドバイスをしたり、問い合わせなどで相談があればその相談に乗ったり。
「想い」の強さが支援者からの共感を得る
───多くの支援者からプロジェクトの“共感”を得て、応援してもらうためのポイントは何かありますか?
大東:プロジェクトに対する「想い」が大切なポイントです。
何を達成したいのか、世の中にどんな良い流れを生みたいのか、誰のどんな課題を解決したいのか、そういった成し遂げたい何か強い想いがあるプロジェクトは、共感も、支援も集めやすいのではないかと思います。
ただ単純にお金がほしいだけ、有名になりたいだけなど、自分の利益ばかりを考えてしまっているような内容は、すぐに見透かされるので支援は集まりづらいですね。
───極論、「想い」が強ければ、記事のクオリティが低くても支援は集まるということでしょうか。
大東:それはそうだと思います。もちろん、見せ方が上手いに越したことはないですが、クリエイティブやタイトル、説明の記事の作り方は、ただのテクニックでしかないので。
100点のプロジェクトを、見せ方によって110点120点にすることで、さらに支援者が集まる。根本のプロジェクトに対する想いの強さは、綺麗な文章やタイトルなどのディテールだけでは表現できないですからね。
たまに、いちマーケティングツールとしてだけのためにクラウドファンディングを利用される場合があるけど、そういうプロジェクトは支援が集まらないことが多いです。
───マーケティングツールというのは?
大東:プロダクトを周知させるためのブランディング的な活用とか、どれくらい支援がつくかというデータ収集的な活用にクラウドファンディングの価値を持っている人が少なくはなくて。
そうではなく、色んな物事の価値を広く伝えて、それを見て聞いた人たちから支援の気持ちとか共感の気持ちとかを集めて、その気持ちが結果としてお金となるツールであり、コミュニケーションツールなんですよ。そこを履き違えて利用してしまうと、共感を得ることはなかなか難しいと思いますね。
共感を得られる人は「弱み」を見せられる人
───プロジェクトに対する想いの強さが共感を得るということですが、CAMPFIREを利用しているプロジェクトオーナーさんは想いの強い方が多いですか?
大東:多いですね。やっぱり想いがないと資金調達できないので。CAMPFIREの利用者に限らず、目的があってクラウドファンディングをしている人は、いい意味で周りが引いてしまうくらい熱量の高い人が多いと思います。
そして、その熱量の高さを恥ずかしがらずに発信できる人、ちゃんとメッセージを届けられる人は共感を得ます。
想いを持っていても人前で表現できない人、斜に構えて上部だけしか見せない人は、熱量が上手く伝わらないので、共感を得ることも支援を集めることも難しいです。
───それってクラウドファンディングを利用する人に関わらず、人から共感を得るためには重要なことかもしれないですね…。
大東:重要だと思いますよ。
例えば、うちの代表の家入は、今でこそ色んな人から共感を得ている経営者ではありますけど、ここに至るまで、良い部分も悪い部分も世の中にたくさん見せていて。
僕は家入とは長い付き合いですが、今まで色んな失敗や苦労があったことを知っている。でも、それが彼らしさであり、その経験が彼を磨いているんだと感じます。
共感を得るのに重要なのは、そういう弱みも見せることだと思うんです。弱みを隠して良い部分ばかりを見せたり、意図的に良い部分ばかり言ったりするよりも、率先して失敗して恥かくのを悪としないことが大事。家入はそれができたから、今人がついてきている。それが共感を得られる人と、得られない人の差だと僕は思います。
───嘘がないというか、素直な人は共感が集まるということですね。
大東:そうです。失敗することの何が悪いんだって思えるくらいの人。
そして、クラウドファンディングに関していうと、支援金額が集まってプロジェクト成立しても、そこで終わりだと思わない人。
クラウドファンディングで支援金額を集めるのは、プロジェクトを成功させるプロセスの一つでしかないから、集まった金額だけが成功のバロメーターだと思ってしまう人は共感を得にくいと思います。
クラウドファンディングでお金を集めたあとって、相当大変ですからね。言ったからにはやらなきゃいけないですから。それをやり遂げる覚悟のある人が共感を集める、支援を集める人の共通点でもあります。
クラウドファンディングは人の夢を後押しするツール
───今回のテーマである「個の時代」に向けて、CAMPFIREをどのように活用していけば良いと思いますか?
大東:個人も組織も共通して、クラウドファンディングを活用する目的を持つことが大事。何を成し遂げたいのかをちゃんと組み立てることが、クラウドファンディングを成功するために一番必要なことです。
一方、チームでクラウドファンディングすることで、より動きやすく、アイデアや意見も出やすい面があると感じていたので、仲間やアイディアを集めることができるサービスもCAMPFIRE内で展開しています。
───どのようなサービスですか?
大東:「hibana」と「TOMOSHIBI」という2つのサービスがあります。
一つ目の「hibana」は、自分の持っているアイデアの質を定性的にリサーチするプラットフォームサービスです。例えば、アイデアを投げかけて顧客・ターゲットのインサイトを探したり、アイデアに対するフィードバックを得たりできます。
そして、「TOMOSHIBI」は、すでにプロジェクトを始めたいと思っている人が、プロジェクトに共感する仲間を集めるプラットフォームサービスです。
どちらも、アイデアがあるけど周りに共感してくてる仲間がいない時、そのアイデアに対するフィードバックがない時など、一人で悩まなくても良いように。
僕らとしては、夢があるならその夢を叶えてほしい。もし、個人でクラウドファンディングを始めるのに勇気が出ない、となっても諦めてほしくない。そのためにも、CAMPFIREをただの資金調達ツールとしてではなく、色んな人のチャレンジを後押しするツールにしていきたいですね。
取材・文:阿部 裕華
写真:西村克也