世代を超えた使いやすさの実現に向け、マイクロソフトが取り組むデザイン改革

マイクロソフトは一昨年から、自社製品に「Fluent Design System」と名付けた新しいデザイン言語を導入している。Windows 10に続いて、昨年からはMicrosoft OfficeとOffice 365にもこれを適用。UIが変更されたほか、約6年ぶりにアプリアイコンのデザインも刷新された。

クラウドを中心にビジネスを展開するマイクロソフトにとって、共通のデザイン言語を定義することはとても重要だ。今やユーザーはWindows PCだけでなく、タブレットやスマートフォンにWEB、Mac、Android、iOSなど、様々なデバイスやプラットフォームを使い分けながら、同社の製品やサービス利用している。

もし、それぞれのデバイスやプラットフォームごとにユーザー体験が異なっていたら、クラウドを活用したモダンワークは、敷居の高いものになるだろう。


マイクロソフトのデザインへの取り組みについて語る、デザイン&リサーチ担当 コーポレートバイスプレジデントの ジョン・フリードマン氏

「今やいろんな場所が仕事場になる時代。会社の中でだけでなく、自宅でも外出先でも移動中でも、いつでもどこでもしっかりと生産性を保てるようにしなければなりません」と話すのは、米マイクロソフトのデザイン&リサーチ担当 コーポレートバイスプレジデント、ジョン・フリードマン氏。

「そのためには、人がどのように仕事をしていているのか、どのように行動して何を望んでいるのか、人を中心にデザインを考える必要がある」という。デバイスやプラットフォームを超えて、ユーザー体験をひとつにする「Fluent Design System」の導入も、そうした考えに基づくもの。

同社では今、この「人を中心したデザイン」をすべてのプロダクト、サービスに反映しようとしている。

ハードウェアももちろんその対象だ。「Surface」などのデバイスデザインを担当する、コーポレートバイスプレジデントのラルフ・グローネ氏は、「ハードウェアとソフトウェアがともに連携することが重要」とした上で、「Surface」シリーズが目指すデザインを楽器に例え、次のように説明する。「最初は楽器をどのように持つか、どう使うか考えますが、音楽の演奏に集中すると楽器をのことなど意識しなくなる。同様にSurfaceも、ユーザーがごく自然に使えて作業に集中できるデバイスを目指したい」。


「Surface」などハードウェアを手がける、デバイスデザイン担当 コーポレートバイスプレジデントのラルフ・グローネ氏

フリードマン氏も「ハードウェアであれ、ソフトウェアであれ、優れたデザインは目につかず背景に溶け込む、ものだ」と話す。しかし一方で、誰もにとって優れたデザインを実現することは、もちろん容易なことではない。「たとえば今会社では、5世代の人達が一緒に働いていると言われる。

当然ながらそれぞれに仕事への取り組み方も違えば、働き方も違う」とフリードマン氏。異なる世代の多様なニーズに答えるためには、あれもこれもできる「パワー」と「シンプルさ」を両立させる必要があると語る。

たとえば「Fluent Design System」が適用された最新のMicrosoft OfficeおよびOffice 365では、画面上部のタブ型ツールバー(リボン)がシンプルかつコンパクトになり、その分だけ作業用のスペースが広くなっている。ただし、従来通りたくさんの機能を一覧できる幅広のリボンにも、簡単に戻すことができる。

「Officeを長年使用してきた世代は、クラシックなスタイルの方が慣れています。一方でモバイルコンピューティングが当たり前の世界で成長してきた若い世代は、よりシンプルで欲しいときに欲しい機能が自然に使えるものを求めている」(フリードマン氏)。

幅広い世代にユーザーを持つのはマイクロソフトの特徴であり、「強味」であり、だからこそ「世代間のギャップを埋める方法を、見つけ出さなければならない」のだという。

マイクロソフトが、その突破口として考えているのが「AI」だ。最新のMicrosoft OfficeおよびOffice 365には、必要なときに必要な機能を呼び出せる検索機能をはじめ、すでに様々なAIを用いた機能が実装されている。

たとえばパワーポイントに実装されている「PowerPoint デザイナー」もそのひとつ。様々なスライドのデザインを提案してくれるものだが、米国でリリースされた最新の機能では、スライドに入力されている言葉に基づいて、テーマやスタイルにあう画像を提案してくれる。たとえば入力された言葉の中に地名があれば、その場所の写真を提案するといった具合。UIを整理すると同時にAIを取り込むことで、「パワー」と「シンプルさ」を両立し、どの世代にも使いやすいデザインを目指す考えだ。


AIを用いてスライドで使用する画像を提案する、パワーポイントの新機能。AIが「やりたいときにやりたいことが自然にできる」新しいソフトウェアデザインを実現するという

マルチデバイスおよび、マルチプラットフォーム化によって、今Officeのユーザーは世界で約10億人以上にのぼるという。それだけ多くのユーザーのニーズに応え、彼らの生産性を高めることができれば、マイクロソフトにとって大きなビジネスのチャンスになることは間違いない。

フリードマン氏は「まるでソフトウェアやサービスが脳の機能の一部になったかのように、誰もがごく自然に使いこなせる。オープンソースも取り入れながら、そんな真のユニバーサルデザインの実現へ全社的に取り組んでいく」と語った。

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