東京商工リサーチは、2019年度の「賃上げ」実施状況をアンケートで調査、2019年7月2日にその結果を発表した。

主なトピックは5つ。

  • 8割の企業で賃上げを実施
  • 「新卒者の初任給増額」大企業と中小企業で格差
  • 5,000円以上の定期昇給 中小企業が大企業を5.9ポイント上回る
  • 賞与(一時金) 「30万円未満」が約7割
  • 「従業員の引き留め」 中小企業が大企業を大きく上回る

8割の企業が賃上げを実施

アンケートの回答企業7,693社のうち、「賃上げを実施した」は6,223社(構成比80.9%)で、全体の8割を占めた。

規模別では、大企業は「賃上げを実施した」が866社(構成比81.5%)、「実施していない」が196社(同18.5%)だった。

一方、中小企業は「賃上げを実施した」が5,357社(同80.8%)、「実施していない」が1,274社(同19.2%)だった。

賃上げ実施は、大企業が中小企業を0.7ポイント上回った。

また「賃上げを実施した」と回答した6,223社のうち、賃上げ内容について5,673社から回答を得た。
最多は、「定期昇給」の4,470社(構成比78.8%)。次いで、「ベースアップ」が2,384社(同42.0%)、「賞与(一時金)の増額」が1,869社(同32.9%)と続く。

新卒者の初任給の増額は、大企業で184社(同25.4%)だったのに対し、中小企業は774社(同15.6%)で、9.8ポイントの差があった。


定期昇給を実施した企業のうち、「定期昇給の上げ幅(月額)はいくらですか?(択一回答)」と質問をしたところ、4,445社から回答を得た。

最多は「5,000円以上1万円未満」の912社(構成比20.5%)。次いで、「2,000円以上3,000円未満」883社(同19.9%)、「3,000円以上4,000円未満」781社(同17.6%)だった。

構成比は、大企業、中小企業ともに「5,000円以上」が21.6%、27.3%と最多だったが、中小企業が大企業を5.7ポイント上回った。

賞与の最多は30万円未満

賞与(一時金)を実施した企業のうち、1,838社から回答を得た。
最多は「30万円未満」の1,256社(構成比68.3%)で、約7割を占めた。次いで「年間30万円以上50万円未満」が330社(同18.0%)、「年間50万円以上70万円未満」は115社(同6.3%)と続く。

賃上げを実施したと回答した6,223社のうち、5,569社から回答を得た。
全企業で最多は、「雇用中の従業員の引き留めのため」が、 2,480社(構成比44.5%)だった。

「給与規定に基づく定期昇給」は、大企業は349社(同49.5%)、中小企業は1,695社(同34.8%)で、大企業が中小企業を14.7ポイント上回った。

「雇用中の従業員の引き留めのため」は大企業が243社(同34.5%)、中小企業は2,237社(同46.0%)で、中小企業が大企業を11.5ポイント上回った。

大企業では給与基準が明確に規定され、定期昇給を定めている企業が多く、賃上げ実施企業の約半数を占めている。一方、中小企業は34.8%にとどまっている。また、「雇用中の従業員の引き留めのため」は、中小企業と大企業の差は11.5ポイントと大きく、採用難が続く中で、雇用の維持に苦慮する中小企業の姿がみてとれる。

「その他」は、10月に予定される消費増税への対応、各都道府県の最低賃金が引き上げられたことによる増額などの回答もあった。また、定期的な賃上げは長期負担を伴うため実施せず、能力や業績に連動した賞与で穴を埋める企業も一定数あるようだ。


※調査概要
期間:2019年5月9日~5月31日
方法:インターネット調査
有効回答数:有効回答7,693社
有効回答数を集計、分析した。賃上げ実体を把握するため「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。また、資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業などを含む)を「中小企業」と定義した。

<出典元>
「2019年度「賃上げに関するアンケート」調査」
東京商工リサーチ