ビジネスパーソンの生産性を上げるには?五感から紐解く集中力を上げる秘訣

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2019年4月より「働き方改革法案」の一部が適用開始された。働き方改革法の項目には原則月45時間、また年360時間以内に残業時間を抑えるよう、労働時間に規制がかかるものであったり、年10日以上の有給休暇が発生している場合、必ず5日の有給休暇を取得することが義務づけられるものがあったりする。

企業が働き方を変革していくことにあたり、個人としても、これまで以上に生産性を高める必要に迫られるだろう。短い労働時間でも結果を出すため、パフォーマンスを向上させるため、私達は何をしたらいいのだろうか?

2019年5月29日、AMPは世界一集中できる場を目指し進化し続ける会員制ワークスペース「Think Lab(シンク・ラボ)」にて、「ビジネスパフォーマンス向上のための環境づくり」をテーマにイベントを開催した。登壇者は個人のパフォーマンス向上にあたって重要となる知見を持つ、以下の3人だ。

・JINS MEME事業部 事業統括リーダー 井上一鷹氏
・デロンギ コミュニケーションマネージャー 宇佐美夕佳氏
・Repro 共同創業者 兼 VP of Engineering 三木明氏
・(ファシリテーター:AMP共同編集長 木村和貴)

イベントではトークテーマに五感が挙げられ、視覚、聴覚などそれぞれの特性を生かしてどのように集中力を保てばいいのか、パフォーマンスを維持すればいいのかなど、個人の生産性向上へのヒントが語られた。

意思決定を減らすアイテムを選び、就寝前にスマホを見ないことで集中力が高まる

トークテーマの五感の中からはじめに選ばれたのは「視覚」だ。視覚情報からパフォーマンスをさせるにはどうしたらいいのか。ファシリテーターである木村からの問いに、はじめに井上氏が答えた。


写真右・JINS井上氏

井上氏: 「集中力、パフォーマンスを上げたい時に得た方がいい視覚情報で、エビデンスが取れているのは植物です。Think Labにも沢山植物を置いています。

視野角内で認知できるのは大体120°なんですけれど、目に植物の緑が10%から15%入ってくるようにすると、一番良いストレス状態になって集中が続きます。Think Labでも集中が続くよう、植物の最適配置を行っています。

また視野角内に30%ぐらい緑が入ってくると、ジャングルに入った時のように、逆にストレスになるので注意が必要です。

また植物の種類でも人への影響が変わります。Think Labに植物を卸してくれている会社から聞いたのですが、見慣れないトロピカルな植物などを置きすぎると、緊張するのか交感神経は上がるのですが、休息の神経である副交感神経は上がりません」

また井上氏は就寝前にスマートフォンを見ることはパフォーマンスを著しく下げる行動だと訴えた。

井上氏:「寝る前にスマートフォンを見るのは本当に止めた方がいいです。なぜかというと、スマートフォンから出ているブルーライトというのは昼の光で、浴びると眠ることができなくなるからです。

僕らは夜行性ではないので、ブルーライトを浴びるとメラトニンという睡眠導入ホルモンが出なくなり、覚醒状態になります。人の体内時計は光と食事の時間でほぼ決まるため、Think Labでもやっていますが、太陽のシフトに合わせて夕方は照明の光を暖色系にしないと睡眠が浅くなります。寝る前にスマートフォンを見ると、そういった光の調整を全てダメにしてしまうので、止めた方がいいです」

井上氏が現在事業統括リーダーを務めているJINS MEME(ジンズ・ミーム)では、メガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」に搭載されているセンサーからの情報をもとに、専用アプリで集中時間、覚醒度などを確認することができる。また井上氏はJINS MEMEを通じて収集した約1万人のデータをもとに、世界一集中できる場を目指して作られたワークスペース「Think Lab(シンク・ラボ)」の事業責任者も務めている。

つづいて宇佐美氏は、日々の中で身の回りにあるものを見た時、意図せず意思決定をおこない効率が落ちている可能性があることを指摘した。


デロンギ・ジャパン宇佐美氏

宇佐美氏: 「家にある何かリモコンをちょっと想像してみてほしいのですが、沢山ボタンがありませんか?色々な情報を沢山目にすると、人は疲れます。なぜかというと、視覚から色んな情報が目に入ると、それに対して自分が意図的に選ばなければならなくなるからです。

意識してほしいのが、毎日そういった選択の積み重ねをしているということです。だから仕事の環境や自宅の身の回りにあるもので、意図せず意思決定を増やしているものがあるなら、それはやっぱり生活の効率を落としています。

そのためなるべく意思決定をする必要がない、という観点からものを選んでいくと、リラックスできるアイテムに囲まれることになります。そしてそれによって生活が向上すると思っています」

現在宇佐美氏がコミュニケーションマネージャーを務めるデロンギ・ジャパンでは、快適を極めた、疲れにくい風を提供する空気清浄機能付きファンが発売されている。デロンギの風は風ストレスが従来より31%低く、脳波からもリラックスすることが確認されている。そのため、日々のストレスを出来るだけ軽減させたいビジネスパーソンにとって、空気清浄機能付きファンを導入するだけで風ストレスから解放され、リラックスしてハイパフォーマンス状態を生み出すことが出来るのは、環境作りとしては非常に効率的でアクセスしやすい有効なアプローチといえる。

宇佐美氏:「我々デロンギは空気清浄機能付ファンの開発を始める時、風を浴びるなら、快適であることを最大限に極めようと決めて取り掛かりました。夏場の環境で風を浴びるとかえって、体調を崩してしまったりだるいと感じたりすることが誰にでも思い当たると思います。そういった風による“不快さ”を軽減する製品を作れたら最高だなと。

これまでに空気清浄機能付ファン開発段階で血圧、脳波、血液、唾液、など様々な身体の状態を測定し研究してきましたが、デロンギの空気清浄機能付ファンの風を浴びれば浴びるほど、体がリラックスしている状態になることが分かりました。

実際デロンギでも空気清浄機能付ファンの風を浴びながら仕事をしていますが、非常にリラックスした状態なのでかえって仕事に集中していると思います」


会場にも置かれていたデロンギ空気清浄機能付ファン

生産性を落とすポイントをどう削ぎ、触覚での体験を長期的に快適にすることが大切

日々触れるものから情報を取得する「触覚」は、どんな点に気を付けることが生産性向上に繋がるのか。「触覚」に対しての問いに、三木氏は生産性を落とすポイントをどう減らしていくか、という観点で語った。


Repro三木氏

三木氏 :「触覚に関しては長期的視点で見て、体にインパクトが発生したことによる生産的を落とすポイントをどう削ぐか、どう予防するか、が大事だと思います。

極論まで話すとキーボードの軸のレベルの話までしてしまいますが、指にどれだけストレスを与えない状態にするのか、マウスを使わない状況にするにはどうすれば良いのかなどを考えています。キーボードだけ使えば基本的に腱鞘炎にはなりません。僕はセパレートキーを使っていますが腱鞘炎になったことがないです。触覚に関してはそういった工夫を長期的に見ながら行っています」

三木氏はWebとアプリ向けにマーケティングオートメーションサービスを提供するReproで現在VP of Engineeringを務めている。また指輪型の睡眠サポートデバイス「Ouraring」や二酸化炭素や騒音、気圧を測定する「NETATMO(ネタトモ)」を個人で利用するなど、自身のパフォーマンス向上にも余念がない。

そして宇佐美氏は触覚から得られる、デロンギが提供する空気清浄機能付きファンの風の質感について語った。

宇佐美氏:「私たち空気清浄機能付きファンで、こだわったのは風の質です。風は目に見えませんが風が肌にぶつかる時に風の質はわかりますよね。強く体にぶつかる風、ふわりと包み込む風、など様々な風があります。デロンギはこだわり続け、なめらかで疲れない風にたどり着きました。

送風機から風を浴びるのは5分や10分など短時間ではありません。風を浴びた時の体験は積み重なっていきます。そして短期的にお風呂上がりに風を受けて気持ちいいと思う風と、長期的に浴びて気持ちいいと感じる肌触りの風の違いに気付きました。デロンギの風は、浴びている時間軸が長いことを想定し設計されています。

先ほど三木さんがおっしゃったキーボード一つとっても、触れる時間が長くなればなるほど、感覚は必ず記憶に残っていきます。空気清浄機能付きファンは長期的に快適な肌触りの良い風を提供するため、作り出した製品です」

集中できる音の環境は人により、集中を阻害する要因は職場の同僚

音のない環境の方が人は集中できるのか、それとも適度な雑音が必要なのか。多種多様な作業用BGMが配信されている背景のなか、「聴覚」を通して集中力を向上させるヒントは何か。はじめに井上氏が語った。

井上氏:「好きな音楽を聴くのと無音、どちらが集中できますかとよく聞かれます。そしてこの質問には答えが出ています。実際20人で試したところ、10対10と半分に分かれました。つまり人によります。

論拠としては強くないのですが、為末大さんが陸上競技選手だった時、彼は試合前の30分、ノイズキャンセルのヘッドホンを付けて無音で生活して、集中を高めていたそうです。彼の分析によれば、彼の幼少期の家は静かだったらしいです。つまり聴覚を通してリラックスと集中を促すには、昔リラックスしていた時の追体験をするのが良いようです。

また誰もが集中やリラックスを促される音といえば自然音なのですが、Think Labではいわゆるパワースポットと呼ばれる場所の自然音を耳で聞こえる音だけではなく、肌でしか感じないような高周波の部分まで再現しています。そこまではやらないとリフレッシュ効果はありません。そのためYouTubeなどで配信されている自然音に効果はないです」

また三木氏は行っている作業によって、音の環境を変えているという。

三木氏:「僕の場合考えごとをしている時は無音にして、作業している時は音楽など聞いています。

しかし会社にいると、人と関わらなければ進まない仕事が増えるので、コントロールしきれない所があります。だから集中したい時は、集中したいことをアピールするためにヘッドホンをつけています。今話しかけるのはちょっと待ってほしいと伝えるために」

そして三木氏の言葉を裏付けるように、井上氏が職場で集中が削がれる原因を語った。

井上氏:「集中力を計測していて分かったのは、集中力を最も削いでいるのは職場の同僚ということです。

人は集中しようと思ってから深い集中状態に入るまでに、アイドリングだけで23分かかるといわれています。しかし現代人は職場で同僚に度々話しかけられたり、見なきゃいけないメールが突然やってきたりします。

そのため一番大事なのは、話しかけて欲しくないという意思表示です。人は視覚から87%、聴覚から7%情報を得ています。視覚情報は向く方向などで調整できますが、音は周り込んでくるため、一番集中を阻害してきます。だから自分で集中できる環境を構築する必要があるのです」

味覚を活用すればネットワークが広がり、嗅覚は集中への最初の入り口になる

イベントも終盤に差し掛かった頃、残されていた「味覚」と「嗅覚」に話題は移行していった。はじめに宇佐美氏が食事をすることでネットワークを広げることができ、また得た情報を他の人に還元できるという、味覚でのメリットを語った。

宇佐美氏:「味覚を活用する方法としておすすめしたいのは、自分の好きなご飯を活用して、ネットワーキングというか、色んな人に会えるチャンスを作ることです。人脈を会社だけではなく外に求めていけるところが、味覚ができる唯一のことだと私は思っています。

自分だけの力だけでできないことというのは誰でもあると思います。しかし困った時、会社や仕事関係だけに頼るのではなく、誰かと食事を共にしておいしいという共感で繋がることができれば、その人達から自分が何か悩んでいることがあった時に、情報や重要なエッセンスを貰うことができます。

また自分が培ったことに対して後輩とか、あるいは自分が交流している人達に与えていくサイクルを作ることも可能です。自分の価値観を広げていくという意味では、五感の中でも味覚というのは本当に強いと思います」

そして嗅覚に関して、井上氏が集中するための最初の入り口として効果があることを述べた。

井上氏:「嗅覚は集中する時の最初の入り口には効果があります。しかし持続的にはあまり効果がありません。なぜかというと匂いは慣れが早いからです。そのため匂いが変わっても、5分後には分からなくなります。

そのために匂いが集中に対してどのような効果があるかと言うと、最初の入り口です。昔から集中を極めていたお坊さんは塗香(ずこう)で手首に匂いを付け、その匂いを嗅いでから集中に入っています。

思考パターンを変えたい時や、違うことに自分の思考をスイッチしたい時に嗅覚を利用するのが良いです。色んな効果が働きます。集中したい時はこの匂いを嗅ぐ、リラックスしたい時はこの匂いを嗅ぐ、というように自分の好きな匂いを選ぶのがおすすめです」

個人のパフォーマンスを向上させるために必要なのは、集中力を削いでいると気付かずに行っている選択や行動がないか、計測し見直すことである。

ベッドに入った後、気付いたらスマホを見ているならその習慣を改善し、また自分がどのような音の環境にいるのが最も集中できるのか、専用のデバイスやアプリを利用して調べてみるのもいい。

日々無意識に積み重ねている行動に目を配り改善点を見つけることで、個人がパフォーマンスを向上させることは可能だ。そしてはじめの一歩として自分がどのような環境であれば集中することができるのか、これまでの経験を思い出してみるのはいかがだろうか。

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