世界最大規模の広告代理店「WPP」と、その調査やコンサルティング業務を請け負うカンターは、「2019年の世界のブランド価値ランキングTop100」を公開した。
ブランド価値の算出においては、カンターの消費者調査にもとづき測定されたブランド資産、企業の財務実績・業績分析を組み合わせて実施。本調査レポートは、企業の業績や株価の向上にブランドがもたらす価値を明らかにしている。
今回のランキングにおける主なトピックは以下のとおりだ。
- 小売りのAmazon、トップを独占していたテクノロジーブランドに代わってトップへ
- エコシステムという新たなモデルが急成長しているブランドの成功の鍵に
- 「2019年の世界のブランド価値ランキングTop100」ランクイン企業のブランド価値総額は4兆7,000億ドルに
- トップ100の価値総額の大半をコンシューマーテクノロジーブランドが占める
- ランクインした日本ブランドのうちトップはTOYOTA(トヨタ)、急成長をみせたのはShiseido(資生堂)
- アジアブランドが存在感を増す。Top100へのランクインが昨年の21ブランドから24ブランドに。
小売りのAmazon、トップを独占していたテクノロジーブランドに代わってトップへ
これまでトップの常連だったテクノロジーブランド大手のGoogleやAppleをおさえ、今年のランキングでは、その成長に衰えを感じさせないAmazonが世界で最も価値のあるブランドとなった。
Amazonが堅実な買収で新たな収益源を生み出すとともに、優れたカスタマーサービスを提供しながら、多様なエコシステムを展開。同社はAmazonが常に競合他社の先を行き、ブラント価値を拡大し続けていると評価している。
調査をはじめた2006年にMicrosoftがブランド価値ランキングのトップに立ってから、ランキングの大半はテクノロジーブランドが独占していた。今回はブランド価値で前年比52パーセント増の3,155億ドルといった突出した成長をとげたAmazonが、ゆるやかな成長にとどまった2位のApple(3%増の3,095億ドル)、3位のGoogle(2%増の3,090億ドル)を抜いて、12年にわたるテクノロジーブランドの独占状態に終止符をうつかたちとなった。
エコシステムという新たなモデルが急成長しているブランドの成功の鍵に
Top10ブランドをみると、Facebookが6位にとどまったのに対し、Alibabaが初めてTencentを抜き中国ブランドではトップの7位(前回は9位)となった。一方、Tencentは前回から3ランクダウンし8位に後退。
その原因について同社では、市場が不安定な状態にあるなか、ブランドが消費者の期待感やニーズの進化に常に応え続けなくてはならなくなったことにあるとみている。そんななかで急成長しているブランドをみると、エコシステムといった新たな潮流にのりブランドの成功をもたらしているということだ。
一方、多くのソーシャルメディアプラットフォームがさまざまな課題に直面しているなかで、Instagramは世界のユーザー数を10億人余りに増やすことに成功。ブランド価値について前年比95%増という大幅な成長により今年最大の伸びを記録し、ランキングも47ランクアップの44位となった。
2番目に大きな成長を記録したのは、ヨガをはじめアスリート向け製品を提供するアパレル企業「Lululemon(ルルレモン)」。前年比で77%増の692億ドルに成長している。そのほか、NetflixやUberも著しい成長を記録。
同社は、変化の激しいテクノロジー主導の世界において、充実したブランド体験を提供する企業を消費者がより重視していることが反映されているとしている。
「2019年の世界のブランド価値ランキングTop100」ランクイン企業のブランド価値総額は4兆7,000億ドルに
米中の貿易摩擦は、トップ100ブランドの成長率にも影響。前年比7%まで低下している。また一部のブランドカテゴリー、なかでも自動車や流通、銀行といった分野は関税のあおりをうけて消費者に打撃をあたえている。
こういった経済不安があるなかでも、今年のトップ100ブランドの総保有価値は、昨年より3,280億ドルも加算。その総額は4兆7,000億ドルに及んでいる。これはスペイン・韓国・ロシアのGDP総額にほぼ匹敵。その一方で、トップ100ブランドにランクインするための敷居がますます高くなっており、同社によるとブランドの年間成長幅がランクインの重要な要素となっていることがわかる、とのことだ。
トップ100の価値総額の大半をコンシューマーテクノロジーブランドが占める
今年のトップ100に入ったブランドのうち、その価値総額の大半をコンシューマーテクノロジーブランドがもたらしている。その総額は1兆ドルを超える規模となっている。
新興企業である中国のスマートフォンメーカー Xiaomi(シャオミ)は、スマートデバイス接続にモノのインターネット(Internet of Things、以下IoT)を活用。ロシアやインド、マレーシアなどで需要が急増している。
同じく中国ブランドのMeituan(メイチュアン)は、食品配達・宿泊予約・自動車送迎・バイクレンタルなど、あらゆるサービスを提供。これまでのカテゴリーにはなかった消費者向けプラットフォームとして認識されている。
またUberはエコシステムモデルを利用し、食品やそのほかの配達サービスに進出しつつある。世界最大の家電/IoTプラットフォーム「Haier(ハイアール)」は、IoT分野で顧客・パートナー間のオープンなエコシステム構築に取り組んでいる。
ランクインした日本ブランドのうちトップはTOYOTA(トヨタ)、急成長をみせたのはShiseido(資生堂)
トップ100のうち、日本では自動車のTOYOTAと通信プロバイダーのNTTがランクインしたものの、どちらも前年から順位を落としている。なおTOYOTAは本ランキングの公開がはじまってから、常に日本のトップブランドの地位を守っている。
一方、パーソナルケアカテゴリーでは10位のShiseidoは、ブランド価値を前年より56%上昇。カテゴリー全体の価値の伸びを大きく上回って、革新的なブランドとして急成長をとげている。同社は、Shiseidoが過去10年間で想起性・差別性の評価を高めてきたと評価。今後もこの高い成長のペースが続くだろうと推測している。
アジアブランドが存在感を増す。Top100へのランクインが昨年の21ブランドから24ブランドに。
世界のなかでも、アジアブランドの存在感は年々増している。トップ100にランクインするアジアブランドをみると、昨年の21ブランドから24ブランドに増えている。日本の2ブランドをのぞくと、中国15ブランド、インド3ブランド、韓国1ブランド、オーストラリア1ブランド、インドネシア1ブランドがランクインしている。
<参照元>
驚異的成長のAmazonがトップに躍進 世界で最も価値のある日本ブランドはTOYOTA 、 急成長の日本ブランドは資生堂
カンター・ジャパン