「マッチングサービス」と聞いたときに、どのようなイメージを描くだろうか。もしかしたら「マッチング=出会い系」を頭に浮かべる人がいるかもしれない。それはミレニアム世代が学生のとき、まさにインターネットが生活へ普及しはじめた2000年代にC2C向けの恋愛マッチングサービス、いわゆる出会い系サービスが世間を賑わしてしていたからだ。
しかし2010年代の後半に入ってから、スマートフォンの普及、AIの発達によりマッチングサービスはB2Cのビジネスマッチングをはじめ、イベント、不動産、ファッションなど様々な分野で使われるようになった。C2Cでは恋愛・結婚以外にも、シェアリング、売買、スポーツなど急速にその利用範囲を拡大していく。
以下は、2018年7月時点でのマッチングサービスカオスマップである。前述の領域をはじめ、様々な分野でマッチングサービスを使用されていることがお分かり頂けるだろう。
今回はマッチングサービスの変遷を辿るとともに、現在ビジネスパーソンに用いられる機会が増えているビジネスマッチングについても簡単に紹介していく。
「マッチング=出会い系」のイメージを作ったインターネット成長期
現在、ビジネス対象を選ばずに様々な分野で使用されるようになったマッチングサービス。はじまりは、国内でインターネットが生活へ普及しはじめた2000年代に遡る。
このタイミングで登場したのは、携帯会社が提供するプラットフォーム上で男女がチャットやメールを中心にやり取りをするサイトだった。通称出会い系サイトと呼ばれ、出会いを求める男女が、地域や年齢など気になる条件で検索をかけ、好みの相手を探すというものだ。しかし、売春といった犯罪の温床、1日に100件を超える迷惑メールなどが問題となりマッチングサイトに対する負のイメージを世間へ植え付けてしまうことになる。
2010年代に入ると、スマートフォンの普及もあり、出会い系も専用のアプリやサイトを使ったサービスへ移行する。この辺りから、登録情報を元にサービス側でピックアップした内容から、スワイプで好みの相手を選ぶという方法が登場してきた。相手を感覚的に選択できるのは、スマートフォンならではの特性を生かした機能だ。
米国からやってきたTinder(ティンダー)をはじめとするデートアプリの登場が後押しとなり、マッチングは頑張って相手を探すスタイルから出会いを楽しく求めるスタイルへと変わっていった。
マッチングサービスの技術進歩、登場当初とは異なりライトなイメージへシフトしたがきっかけで、恋愛・結婚以外の領域でも少しずつ利用されるようになる。では、ビジネスにおいてマッチングサービスはどのように利用されているのだろうか。
ビジネスはマッチングを活用した時代へ
ビジネスマッチングで見ると、最近注目を集めているのはyenta(イエンタ)ではないだろうか。個人で人脈を拡大したいビジネスパーソンに好まれる傾向にある。これまでに同サービスを何度か利用しているが、メンバーを探す起業家をはじめ、ビジネスのタネや企画壁打ち相手を求めるビジネスパーソン、案件を獲得したいフリーランスなど、利用者や目的は様々だ。
同サービスは、まず自身のプロフィールを元に、近しい領域や関心のある分野の人材をAIがマッチングしてくれる。さらにサービスを何度か使用していくと、「興味ある」にスワイプした利用者の傾向をベースにマッチングしてくれるようになるのだ。所感にはなるが、使用頻度が上がるにつれ、マッチング率は高まりやすい傾向にあるだろう。
Yentaの面白いところは、会ってすぐにビジネスの話へとスムーズに入れるところだ。気軽な情報交換だとしても、互いに目的を持って利用していることがほとんどである。そのため、ランチの1時間でも濃密な時間を過ごすことができるのだ。興味さえあれば、これまで全く関わりのないコミュニティにいる人材とも出会えるため、人脈を広げたいビジネスパーソンにも好まれる。
SNSを使ったカンタン募集というキャッチコピーで親しまれるbosyu(ボシュー)も、その手軽さからよくFacebook、Twitterで目にする機会が増えているのではないだろうか。個人でも法人でも、手軽に募集をかけられるのがこのサービスの魅力だ。
実際に募集側でbosyuを利用した人たちに話を聞くと、「応募が多い場合でも、返信者を事前にセレクトできるから、応募者のファーストスクリーニングに便利」、「SNSで拡散してもらえるので、自身の人脈だと接点が無かった人でもマッチングができる」という声が上がる。
応募側としても、これまでアンテナを張っていなかった方向からシェアによって情報を得られたり、接点がなかった人たちと繋がるきっかけを持てられたりするため大変便利だ。自身の領域や仕事、交友関係を広げるのに大いに役立つ。bosyuは自分のペースでビジネスマッチングの機会を創出できるツールでもある。
サービス対象はB2B、B2Cへと広がる
マッチングサービスは、時代を経て消費者同士をはじめ、企業間や企業と消費者なども繋ぐようになった。
画像は、スタートアップ開発ラボ StaPが出しているマッチングサービスカオスマップだ。
例えば、働く場所や時間を選ばない働き方提供を目的とした「Lancers(ランサーズ)」「CrowdWorks(クラウドワークス)」といったクラウドソーシングもマッチングプラットフォームを利用して依頼者と受注者を結びつける。仕事を引き受けてくれる人材を手軽に見つけたい企業、案件を手軽に探したい人材を中心に活用されている。
また働き手側だけでなく、学生の間でもマッチングサービスが使われていることはご存知だろうか。そのひとつが「Matcher(マッチャー)」だ。就活において、企業情報を入手するのに欠かせないOB・OG訪問の円滑化をサポートする。就活格差が都内と地方ではおきやすいが、こうしたプラットホームを作ることで、就活生の活動を支えることができる。
日本屈指のユニコーン企業である「Mercari(メルカリ)」が提供する日用品の売買プラットフォームも、モノと人のマッチングサービスだ。2013年にフリマアプリ「メルカリ」がローンチされてから、2014年には1日の流通額が1億円、2017年には10億円を突破した。メルカリ経済圏という言葉も登場しており、メルカリで売り買いしたポイントで生活を動かしている人も存在するぐらいだ。
これまではプラットフォームとして単にマッチングを目的として運用されるサービスがほとんどだった。しかし、マッチングサービスが世の中に定着してきたことで、一部サービスは社会と繋がるきっかけやライフラインとしても浸透しはじめている。
社会的なゆるい繋がりが生活を充実へ導く
過去には「マッチングサービス=何だか危ないもの」というイメージを抱かれていたが、現在は技術革新やイメージ改善に伴い、「ゆるく色々な人やモノ、場所などと繋がるためのツール」へと移り変わりつつある。
マッチングサービスは、おそらく今後も増えていくだろう。ビジネスでもライフスタイルでも、今から少しづつマッチングサービスを取り入れてはいかがだろうか。もしかしたらマッチングによって得られる社会とのゆるやかな繋がりは、ライフスタイルをより充実としたものへと導いてくれるかもしれない。
文:杉本 愛