オンライン学習で広がる無限のキャリア。~20代から始めるリカレント教育のすすめ~

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テクノロジーを活用するスタートアップが多く誕生する現代、そしてそのプロダクトが当たり前となるであろう未来において、重要なのは古典的なビジネス論ではなくテクノロジーを使いこなせる能力だ。

今回は、オンライン学習サービスUdemy(ユーデミー)にて講師としてプログラミング講座を提供する株式会社キカガク 取締役副社長の今西 航平氏、Udemyをはじめとするオンライン学習からプログラミングを学び、現在はIT企業であるディップ株式会社にて新規事業企画・立案に携わる安元一耀氏にお話を伺う。

講師・生徒という立場の異なる2人の視点から、オンライン学習を通じた学びがキャリアに与える影響、未来に向けて今から意識してテクノロジーを学ぶ必要性などを語ってもらった。

今西航平
株式会社キカガク 取締役副社長。初心者から中級者を対象とし、AIや機械学習、Webアプリケーションに関する講師としてUdemyをはじめ社内外で活躍。Udemyでリリースした講座はベストセラーにえらばれるほどの人気を持つ。今西講師の講座一覧はこちら
安元一耀
ディップ株式会社にて新規事業企画・立案を担当。大学2年生のときに参加したインターンをきっかけに、プログラミングスキルを高めたいと思いUdemyで学習する。

学習は将来への投資。知識がビジネスの可能性を広げる

詳しい話に入る前に、なぜ2人はプログラミングを学ぼう・教えようと思ったのかを伺った。

ディップ株式会社 安元一耀 氏

安元「きっかけは、『自身の能力の足りなさに危機感を覚えたこと』です。学生時代に何気なく参加したインターンで配属されたのがエンジニアチームでした。

元々エンジニアというキャリアを目指していたわけではなく、『IT業界で働きたい』という思いからインターンに参加しました。しかしインターンが進むにつれ、エンジニアにならないとしても、業界で働くには基礎レベルのプログラミング知識を手に入れる必要があると感じたのです。

文系だったこともあり、大学に学ぶ環境はありませんでした。そのためインターンが終わってから、Udemyというサービスをはじめ、複数の学習サービスを併用して当時は学んでいました」

今西「私が所属するキカガクという企業は、初心者〜中級者を中心に人工知能 (AI)や機械学習といった技術の学習機会を提供しています。講師としては、Udemyのようなオンラインプラットフォームをはじめ、オフラインといったリアルの場でも講座を行っています。

元々、学生時代は塾講師のアルバイトを務めていたこともあり、教えることが好きだったのでUdemyの誰でも生徒・講師になれるというプラットフォームの特性を活かし、キカガクの今西として動画に出演するだけでなく、個人的にもプログラミング学習に関する動画をアップしています」

では実際、ビジネスの場面において「プログラミングを知っている」「テクノロジーを理解している」というのは彼らの目線からどのような恩恵をもたらしているのだろうか。

株式会社キカガク 今西航平 氏

今西「ビジネスを広義の意味で捉えるのであれば、知識的な深さはなくてもテクノロジーを知っているというだけで重宝される存在になると思います。その分野を知っているだけで、エンジニアや専門家とのコミュニケーションに大きな違いが出てくるからです。よくわからないままプロジェクトが進んでしまうのか、否かということです」

安元「確かに今西さんが仰るとおり、私も仕事を円滑に進める上で実感しています。さらにコードが書けると、本来であればエンジニアにお願いしないといけない修正が自分でも対応できるようになるのが便利だと思います。実際、Webサイトの些細な戻しをエンジニアやデザイナーにお願いすることが減りました」

“生徒”“講師” それぞれの立場だからこそ得られるもの“学び”がある

では、オンラインでプログラミングを学ぶことにはどのようなメリットがあるのだろうか。まず安元氏が生徒側の目線から教えてくれた。

安元「『スクールに比べて安い』『質問ができ、回答も早い』というのが当時感じたメリットです。返信速度は先生にもよると思いますが、私が受講していたUdemyの先生は秒でレスポンスしてくれたこともありました。

これには驚いたと同時に、すぐ対応していただけることで学びが止まらないと安心した記憶があります。先生がよかったのだと思いますが、良い意味でオンライン学習に対する期待を裏切られました」

さらに社会人として働く中でプロダクト開発の経験が生きていることを教えてくれた。

安元「社会人になってから感じるのが、しょぼいアプリでも最後まで作りきった経験があるのは強かったということです。当時はこれまで学んだ仕組みや機能を活かし、自身が関心を持てるテーマのアプリを2つほど考え、開発に取り組みました。実際に開発、リリースするまでの過程を経験できたのは今の仕事にも繋がる大きな学びです」

Udemyでの学習中に安元 氏が作ったサイトとGoogle Map APIを利用したサービス

では、一方で講師目線で見たときに教えるということに対するメリットは何なのだろうか。

今西「やはり、教える過程を通して自身の知識が深まるということが学ぶ以上のメリットだと思います。生徒さんたちに的確な情報を伝えるためにも、教える内容以上の知識を私たちは学び、吸収することが求められます。

講師として教えるという形で自身の知識をアウトプットするとも言い換えられます。そういう意味ではUdemyのように誰でも講師になれるプラットフォームは、知識をより体系化したい人にとっては有益なように感じます」

「そのファーストキャリアは本当に正解だったのか?」20代からのリカレント教育が与える発見

今、世の中ではリカレント教育など積極的に学びの場に赴くビジネスパーソンが増えている。オンラインを用いて様々な学びを経験している2人はこの点についてどのように思うのか。

安元「学び続けるという選択をすること自体が重要だと思います。私も社会人になってから状況に応じて、短時間でパッと知識を手に入れたいときにはYoutube、体系的に学習したいときには専門書というように活用してきました。Udemyなどの動画サービスは、専門書の置き換えとして、手軽に早く情報を仕入れたいときに有効ではないかと思います」

今回、インタビューをしている2人はともに20代前半である。20代〜30代が早い段階で学びの環境に戻ることへの率直な考えを尋ねた。

今西ファーストキャリアが『本当にそれでOKだった?』と振り返るためにも早い段階での学びは大切だと思います。自分のまだ知らない才能に気がつくきっかけになるからです。

併せて仕事だけに没頭するのではなく、関連することを学んだり、興味のあることを知ったりすることで、自身が本当に楽しいと思うことを見つけられるようにもなると思います」

安元「学べというよりかは、なぜ学びたいのかが重要ではないでしょうか。私はビジネスにおいて自身の市場価値を常に高めたいと思っています。

だからこそ、手を動かした学びをすることで、アウトプットを高め自分の価値や能力へと繋げていけるはずだと考えます。もちろん価値観は人によって異なるので、自身が何を大切にするかで学ぶタイミングは変わってくるはずです

今西氏が「20代の間でも学びに対する格差は大きい」と切り出し、話題は学習に対する意識差へと発展する。

今西「同じ年齢でも問題意識を持って勉強をすることで差は開くと思います。周囲の20代だけをみても、学びに対する意識に違いがあります。ベンチャー企業へ就職するような人は能動的に勉強をしていますが、全体で見るとごくわずかです。これは決して20代だけに限った話ではなく、どの世代の方にも当てはまると思います」

ここでリアルな環境でも教鞭を取るからこその発見を教えてくれた。

今西「授業で生徒さんを見ていると“手を動かすことが染み付いている人”とそれ以外の人は行動に差が出ています。染み付いている人は分からない場面や問題にぶち当たっても、その範囲でどうにか手を動かすことができているのです。

だからこそ、早い段階から手を動かして考える習慣を身につけていくだけで、その後の成長速度が変わってくるように感じます。

今はSNSなどのプラットフォームの登場でアウトプットする場が増えています。最近感じたことや読んだ本の内容などインプットをしたことを、定期的に外へ発信してはいかがでしょうか。1ヶ月続けるだけでも、自身の成長を感じられるはずです」

手を止めてしまうことで、思考も一緒に止まってしまうケースは少なくない。だからこそ、TwitterやInstagramといったSNSを活用して、情報発信をしながら考えるクセをつけていく必要がある。ただ伝えるのではなく何を伝えたいか、届けたいメッセージを考えることがきっと成長速度にも影響を与えるはずだ。

オンライン学習の学びによって広がるキャリアの可能性

こういったオンライン学習サービスが発展している中で、今からプログラミングを学ぶことは、これからのキャリアにどのように繋がっていくのだろうか。

今西「テクノロジーの知識があるだけで重宝されるし、転職などにも役立ちます。それ以外にも知識の橋渡しという意味で新しいことを学ぶべきではないでしょうか。

私自身の経験からも、メインの業務にプログラミングは関係ないですが、プログラミングを学んでいたことで、役に立ったことはたくさんあります。知識があると、業務効率化や働き方改善などの議論になった場合、いざというときの引き出しの多さが変わってくるはずです」

安元「もしCEOをはじめとする経営陣にエンジニアがいる場合、取締役との共通言語が増え、業務やプロジェクトが進めやすいかもしれません。またプログラミングはスキルの掛け合わせに役に立つため、市場価値を上げるなら抑えておきたい要素だと思います」

最後に「プログラミング業界において今後注目したい技術」を伺ったところ、今西氏がプログラミングやAIを学ぶ上ではIT基礎力が重要であることを語ってくれた。

今西「最新テクノロジーを知ることも大事ですが、やはりタッチタイピングやOffice活用などの基本的なITスキルの土台をレベルアップすることが個人的には重要だと思っています。土台がなければ、どれだけ最新知識を学んでも培われないからです」

学びやすい環境が整えられているとはいえ、最新のテクノロジーを知ること、プログラミングができることといった目先の学習に囚われてはいけない。重要なのは、ITスキルという土台をしっかり作り上げ、そこに自分が必要な情報をどう組み上げていくかなのだ。

取材・文/杉本愛
写真/西村克也

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