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2019年5月24日、矢野経済研究所が「個人情報の流通利用に関する若者の意識」について、調査とその分析結果を公開した。
利用者が多く代表的なSNSであるTwitter、Facebook利用を対象に、自分自身の個人情報について、(1)情報種別に流通利用させることへの意識、(2)流通利用させることに対して求めたい対価を調べている。
調査結果のポイントは次の2点。
- “個人の特定”・“リコメンド機能拡張”のイメージが強い情報項目で、流通利用への心理的抵抗感が強い
- Twitter利用における、自分自身の個人情報流通利用で求める対価は30,924円/年。月額換算すると約2,500円
心理的抵抗が強いのは、“個人の特定”・“リコメンド機能の拡張”につながる個人情報項目
調査ではまず、個人情報9項目それぞれについて、「(1)情報種別に流通利用させることへの意識」を確認した。
個人情報として設定されているのは以下の9項目。
- 利用環境(端末種など)
- 利用状況(日時・時間など)
- 位置情報(GPS情報など)
- プロフィール登録内容(画像などを含む)
- 検索履歴(ハッシュタグ検索を含む)
- 閲覧履歴(広告閲覧を含む)
- シェアやいいねなどの各ボタンクリック履歴
- テキスト投稿内容(ツイートなど)
- 写真/動画投稿内容
流通利用に対する意識の選択肢は3つ。
- いかなる場合でも流通を許可しない(「流通利用NO」)
- 納得できる利用目的ならば流通を許可(「利用目的次第」)
- 適正な対価と引き換えならば流通を許可(「対価と引き換え」)
結果としてわかったのは、個人の特定につながりやすそうな個人情報項目において、心理的抵抗が強いということ。そして、リコメンド機能の拡張につながりそうな個人情報項目についても心理的抵抗が高くなっているということだ。
詳しく見ると、全体傾向として「対価と引き換え」の割合は、個人情報項目ごとの差が小さい。おおむね15-20%のレンジとなった。
残る80-85%を「流通利用NO」「利用目的次第」で二分している。その大小は個人情報項目別に差がでた。個人の特定につながりやすそうな”位置情報(GPS情報など)”や”プロフィール登録内容”、あるいはリコメンド機能の拡張につながりやすそうな”閲覧履歴””検索履歴”などは半数前後が「流通利用NO」としている。
残る項目についての「流通利用NO」は30%台が大半。比較的「利用目的次第」で判断されやすい個人情報と言えるという。
男性より女性の方が「流通利用NO」の割合が高い
性別・年齢区分別・居住地別などの基本属性別の違いをみると、総じて男性より女性の方が「流通利用NO」の割合が高くなっている。
もっとも男女差が大きかったのは、“位置情報(GPS情報など)”。男性42.5%、女性64.2%が「流通利用NO」とした。
調査をおこなった矢野経済研究所では、「個人の特定の中でもリアルな生活につながるイメージが強い位置情報(GPS情報)への抵抗感は、相当大きいものがあるようだ」とみている。
年齢区分別で明らかに違いがあると確認できた個人情報項目は、“プロフィール登録内容”、“テキスト投稿内容”など。
“プロフィール登録内容”については、24歳以下(15歳以上)と、25歳以上(34歳以下)で抵抗感に差がみられた。また、”写真動画投稿内容”については、4つの年齢階層において上に行くほど徐々に抵抗感が高まる傾向があらわれている。
Twitterでの「個人情報流通利用」で求める対価は、約2,500円/月
調査では次に、「(2)流通利用させることに対して求めたい対価」を調べた。
「(1)情報種別に流通利用させることへの意識」で9種の個人情報項目のうち、1つでも「対価と引き換え」を選択したものが対象だ。Twitter、Facebookそれぞれについて調査、分析を実施している。
結果、全体平均としてTwitter利用における自分自身の個人情報流通利用で求める対価は30,924円/年。月額換算すると約2,500円だ。またFacebookについては、29,224円/年。月額換算するとおよそ2,450円。TwitterもFacebookも、いずれの場合も平均2,500円/月程度となった。
「一見すると少々高額なイメージだが、一人の個人情報を複数社によって利用&負担するような仕組みが構築されたなら、対応できる要求水準」との見解が示されている。
さらに基本属性別にみると、年齢区分別での違いが確認できた。15-19歳、20-24歳という”25歳未満”と、25-29歳、30-34歳という”25歳以上”で、その求める金額に大きな開きがあるのがわかる。
Twitterの場合の前者の平均は27,150円/年、後者の平均は39,409円/年で大よそ1.5倍の差がでた。Facebookの場合はそれぞれ24,016円/年、37,939円/年で1.6倍の差があった。
それぞれの年齢層における、金銭価値に対する認識の差が影響していることが想像できるという。
また、性別ではTwitterでやや男性>女性、Facebookで男性<女性となった。居住地別では、いずれも首都圏<近畿圏となったという。ただし、これらの差は小さくおおむね誤差の範囲程度であり、統計的にも有意差があるとは確認されていない。
今回の調査について矢野経済研究所では、「この内容は、これから個人情報の流通の一翼を担うであろう情報銀行のビジネスモデルに関連している」と述べ、その発展に寄与することが目的であるとしている。
※調査概要
調査の対象:首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、近畿圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)に在住の15歳~34歳の男女
調査の件数:サンプリングサイズは1,744標本
調査の方法:インターネット調査
調査の時期:2019年3月25日~28日