個人間取引を“フェア”な世界に。スニーカー売買プラットフォーム「モノカブ」の戦略

インターネットの隆盛とともに普及した、フリマアプリやネットオークションなど、オンラインでの個人間取引サービス。しかし、顔の見えない個人同士が気軽に取引できるようになり売買の利便性が向上する中、新たな課題も発生している。

偽物商品の流通や個人間のトラブル、価格の不透明性などの問題だ。

こうした現状に、さまざまな企業が解決に向けて取り組みを進めている。その中でも、今回は、スニーカー特化型の売買プラットフォーム “モノカブ” を運営する、株式会社ブライノに焦点を当ててみる。

スニーカー市場では、

●偽物の流通が多く、既存のサービスでは購入しづらい
●定価の概念がないため、買い叩かれたり、本来の価値より高く値付けされることがある

と、個人間取引に大きな課題を抱えているという。モノカブでは、これらの課題を解決する仕組みを用意。売る人も買う人も、安心して取引できるプラットフォームを提供しているそうだ。

これらの個人間取引が抱えている課題と、それらに対してブライノがどのように対応しているのかを、ブライノ代表・濱田航平氏に聞いた。

株式市場の取引方式を用いて、「商品の値決め」問題は解決できる

個人間取引において課題となる「❶偽物問題」「❷個人間トラブル」「❸価格の不透明性」の3点について、モノカブではどのような対策を行っているのだろうか。

まずはじめに濱田氏は、「❶偽物問題」に含まれる3つのケースを教えてくれた。

(A)販売者が購入者を騙して利益を得ようとする。明らかに悪質なケース
(B)正規品だと思って購入したものの、偽物だと知らずに販売してしまうケース
(C)購入者が本物の商品を購入し、返品したいといって、偽物にすり替えてしまうケース

濱田:「実際、個人間売買においてこの3つのケースは頻発しています。流通している商品のなかには多くの偽物が紛れ込んでいるため、弊社では、売買ごとに弊社に送っていただき、鑑定士によるチェックを行い偽物を排除することで、この問題解決に取り組んでいます」

続いては「❷個人間トラブル」。個人間取引において、多くの場合、購入者側は住所を開示するため、個人情報がバレ、脅しに使われてしまったりすることがある。

濱田:「フリマアプリなどでは、匿名発送など個人間トラブルを防ぐ手法が増えてはいるものの、いまだに住所や電話番号が相手に知られてしまうケースが少なくありません。

一方、モノカブでは、売買ごとに弊社に送っていただく“取引仲介”の形をとっているので、確実な匿名化が可能です。また、弊社が間に入ることで、『商品が届かない』『受取確認がされず、出金手続きが行えない』などのトラブルを未然に防ぐこともできます」

最後に、「❸価格の不透明性」について。個人間取引市場の拡大によって、ユーザーには市場選択の自由がもたらされたが、その一方、市場知識のない個人がやりとりできるようになったことで、“商品の値決め” がうまく行えないケースも増えている、と濱田氏は語る。

たとえば、不用品とはいえ、本来1万円でも売れるものを5千円で売ってしまうケース。価値を知らずに安い値付けをしてしまったり、価値を知る購入者に買い叩かれてしまったりすることが起こり得る。

また、オークション形式の場合は値段の上限がないため、ヒートアップし本来の価値を逸脱して購入されるケースもあるという。

濱田:「これらの問題については、『板寄せ取引』と呼ばれる株式市場の仕組みを使うことで解決できると考えています。一見難しく見えるシステムですが、仕組みは単純。

購入者は購入したい値段を提示、販売者は販売したい値段を提示し、その金額で両者が納得できたら、販売・購入が成立するシステムです。両者が金額を提示するので、商品の購入価格の上限と、販売価格が保証できるのです」

以下、「モノカブ」の購入画面。購入を希望する価格を入力し、販売者の希望と折り合えば、販売・購入が成立する。

不便から生まれたサービスだから、課題解決にフォーカスできた

これらの課題解決施策は、どのように生まれたのだろうか。 課題に気づいたきっかけを尋ねてみると、モノカブが「不便から生まれたサービス」であることが見えてきた。

濱田:「スニーカーの個人間取引では、偽物の流通や、定価以上での取引が多発するため、『既存のサービスでは購入しづらい』との声が多く聞かれました。私自身も、既存のフリマアプリで偽物の商品を購入してしまったことが何度もあります。

商品ページの写真は同じものが使いまわされていて、偽物か本物かどうか判断ができないんですよね。2ヶ月以上かかってようやく返金してもらえたこともあれば、泣き寝入りすることもありました」

株式取引の手法を応用することが、個人間取引の解決策になりうると濱田氏が気づいたのは、大学卒業後に就職した国内証券会社でのことだった。

濱田:「証券会社で株式を販売しているときに、株式の取引方法「板寄せ」が、シンプルでありながらフェアな取引方法であると気づいたんです。

定価以上での取引が多く、価格形成がしづらいというデメリットは、株式市場の取引方式『板寄せ取引』の技法を使えば解決できます。この取引方法を用いた“モノ”のオンライン売買をしたいと思って起業しました。特にトラブルの事例が多かった、スニーカーの取り扱いからサービスを開始したんです」

ユーザーの「不便」に寄り添った『モノカブ』のビジネスは、ベータ版を2018年5月にリリース、さらに2018年11月に正式リリースして以来、順調に成長を遂げているという。

濱田:「現在、モノカブの流通額は、毎月30%以上の成長を遂げています。ユーザーは90%近くが男性で、ファッションに興味・関心が強い方が多い印象です。昨今では、シェアリングエコノミーが話題になっていますが、この分野に限ってはアートに近いもので、所有欲・収集欲の方が強いのではないかと思っています」

今後、スニーカー以外にも、取り扱い領域を拡大していく予定のブライノ。取り扱い領域拡大に伴う、サービス開発と組織体制の強化を目的に、2019年5月23日、W ventures,TLM,西尾 健太郎(株式会社ゲームエイト 代表取締役),伊藤久史(HEROZ株式会社)ほか個人投資家からの資金調達を発表している。最後に、今回の資金調達も受けて、今後の展望を尋ねてみた。

濱田:「今回の調達も受けて、ユーザー獲得とともに、サービスの改善を行い国内でのバーティカル売買プラットフォームとしてNo.1を目指します。また、商材も徐々に増やし、アジアを中心に世界展開も視野に入れて戦っていけるチームを作っていきたいです。

これまで、オンライン上では安心して高額商品の売買はできなかったと思います。モノカブを通して、スムーズで安心できる個人間売買を、多くの人に経験してもらいたいですね」

取材・文:坂口ナオ

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