アメリカのミレ二アル世代で星占いブームが再燃する理由〜結婚相手選び、転職時期の決断でも頼りに

アメリカで「星占い」の人気が急上昇している。これまでも女性を中心に長く親しまれてきた星占いだが、スマホやSNSなどで気軽に利用できるプラットフォームが続々と登場したことも手伝い、利用者が近年ますます増加。

特にミレニアル世代の女性が、毎日の運勢チェックだけに留まらず、バケーションの目的地から転職の時期、そして人生のパートナー選びまで、人生の転機となる重要なタイミングで星占いを参考にしているという。

ファッション・ビューティーのWebマガジンサイト「The Cut」代表、Stella Bugbee氏は、2017年から2018年にかけて同サイトの星占いに関する記事へのアクセスが150%アップしたという。

デーティングアプリの「Bumble」が2019年1月、星座によるマッチングの絞り込み機能を搭載、The Guardian誌で今年4月、「星座を理由にルームシェアを断るのは不公平でつ違法ではないか」について議論がなされたことも、盛り上がりを象徴する出来事だろう。

実際、リサーチ会社Ibis Worldによると、アメリカにおける星占いマーケットの規模は年220億USドル(約2,400億円)で、今最もホットな市場の一つとも言われている。

本稿では、アメリカでの星占いビジネスの活況、そして星占いブームが再燃した背景について考察する。

ミレ二アル女性をねらう星占いサービス続々

2019年5月、ブルックリンのウェルネススタジオ「HealHaus」にて開催されたのは「アストロカトグラフィー・ワークショップ」。

自分の出生地や出生時間を世界地図に反映させて作る特別な地図が、自身が経済的に豊かになれる土地・健康になれる土地・愛する人と出会える場所などを教えてくれるという、スピリチュアルサイエンスを元にしたイベントだ。

細かな情報を組み合わせて占うことから一人ひとり異なった診断結果が得られ、ファンも多いという。

この他にも、星占いをビジネスに取り入れる方法に関する経営者を対象にしたワークショップや、星座に関連した食材を摂り入れて運気を高める方法を教える料理教室などもある。

ニューヨークの占い師レベッカ・ゴードン氏による講演会の様子。アメリカの人気健康情報トークショウ「Dr.Oz」への出演歴もある売れっ子占い師だ(ゴードン氏公式Facebookページより)

星占いの主な利用者であるミレニアル世代の女性を顧客に抱える異業種の企業も、このブームに乗り遅れまいとさまざまなサービスをローンチしている。

クリーンな原材料で評判の化粧品ブランド「Fresh」は2018年12月、占い師のスーザン・ミラー氏とコラボして星座モチーフを盛り込んだリップバームを発売。クリスマスの時期にも合わせて発売し、贈り物として大人気になった。

Limited Edition Zodiac Sugar Lip Treatment Advanced Therapy(Freshの公式Facebookページより)

このブームはテック業界のジャイアント企業にも波及。

音楽配信サービス大手「Spotify」は2019年1月、星座に合わせて選曲された「コズミック・プレイリスト」の配信を開始。監修した占い師のチャンニ・ニコラス氏は「毎日の瞑想やリラックスタイムに聴いたり、新たなインスピレーションを得るきっかけとして使ったりしてもらえたら」とJWT Intelligenceに話す。

毎月アップデートされるSpotifyのコズミック・プレイリスト(同社公式Webサイトより)

アマゾンも2019年4月、星占いを元にオススメ商品を紹介するプライムメンバー向けサービス「アストロジー・ショッピング機能」を開始。牡羊座の筆者には「牡羊座のあなたは今月少々お疲れのよう。アマゾンホームで選んだ新しいソファやブランケットでリラックスしてみては?」とアドバイスしてくれた。

“星占い界のUber”も登場、投資家からも熱視線

企業だけでなく投資先たちからも注目が集まっている。

NASAの衛星データとプロの占い師の知識を組み合わせた「ハイパー・パーソナライズド星占い」が人気のアプリ「Co-Star」は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルMaveronとAspect Venturesから500万USドル(約5億円)以上を調達。Co-Starは2019年のリリース以降、ダウンロード回数は300万、インスタグラムのフォロワーも45万人を突破した。

出生地・出生日時から占う「Co-Star」(公式Webサイトより)

別のアプリ「Sanctuary」は、占い師と一対一のチャット形式で行う星占いと、毎日の星座占いをコアサービスとし(月額19.9USドル、約2,100円)、今後タロットカードや水晶などを販売するEコマース事業に参入する計画。今年初めにはシードラウンドで150万USドル(約1億6000万円)を調達し、その成長の勢いから”星占い界のUber”とも呼ばれている。

「Sanctuary」(同社Webサイトより)

ウェルネスブームが後押し、若年層の宗教離れも

星占いマーケットの成長には、ここ数年のウェルネスブームが関連しているようだ。

ウェルネス情報を発信するWebサイト「Hip and Healthy.com」によると、星占いを好むのは、ヨガを実践して食事に気を遣い、自身の身体と生活をより健康的で幸せなものにしようと心がける、いわゆるウェルビーイングを求めるような若い人たちだという。

同サイトは星占いとウェルネスの結びつきについて次のように説明。

星占いは精神を充足させ、自己を高めるウェルネスの一つとして実践されているようだ。

また、Pew Research Pollが2015年に行った調査によると、現在アメリカのミレ二アル世代の35%が特定の宗教を持たず、「若者の宗教離れ」が起きていると言われる。神を崇拝するよりも自分のルーツを知り宇宙から天啓を得る星占いは、そんなミレ二アル世代の価値観にフィットするのかもしれない。

文:橋本沙織
編集:岡徳之(Livit

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