時代に合った夫婦のあり方へ。“To Do共有”で絆を深めるサービス「CROSS」

2019年4月12日、夫婦のためのToDo共有アプリ「CROSS」がリリースされた。
これまでのToDo共有アプリといえば、ビジネスユーザー向けに業務効率化を目的としてものがほとんど。夫婦をターゲットユーザーにしたToDo共有アプリは初だ。

この新しいアプリを開発・運用しているのが、株式会社よつば制作所だ。プロモーション施策の立案やリサーチ、動画・イベント・WEB・印刷物等のクリエイティブ制作などを行う会社が、初めて自社開発でアプリをリリースした。

そして、CROSSの立ち上げから開発までを行った、同社取締役兼CROSS事業責任者である高橋 洵氏に今回お話を伺ってみた。アプリの具体的な解説とともに、アプリの開発の経緯や、ユーザーへどのような体験をしてほしいかなど、CROSSの開発に向けた想いに迫った。

夫婦のためのToDo共有アプリ「CROSS」とは?

CROSSは、夫婦での利用に特化したToDo共有アプリだ。

CORSS公式HP

このアプリを利用することで、家庭内のライフイベントに合わせた、やること・やりたいことを夫婦間で共有し一元管理が可能となっている。

主な機能は以下の4つだ。

① やることリスト
② やることセット
③ カレンダー
④ チャット

①の「やることリスト」は、家庭内で抱えているToDoを一覧でチェックできる。誰がいつまでに何をするのかが一目で確認できる機能だ。

夫婦間での担当の振り分けや、作業終了時の完了報告をする際も、直感的な操作で実行できる。

②の「やることセット」は、
引越し準備や結婚式準備、住宅購入、季節イベントなどで必要なToDoをセット化した機能。

夫婦間ではあらゆるライフイベントが発生するが、そのイベントに対してどのようなToDoが必要なのかを把握する手間を省くことが可能だ。例えば、引越し準備のやることセットを設定した場合、引越し前の物件探しや荷造り、引越し後の各種行政の手続きや近所への挨拶まで、引越し前後で必要なToDoが一通り登録される。

登録されたToDoをいつまでにやるのかが自動で期限設定されたり、引越し手続きにはどのような書類が必要なのかをアドバイスしてくれる機能も搭載されている。
これらの機能により、調べる手間が省けるため、すぐに行動へ移すことができるのだ。

③のカレンダーは、特定の日時に発生するイベントを登録し、パートナーと共有できる予定管理機能だ。

授業参観や結婚記念日など、すでに日時が確定しているライフイベントに有効活用できる。

④のチャットは、ToDoや予定ごとのメモややり取りをエビデンスとして残しておける機能。

パートナーと決めた予定やToDoの相談をする際に便利だ。口頭やメッセージアプリなどで分散しがちな情報をまとめられる。

また、ToDoに対するアドバイスをチャットでお知らせしてくれる。例えば、大掃除でのオススメなアイテムについてや、引越しした際の行政手続きに必要な書類についてなどをチャット経由で教えてくれる。わざわざネットで調べなくても知識を得ることができるのは、ToDoの効率化にも繋がる。

これら以外にも、ほとんどのアプリには内蔵されているプッシュ通知機能を利用することで、ToDoの期限が迫っている時や、パートナーのアクティビティなどを通知してくれる。大切なToDoや予定を忘れることなく進めることができ、パートナーとの作業を効率的に楽しく行うキッカケになりえるアプリだ。

時代は変化するのに、夫婦のあり方が変化しないことに疑問を感じた

なぜ、このようなアプリが誕生したのか。

CROSSの立案から開発までを手がけた高橋氏は、時代の変化に伴って変化していった夫婦の在り方について考えたことがキッカケだと話す。

高橋:「僕が生まれ育った環境は、二世帯住宅で母は専業主婦という、いわゆる昭和の家庭でした。家のことは全て母に任せっきり。決まった人が決まったタイミングで自己完結しながら作業を進めるので、夫婦のコミュニケーションは報告や相談のような必要最低限のもので済んだ。そんな家庭が昭和には多かったのではないでしょうか。しかし、時代が変わり、平成に入ってくると、専業主婦世帯より共働き世帯の数が逆転してきます」

家庭環境の変化や、それに伴って働き方改革やワークライフバランスなどの働き方の変化も進んでいる。にも関わらず、日本は先進国の中でも群を抜いて男性の家事思考が低いという。家事・育児をすることは本来、夫婦平等に評価されるべきことなのに、男性が家事・育児を少し手伝うだけでプラス加点を得られてしまう風潮すらある。

高橋:「僕自身も恥ずかしながら結婚した当初は皿洗いやゴミ出しをしただけで、沢山家事をした気になってました。一方、妻からはもっとこうしてほしいとか、こういうやり方でしてほしいと言われる。そして僕は不機嫌になったり不貞腐れたりして(笑)
こういった経験から、このすれ違いは夫婦間でのコミュニケーションが上手く取れていないことが原因だと気づいたんです」

さらにサービスを開発する前に行ったアンケート調査でも、多くの夫婦はコミュニケーションの課題を抱えているという数値が実際に出てきた。夫婦といえど育ってきた環境は違う。培われてきた価値観や習慣、お互いの家事・育児に対する理解度、そういった違いを共有せずに分担し合うことで、すれ違いが起こる。

旧来型の価値観や習慣をどうすれば現代型にシフトしていけるのかを考えた結果、CROSSが生まれたのだ。

夫婦間のコミュニケーション基盤を

今までのToDo共有アプリは、ビジネスにおいて業務効率化を目的に利用されることがほとんどだ。しかし、夫婦間でのToDo共有アプリにおいては、家事・育児の効率化を目的にはしていない。
それよりも前段にある、夫婦間の価値観や習慣のすり合わせを行うためのコミュニケーションの基盤づくりを目的としている。

高橋:「当たり前のことですが、CROSSを始めたからといって、旦那さんが急に家事・育児をやりだす、夫婦間での家事・育児が効率的になる、そういった即効性のある効果は得られません。

CROSSでは、家庭内でやるべきことは何なのか、家庭内でお互いしたいことは何なのか、それらの認識のすり合わせが担えるようになっています」

同アプリは、お互いがやるべきことをカジュアルにメモのように登録して利用することを推奨している。そこから、普段気づかなかった名もなき家事の存在を知ったり、パートナーの現状を把握したり、お互いの心地よい家事のやり方や頻度を理解し合える。理解し合うことで初めて、夫婦はチームとしてワークし出すのだ。

高橋:「相手の状況を知り、家庭内の状況を知る。この基盤が作られることで、“忙しそうだから家事やっておいたよ”とか“この作業そろそろ一緒にやらないとね”と、お互いのことを思いやる行動や、建設的な夫婦間のディスカッションに繋がります」

それぞれの夫婦が心地いいコミュニケーションを取るためのキッカケづくりを目的に利用する、そんな位置付けにCROSSはあるのだ。

一元管理が信頼関係の構築に?

冒頭でも説明したように、CROSSには主に4つの機能が搭載されている。

① やることリスト
② やることセット
③ カレンダー
④ チャット

これらの機能は、オンラインのToDo共有に利用されるツールだけでなく、オフラインで利用されているツールから着想を得ていると高橋氏は述べた。

高橋:「企画を考えるにあたって実施したアンケート調査では、オンラインのカレンダーアプリやチャットアプリが多く利用されていることが分かった一方で、オフラインのツールを有効活用している家庭があることも分かりました。例えば、ホワイトボード(伝言板)や付箋、紙のカレンダーなど。これらオンラインとオフラインのツールから、主要な機能をプロットしていきました」

やることリストやセットは、いわゆる家庭内で利用するホワイトボード(伝言板)のような立ち位置にある。夫婦をターゲットにしたToDo共有はCROSSがはじめてとなる。しかし新規性を感じる一方で、カレンダーやチャットは既存のアプリが多く出回っている。

ではなぜ、これらの機能を搭載しようと考えたのか。

高橋:「一つのアプリで完結できるようにしたかったんです。カレンダー、チャット、ToDo共有といった複数のアプリを跨いで利用するより、同じアプリ内で一元化した方が効率化もはかれる。やるべきことが抜け漏れなく、しっかり把握・実行できることで、お互いの信頼関係を構築できるのではないでしょうか」

夫婦をチームとしてワークさせていきたい

ベータ版リリースから現在までに、CROSSでは数万件のToDoが登録されている。
その利用者の多くは、夫婦間への課題に対して高い意識を持っており、さまざまな意見が届くそうだ。そのため、CROSSはまだまだ未完成であると高橋氏は胸中を語った。

高橋:「今利用していただいているユーザーさんたちに、満足に利用して頂けていないと実感しています。まずは、ユーザーの皆さんの意見と向き合い、満足して利用してもらえるアプリにすることが目下の課題ですね」

全ての意見を汲み取ることは難しい。しかし、その意見があるからこそ、サービスはさらに進化していける。CROSSは、誰でも簡単に使えるような、日常に入り込めるようなアプリを目指している。

高橋:「国内の共働き世帯が約1,300万世帯あると言われています。調査していく中で、家事・育児に不満を抱えている世帯の特徴が見えてきていて、その特徴を持つ世帯はおよそ200万世帯と考えています。この200万世帯にリーチしていくアプリにしたいんです」

200万世帯へのリーチはそう簡単なことではない。しかし、真摯にユーザーと向き合い、愚直に進んでいる姿勢は、目標を達成する上でとても重要なファクターになるだろう。

高橋:「最近、結婚に価値を見出せない若者が増えてきていますよね。
おそらく時代の変化に対応できていない夫婦のあり方への不安の現れだと思うんです。
そういった不安を吹っ飛ばせるよう、夫婦で手を取り合い、お互いの夢を目指していく元気な世帯を少しずつ増やしていければいいなと。

そのためにも、CROSSでは、夫婦のチームワークを発揮しやすい基盤作りにフォーカスして、これからの夫婦の在り方や家事・育児への考え方取り組み方を少しずつ変えていきたいですね」

取材・文:阿部裕華

モバイルバージョンを終了