“店舗決済”の次は“個人間送金”へ。キャッシュレスサービスの新たなフェーズ

4月26日(金)のプレミアムフライデーからGWの10連休において、キャッシュレスの認知度向上やキャッシュレス決済サービスの利用促進を目指して、「キャッシュレス・ウィーク」キャンペーンを開催。これは経済産業省やキャッシュレス推進協議会の会員企業や団体が展開する一大キャンペーンで、キャッシュレスによるお得でスムーズな支払い体験を提供するものだ。


「GO! CASHELSS 2020」のロゴ

「GO! CASHELSS 2020」のロゴを用いて、各社、「キャッシュレス・ウィーク」キャンペーンをPR。それぞれ条件はあるものの、『LINE Pay』や『PayPay』、『d払い』は20%還元。『メルペイ』においては50%から最大70%還元と、各企業様々なキャンペーンを行なっている。

※参照:「キャッシュレス・ウィーク」キャンペーン一覧

個人間送金サービスに新たに『楽天ペイ』と『PayPay』が対応

このような還元キャンペーンで、キャッシュレスサービスはどんどん私たちの暮らしに浸透しはじめている。4月9日には『au PAY』、5月8日には『ゆうちょPay』も開始予定と、次々と新しいサービスが始まり、キャッシュレスな世界が身近に迫っていることを感じる。このように店舗での買い物のキャッシュレス化が進んだ次のフェーズが、個人間の送金サービスだ。最近では3月18日のアップデートで『楽天ペイ』が、4月3日のアップデートで『PayPay』が対応している。

飲みに行った時の割り勘に始まり、お祝い金やお見舞い金の立て替え、コンサートなどのチケット代金を支払うシーンなど、人と関わる限り、個人間の支払いは発生するもの。相手と直接、会うことができれば支払いやすいが、相手が遠方にいる場合には、お金を送金しなければいけない。その際、どのような方法をとるのかが問題になる。

先日、筆者が地方に住む友人に頼まれたコンサートグッズを購入し、荷物を送った後に、「三井住友銀行に送金して欲しい」と依頼したところ、「ゆうちょ銀行なら手数料がかからないから、ゆうちょ銀行に振り込みたい」と返された。しかし、私としては三井住友銀行の方が便利で都合がいいと思ってしまう。

このようなケースで問題になるのが振込手数料だ。ゆうちょ銀行の場合、同じゆうちょ銀行同士の振り込みなら手数料は無料だが、他の金融機関宛てになると5万円未満で216円(税込、ATMの場合)。5万円以上の振り込みだと432円(税込、ATMの場合)の手数料がかかる。

このような送金のストレスが、スマホ決済の送金サービスの場合はかなり軽減される。友だちにお金を手数料など不要で送れるからだ。割り勘なら1円単位から手軽に支払えるので、お釣りがなくて困ったり、キリのいい金額にするために、幹事が余計にお金を支払うといったことからも解放されるだろう。とはいえ、メリットだけではない。個人間でやり取りする分には無料だが、これを現金化しようとすると、手数料がかかってしまうサービスが多いのだ。

今回は注目度が高いという理由から、コード決済サービスの個人間送金サービスについて説明するが、現在、個人間送金に対応しているのは、『LINE Pay』、『楽天ペイ』、『PayPay』、『プリン』の4社。この中で、送金に対しても、出金に対しても手数料がかからずに利用できるという点でのベストな選択は『プリン』だ。


pring(プリン)ウェブサイト

『プリン』は無料送金アプリで、お金のやり取りに特化しているところが特徴。その分、『プリン』を使って支払いができる加盟店が少なく、知名度についてもやや弱い。送金サービスを利用するには、相手も同じサービスを使っている必要がある。『プリン』でお金をやり取りする場合には、相手にまず『プリン』のインストールを依頼するところから始める必要があるだろう。

その点、国内7,900万人が利用する『LINE』は圧倒的な知名度がある。しかも『LINE』アプリ内のウォレット機能として『LINE Pay』が存在しているので、新たにアプリをインストールすることなく利用できる。『LINE Pay』自体も国内3200万人が登録しているので、相手が利用しているケースも多く、送金を依頼する際もスムーズだ。

とはいえ、『LINE Pay』で受け取った電子マネーを出金したい時に、やや不便さを感じる。出金方法としては、銀行口座に戻すことと、セブン銀行ATMでの引き出しに対応。ただ、セブン銀行ATMで引き出す場合に1日1万円までしか引き出せず、216円(税込)の手数料が必要になるところがネックだ。セブン銀行ATMで現金化できるのは実に便利なサービス。採用しているところは良いのだが、『プリン』は1回10万円まで現金化でき、手数料も1日1回までなら無料。2回目以降は216円(税込)の手数料がかかる仕組みだ。


個人間送金サービスで現金が引き出せるセブン銀行ATM


セブン銀行ATMでの『プリン』での現金引き出し画面

なお、『PayPay』や『楽天ペイ』においては、出金サービスは今後の対応で、現時点では利用できない。どうも話がややこしくなってきたので、ここでそれぞれのサービスをわかりやすい表にまとめておこう。

こうして表を見ると、同じ個人間送金サービスでも、内容が細かく異なることがわかる。コード決済サービスの送金サービスは、今のところどれも一長一短。友だちから送金されたお金をまた別の友だちの支払いに利用したり、そのお金で買い物したりして、現金化しないように使い切るのが得策と言える。よく一緒に遊びに行く友だちなどとは、どのコード決済サービスを利用するか決めておくと、今後、お金のやり取りがスムーズになるだろう。

各社の送金依頼方法にも注目

前述の表の中で、出金方法の次に注目して欲しいのが、送金依頼方法だ。『LINE Pay』では送金相手がLINEの友だちに限られる。今後、やり取りがない相手とも、友だち登録しなければいけないのはややストレス。とはいえ、トーク画面でスタンプなどを使いながら、楽しくコミュニケーションできるのは利点だ。


『LINE Pay』の送金画面

LINE Payではキャラクター画面を選べることができる。一方、『楽天ペイ』の場合は、その場にいる相手にも、リンクを送信する方法しか選べない。実際に利用するシーンを想定すると、便利なのはSMSなどでリクエストもできつつ、その場にいる人にはバーコードの提示ができる『PayPay』と『プリン』だ。

みんなで一緒に飲んでいる場合は、幹事としてまとめて支払った人がQRコードを表示。それを参加メンバーが読み取ることで、その場でスッキリ精算が終わる。送金依頼をした場合、相手が支払ったかどうか管理できるものの、やはり支払ってもらうまでにタイムラグが発生するのはストレスだ。

将来的には、毎月の給料を電子マネーで支払うことも検討されている。『プリン』はこの部分で一歩リードしていて、法人向けにアルバイト代や経費精算などの支払いを行うサービスを提供している。

海外では『Apple Pay』が個人間送金サービスに対応しているものの、日本ではまだ未対応。日本のコード決済サービスは、現在、加盟店を拡大し、利用できる場所を増やすことで、利用者を拡大することに力を入れている。しかし『PayPay』や『楽天ペイ』が次の取り組みとして個人間送金サービスに対応したように、次のフェーズを視野に入れた動きが見られる。今後、『LINE Pay』、『楽天ペイ』、『PayPay』、『プリン』の4社、そしてそれ以外のサービスについても、出金方法や出金手数料、送金依頼方法などのサービスがどのように便利に拡充されていくかに注目しておきたい。

文:綿谷禎子

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