“インターネット以来の技術革新”として注目を集めているブロックチェーンは、経済産業省が「日本国内における関連市場規模が67兆円に達する」と予測するほど大きな可能性を秘めている。

2017年に実体のないバーチャルなお金「ビットコイン」が一大ブームを巻き起こしたように、金融分野における情報技術革新として話題を集めがちだが、そのほかにも広告・流通・シェアリング・公共・医療など幅広い分野での活用が見込める技術だ。しかしながら、ブロックチェーンの仕組みは複雑で実態を理解している人は多くない。

2019年3月4日、IFA株式会社から最新のブロックチェーン情報を発信するメディア「AIre VOICE 1.0」が誕生した。今回は、ブロックチェーン技術をわかりやすく伝える同メディアの編集長・大坂亮平氏にメディア立ち上げの背景や目的、ブロックチェーンの魅力、メディアとテクノロジーの可能性について伺った。

初心者でもブロックチェーンを理解できる。新メディア「AIre VOICE 1.0」誕生

—— 「AIre VOICE 1.0」とはどういったメディアなのでしょうか。立ち上げの背景も教えてください。

大坂:次世代の生活にインターネット同様のインパクトを与えるとされるブロックチェーン技術について、わかりやすく説明するメディアです。ブロックチェーンと言うと、その技術を活用した仮想通貨(注:現在の呼称は暗号資産へと変更されていますが本文では一般認知を鑑みて仮想通貨と記載しています)をイメージする人が多いと思います。

でも、ブロックチェーンや仮想通貨の概要を説明できる人は少ない。今ある仮想通貨やブロックチェーン系のメディアはすでに知識を持っている専門家に向けて作られており、一般向けには作られていません。

ブロックチェーンとは、簡単にお伝えすればサーバーに分散保持され、記録されたデータが無くならない(非改ざん性)、新しいデータベースのことです。従来のデータベースを機能強化する仕組みで、特定の大きな組織ではなく私たち個人ひとりひとりに属した公正な取引が可能になります。

しかし、こうした新しいテクノロジーは浸透しなければ価値を発揮できません。そこでブロックチェーンや仮想通貨の単語しか知らない初心者でも理解できる一般向けのメディアを作り、ブロックチェーン技術を活用して生まれる楽しい未来を想像できるようにしたいと考えて「AIre VOICE 1.0」を立ち上げました。

まったくの異業種からブロックチェーン業界へ。常識を覆す影響力に魅了された

—— 大坂さんご自身は、ブロックチェーンに関連したキャリアを歩んでこられたのでしょうか?

大坂:いえ、まったくブロックチェーンとは関係ありません。最初は音楽の制作会社で楽曲アレンジなどのエンジニア仕事をしていたんですが、広告に興味を持ってインターネット上のライブ配信サービスを提供する会社で営業を経験したのち、セールスプロモーション会社に転職して大手企業の店舗キャンペーンなどを担当しました。

そこでたまたまブロックチェーン技術を知り、どんどん興味が湧いてきて現職のIFA社にたどり着いたという経緯です。経験はないものの、ブロックチェーンへの好奇心が強かったのでかなり勉強しました。

—— それだけ好奇心を持ったブロックチェーンの魅力とは、どういったところにあるのでしょうか?

大坂:今までの常識をひっくり返せるほどの影響力や可能性に魅力を感じますね。ブロックチェーン技術を活用すると、バーチャルな存在が流通して浸透します。日本には「日本円」が法定通貨として存在しますが、実体がない仮想通貨が流通するようになり、仮想通貨で売買などができるようになりました。

ブロックチェーンによって『ドラえもん』のような近未来的世界が実現できるかもしれない。今までブロックチェーンに関わったことがないビジネスパーソンにも、「AIre VOICE 1.0」を通じてブロックチェーン技術について知り、ワクワクできる未来を想像してほしいです。

一点集中型の情報を分散・共有。価値を個人に流通させて公正な社会へ

—— 「AIre VOICE 1.0」はブロックチェーンの魅力をわかりやすく伝えるメディアとのことですが、どんなビジョンがあるのでしょうか?

大坂:特定の企業や組織などに依存して中央集権型になりがちな情報や価値を分散し、個人に戻すことです。世界が抱えるさまざまな課題は、多様な人々と共有することで解決できるのではないでしょうか。現在は検索サイトですぐに情報が見つかる便利な世の中になっていますが、多くの情報が特定の会社に集約されています。一か所に集まっている莫大な情報を、公平な情報として個人の価値に戻していきたいです。

「ブロックチェーン=分散型台帳技術(注:本来はDLT=分散型台帳技術ですが噛み砕く為に敢えてブロックチェーンをイコールとしています)」と言われるように、ブロックチェーンは複数のコンピューター上に分散してデータを保持し、みんなで確認をしあう様な共有型データベース。中央集権型になりがちな情報の価値を個人に戻すことができます。こうしたブロックチェーン技術の可能性を伝える「AIre VOICE 1.0」は、ターゲットを絞って情報発信するメディアではなく、多様な人々が個人の価値観で情報発信できるメディアにしたいと考えています。

—— ブロックチェーン技術の可能性を伝えるために、「AIre VOICE 1.0」ではどんな取り組みを行っているのでしょうか?

大坂:クリエイティブにこだわって、視覚的にブロックチェーンの可能性を伝えています。ブロックチェーンや仮想通貨は2017年に一気に広まりましたが、いくつか事件が起きて「怪しい」「信用できない」といったネガティブなイメージもついてしまいました。それを払しょくするために、あえて過去に使われていた代表的なグラフィックや写真素材を使わず、さわやかでクリーンな印象を与えるクリエイティブ制作により「公正・公平な非中央集権型の誠実なシステム」としてのブロックチェーンを表現しています。

新しいメディアの形。メディア×テクノロジーで生み出す可能性

—— 「AIre VOICE 1.0」は単なるメディアではなく、コンテンツ発信を通じてテストマーケティングを行うプロダクトでもあると伺いました。プロダクトとしてはどんなことを行っていくのでしょうか?

大坂:現在の「AIre VOICE 1.0」はターゲットを絞っていませんが、マーケティングの観点では「20~25歳の男女」「30~35歳の男女」「40~50歳の男性」の3層に分け、エンジニアが入ってコンテンツの最適化と今後開発をするプロダクトへの仮説検証や概念実証を行います。テストマーケティングを経て各ユーザーの行動を分析しながらコンテンツを最適化し、最終的にはペルソナを絞る予定です。

—— メディア自体をプロダクトとして最適化していくと。テストマーケティング後は、どのようなアップデートを行うのですか?

大坂:アセットトークン化という仕組みを使い、その仕組みやUXを導入したメディア「AIre VOICE 2.0」にバージョンアップする予定です。ブロックチェーン技術を活用して記事コンテンツを複数名で資産化する、投稿した記事の評価が高かったり二次利用されたりしたら仮想通貨やトークンなどのインセンティブが発生する機能をつけるなど、作り手に情報の価値を還元できる仕組みを構築中です。

—— 今はメディア側が記事を制作していますが、「AIre VOICE 2.0」にバージョンアップしたらユーザーもブログのように記事投稿できるようになるのですか?

大坂:ライターとユーザーのどちらが書くかはまだ確定していませんが、徐々にユーザー参加型の仕組みを導入する想定です。どちらにせよインセンティブは書き手に還元され、コンテンツを作ったクリエイターを守ることになります。二次利用されてもインセンティブが入る公正な仕組みが構築できるでしょう。

—— メディアとテクノロジーを掛け合わせると、どんなメリットがあるのでしょうか?

大坂:プロダクトと関連したシステムをオウンドメディアに搭載することで、ブロックチェーンを活用した企業としての認知度も上がります。また、コンテンツ制作と開発を同時進行で取り組んでいくうちにコンテンツマーケティングの本質や技術的な課題がわかってくる。

テクノロジーを使ってワクワク感を生み出すことが「AIre VOICE 1.0」の価値なので、まずは自分たちの取り組みを発信し、そのワクワク感を社会に伝染させていきます。

取材:木村和貴
文:萩原かおり