アクセンチュアは最新調査(※)により、企業が従業員の組織に対する信頼を向上させ持続的な収益増加を実現させるためには、従業員の働き方に関するデータの適切な管理・活用が必須であることが明らかになったと述べている。
主な調査の詳細は以下のとおりとなった。
- 62%の経営幹部が従業員のデータ収集に新しいテクノロジーを用いていると回答
- 従業員の9割超が、個人的なメリットにつながる場合に限り、自分のデータ利用を許容
- 従業員の働き方のデータ活用により、全世界の大企業において3兆1,000億ドルの収益増が期待できる
62%の経営幹部が従業員のデータ収集に新しいテクノロジーを用いていると回答
調査結果によると、経営幹部の62%が、業務の質や社内コミュニケーション、従業員満足度向上を目的として、従業員や従業員の働き方についてのデータ収集に新しいテクノロジーを活用していると回答。一方でデータを適切な方法により活用できている自信がある、と回答した経営幹部は全体の30%にとどまった。
従業員の9割超が、個人的なメリットにつながる場合に限り、自分のデータ利用を許容
従業員の52%は、自分の働き方のデータ収集によって、所属組織に対する信頼が低下する恐れがあると回答。また従業員の64%は、近年のデータ乱用に関する不祥事をふまえ、自分のデータもりすくにさらされているのではないか」と懸念を示した。
一方でポジティブな傾向として、従業員の92%が生産性や満足度の向上につながる内容であれば、データ収集を許容していることが明らかになったという。具体的には62%の従業員が自分の報酬・手当といったメリットと引き換えに、また61%が学習と成長機会についてのメリットと引き換えにして、自分の働き方などのデータを提供してもよいと回答した。
従業員の働き方のデータ活用により、3兆1,000億ドルの収益増が期待できる
今回の調査結果によれば、従業員の働き方についてのデータを活用し従業員の信頼を得ることにより、全世界の大企業において兆1,000億ドルもの収益増が期待されるようだ。またデータ活用戦略を適切に導入している企業は、そうでない企業と比較して最大12.5%高い収益が見込まれるとしている。
従業員の働き方のデータに関する、経営幹部の対応はさまざま
従業員の働き方のデータ収集についての課題に関して、企業のリーダーの対応はさまざまであったという。31%の経営幹部は、従業員からの反発を懸念してデータ収集テクノロジーへの投資をできるだけ控えていると回答。たいして32%の経営幹部は、すでにデータ収集に向け投資しており、問題が起きたときは責任をもって対処すると回答した。
同社 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理統括 マネジング・ディレクターの植野 蘭子氏は、企業が説明責任を果たしつつ従業員とともにデータ収集・活用する新しい仕組み・システムをつくることが必要と述べている。
同紙によれば、従業員が以前より自由に自分のデータをコントロールし、キャリア活用などに活用できるようになったと実感すれば、従業員が変化に適応し、企業への信頼度も高まるとのこと。その上で、信頼向上により従業員のポテンシャルも高まり、企業の成長が促進されると指摘。最後に経営幹部が従業員の信頼獲得を事業戦略の中核に位置付け、その実現のための明確なアクションプランの整備が必要と結論づけた。
アクセンチュアが推奨する、従業員の働き方に関するデータの適切な活用のためのフレームワークとは
同社では、データ利用についての従業員の懸念を解消するために、次にあげるフレームワークを推奨している。
- 管理を任せて、信頼を得る
従業員自身で、自分のデータの活用・管理ができるようにすること。調査では従業員の73%が、自身の働き方関連のデータを所有し退職時にはそのデータをうけとりたいと回答。それを許容する経営幹部も56%に上っている。 - 責任とメリットの共有
従業員の働き方のデータを管理する仕組み・システム構築に従業員を関与させ、仕組みに関する責任を共有すると共に、仕組みの設計に従業員のニーズを確実に反映させることが肝要。現在、この内容を行っている企業は29%で、企業の33%は今後実施を予定しているとのこと。 - 適切な方法でのテクノロジーの活用
人工知能(AI)などのテクノロジーを活用し、従業員の成長機会を増やすことに加え、公平性・多様性の向上が必要。従業員の82%が、新しいテクノロジーにより収集されたデータで、給与・昇進・評価についての公平性が向上すると考えているとのこと。
※調査概要
調査方法:
定量調査・定性調査を組み合わせ、データ収集が従業員・雇用主の間の信頼に
もたらす影響をモデル化
調査対対象:
13カ国(日本、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、
イタリア、オランダ、スペイン、スイス、英国、米国)の13業界(自動車、銀行、
通信&メディア、消費財&サービス、エネルギー、ヘルスケアサービス、ハイテク、
保険、公共サービス、小売り、ソフトウェア&プラットフォーム、旅行、ユーティリ
ティ)にわたる1万人の従業員と1,400人の経営幹部
調査期間:2018年10~11月
その他調査詳細:www.accenture.com/workforcedata(英語のみ)を参照のこと