ミレニアル世代、夢実現のためなら海外移住もいとわない。彼らに優しいアジア太平洋都市ランキング、東京をおさえ1位となったのは?

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世界経済フォーラムの調べによると、80%ものミレニアル世代が仕事や個人の夢を追求するためには、海外移住もいとわないと考えていることが明らかになった。

シンガポールの金融サービス会社バリュー・チャンピオンが2019年2月に公開した「ミレニアル世代に優しい都市ランキング(アジア太平洋)」では、アジア太平洋でミレニアル世代に好まれるであろう都市をランク付けしている。

このランキングはアジア太平洋地域の20都市を対象に、公表されている広範なデータを分析したものである。「生活クオリティ」「ビジネス環境」「物価」という3項目の評価を総合し、順位付けを行った。

1位 シンガポール

「ビジネス環境」と「生活の質」でシンガポールは1位を獲得し、ランキング総合1位となった。

シンガポールは1人当たり国内総生産(GDP)が5万7,000USドル(約630万円)と20都市で最も高く、これは日本や米国を抜いている。失業率(全体で2.2%、若年層で3.96%)も2番目に低い。このことから、収入の良い仕事を比較的容易に見つけやすいとされたのだろう。また、男女の賃金格差が20都市で最も小さい点も評価されている。

一方、公害の少なさで4位、治安の良さで2位だったことが「生活の質」の高評価につながった。ただ物価は年々上がっているので「生活コスト」では7位に留まっている。

アメリカ大手保険グループのマーシュ・アンド・マクレナン傘下のマーサーが2018年3月に発表した231都市の住みやすさ番付でも、シンガポールは25位でアジア・太平洋地域の最高位を維持している。ランキングの中で電力や飲料水の供給、電話サービス、公共交通、交通渋滞の状況、国際便の運航数などを含む都市インフラの項目でトップだった。

また、治安の良さ、住宅の質の高さ、自然災害の少なさなども住みやすさの要因の1つだろう。ガムを道に捨てるだけで罰金がとられるなどはよく知られていることだが、教育がよく行き届いていて人々はみなルールを守る。

これも住みやすさにつながるだろう。移住に関して言えば、4つの公用語の中に英語も含まれていて、外国人が居住者の39%を占めているのも外国人が住みやすい環境になっている理由とも言えるだろう。

2位 東京

総合2位は東京。「雇用の見通し」「生活の質」でともに5位、「生活コスト」で6位と、3項目のうち4位以内に入った項目はなかったものの、どれも一定の評価を得たことが総合順位2位にランキングされた。

東京の1人当たり国内総生産は4万3,000USDドル(約475万円)、その一方で失業率が全体で2.5%と低い。

アジア諸国からの観光客が東京にやってきて評価するのは、治安の良さ、清潔さ、公害汚染度の低さ、秩序のある社会、交通アクセスの利便性などがあり、これは移住を考えた場合でも見逃せない要素となるだろう。

3位 香港

香港をランキングの3位に押し上げた要因は何よりもその強い経済力だろう。

部門別の「雇用の見通し」では、シンガポールに次いで2位、失業率は全体で2.8%、若者は8.12%と低い数字を維持し、一人当たりGDPは約4万4000USDと、とても高い数字だ。

また、住みやすさの理由のひとつに税金の安さもある。多くの富裕層は税金対策のために香港に移住してくるが、富裕層に限らず一般庶民でも税金の支払いは少なくて済む。

加えて、香港は街はコンパクトで移動がしやすく、緑も多く、人々は公園で太極拳をしたり、ハイキングなどをして楽しむ。また、島なので海に出かける人も多い。厚生労働省の発表によると2016年には香港は世界一長寿な国となった。グルメ大国として、また「医食同源」という言葉でもよく知られているが、人々が食について関心が強いのも長寿の秘訣なのだろう。

ただ近年問題になっているのはその人口密度とそこから引き起こされている住宅問題である。香港は世界で最も人口の密集した地域の一つで、1,106平方キロメートルの面積に700万人を超す人口を有する世界有数の人口密集地域である。戦後、中国の内乱を逃れてきた人々がなだれ込み、人口が急拡大した。

山がちで国立公園の多い香港は、住宅を建設する土地がなく、99%の住民が高層住宅に住む。地価の高騰も近年深刻化しており、ドイツ銀行の2017年の調査によると家賃の高さはアメリカのサンフランシスコに次ぎ、世界2位である。この点をふまえると、移住しやすいかどうかと考えた場合は難しいようにも思える。

4位 中国・広州

北京、上海に並ぶ中国三大都市の一つで中国南部に位置する広州が4位にランクイン。

2000年以上の歴史を持つ古都でもあり、遺跡が多く残る観光都市でもあり、また食の都でもある。沖縄よりも南に位置し、気候は温暖で、1年の3分の2は夏であり、冬もそれほど寒くない。香港から列車で2時間ほどのところにあり、気軽に香港にも遊びに行けるの魅力だ。

もともとは広東語が公用語なので移住の際には言葉の壁はあるものの、香港やマカオのほか、世界の華僑の共通語とも言える言葉を習得する価値はあるだろう。

本ランキングの部門別の「物価」の安さでは第一位。中国の都市部は近年物価の上昇が激しくなっているが、広州は北京や上海や深センより安い。たとえばビール1杯の値段はベトナムのホーチミンに次いで第2位の安さである。

5位、メルボルン

オーストラリアの第2の都市、メルボルンが第5位。

英国誌エコノミストの調査部門EIUが毎年2度ほど選出する「世界で最も住みやすい都市ランキング」でも2011年から首位をキープ、2018年には第2位になったものの、移住先としてのその人気は高く、日本人の若者もワーキングホリデーなどで訪れることも多い。
メルボルンは学園都市で治安もよい。

人口は約450万人で(メルボルン市内は13万人)、街は大きすぎず小さすぎずコンパクトでインフラも整っている。ヨーロッパに似た街並みにはおしゃれなカフェも多く、音楽イベントも活発でおしゃれな人が多いのも若者には魅力的だろう。公害汚染レベルも低く、公園が多く美しい街並みで、移民も多く、多文化共生がきちんと成り立っている。

ただ問題としては、貧困対策グループのブラザーフッド・オブ・セントローレンス研究所による2018年12月のレポートによると、メルボルンの失業率は今まで述べてきた都市よりも高く、全体で5%、15歳から24歳までの若者では15.5%に上る。この数字はピーク時の2014年よりは減少傾向にあるものの、世界のほかの大都市と比べて高く、メルボルンだけでなく、オーストラリア全体の課題となっている。

デジタルネイティブと呼ばれ、SNSなどを通じ情報を集め、コミュニケーションをとり自分から活動範囲を広げるミレニアル世代こそ、働きやすい土地を求めて自由に自分らしく生きていけるのかもしれない。

文:中森有紀
編集:岡徳之(Livit

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